鬼が徐々に二人に近づく中、翔太は必死に考えを巡らせていた。
このままでは確実に命を奪われる。
しかし、何か手があるはずだ。どこかに、この状況を打破する鍵があるはずだ。
翔太は周囲を再度見渡し、物置に積まれた埃だらけの箱を必死に掘り返し始めた。
手当たり次第に中身を確認していくが、どれも無価値なものばかり。
家具の欠片や、古びた校具など、逃れる手段には全くならないものばかりだった。
「くそっ…!」
翔太は焦りながらも、何度も箱を開けては閉じた。
だが、その焦りが増すほど、時間が過ぎていく。
「翔太…!もう無理…!」
美咲が震えた声で訴えた。
鬼がさらに近づき、冷たく重い空気が二人を包み込み始めていた。
美咲の目には、すでに涙が溢れていた。
「まだだ…諦めるな…!」
翔太は必死に自分に言い聞かせながら、最後の箱を開けた。
その瞬間、箱の底に小さな金属製の物が光った。
それは、古びた銀色の鍵だった。
「これだ!」
翔太は叫び、鍵を手に取った。
それがこの扉を開けるための鍵かどうかは分からない。
しかし、これ以外に方法はない。
翔太は急いで扉の前に駆け寄り、その鍵を小さな穴に差し込んだ。
緊張がピークに達し、手が震えたが、何とか鍵を回すことに成功した。
カチリと小さな音が響く。
「開いた…!」
翔太は歓喜の声を上げ、扉を押し開けた。
扉の向こうには、まるで別世界のように光が差し込んでいた。
それは学校の外へと続く道だった。
夜の闇の中に広がる校庭が見え、そこには自由が待っているように感じた。
「美咲、早く…!」
翔太は美咲の手を引き、扉の外へと駆け出した。
だが、その瞬間、背後から鬼の冷たい鎌が振り下ろされる音が響いた。
翔太は反射的に美咲を守るために身を投げ出し、背中に鋭い痛みを感じた。
「翔太!」
美咲が叫び、彼の腕を掴んだ。
翔太はその痛みに耐えながらも、何とか扉の外へと飛び出した。
美咲も続いて外に出ると、扉が激しい音を立てて閉じた。
二人はしばらくの間、地面に倒れ込んでいた。
息を荒げながら、なんとか逃げ切ったことに気づくと、涙が溢れてきた。
「逃げ切った…俺たち…逃げ切ったんだ…」
翔太は痛みに顔を歪めながらも、安堵の表情を浮かべた。
美咲も、涙を拭いながら彼を見つめていた。
「ありがとう…翔太…あなたのおかげで…」
しかし、次の瞬間、翔太の表情が一変した。
彼は自分の体に異変が起きていることに気づいた。
背中に受けた鬼の鎌の一撃が、ただの傷ではないことを悟ったのだ。
傷口からは異様な冷たさが広がり、体が徐々に動かなくなっていく。
「…これって…」
翔太は震えた声で呟いた。
美咲も異変に気づき、彼の肩にすがりついた。
「嘘でしょ…翔太…しっかりして…!」
「ごめん、美咲…」
翔太は弱々しい笑みを浮かべながら、彼女の手を握った。
「俺は…ここまでみたいだ…」
彼の声は徐々に小さくなり、体の力が抜けていくのを感じた。
それでも、美咲の顔を見ながら、最後の力を振り絞って言葉を紡いだ。
「美咲…君は…逃げ延びて…絶対に…」
その言葉を最後に、翔太の意識は遠のいていった。
コメント
2件
怖かったです