テラーノベル
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「初めましてー。あんたが中里大企業の会長、中里雅史だな?
こちら、三ツ木柊人って言いまーす!」
シュートは軽い調子でそう挨拶した。彼がかけている先は中里雅史の携帯電話である。その携帯電話は完全にプライベート用のであり、外部の人間はもちろん中里大企業の人間でも知る者はごく僅かである。。
どのようにして中里会長の電話番号を知ったのか。それは単純にスキルを多用した結果である。シュートはまず中里の家を探すところから始めて、その住所を突き止めるべく私立天成中学校に再び侵入した。スキル「空間転移術」で警備員に引っかかることなく校舎内に入れた。
教員室にある各学年・クラスの生徒名簿を取り出して、2のAの各生徒の住所を調べていった結果、中里の住所を知ることに成功した。ちなみに夜時間に決行したので誰にも見つかることもなかった。
住所を手に入れた後はすぐさま中里宅へ向かい、スキルを応用して侵入する。中にいた中里の母や弟にも気づかれることなく中里会長の部屋に入り、個人情報を漁った。そして彼のプライベート用の携帯電話番号を入手したのだ。
(スキルがあれば、堂々と泥棒もできちゃうんだな。でもこういうことはこれきりにしておこう。俺は窃盗なんてしたくないからな)
その気になればシュートは銀行の貸金庫にも侵入することが出来るが、そういった犯罪を自分でやるのは良しとしなかった。
『三ツ木、柊人だと……!?お前が優太を……っ いやその前に、どうやって私の携帯番号を……!?』
「それは秘密ってことで。とりあえず俺にはそれができるだけの力があるってことだけ分かってれば良いんだよ。
それより、俺がどうしてお前に電話をかけたのかは……まぁ言わなくても分かるよな」
『~~~っ』
煽るような問いかけをするシュートに、雅史は早くも血管が切れそうな程の怒りを湧かせる。
「………どのようにして携帯番号を知ったのかが気になるが、まぁいい。いずれお前を捕らえさせて情報を吐かせてやる。
それで、このタイミングでお前がいきなり電話をしてきたということがどういうことなのかは察しがつく。お前の両親のことだろう?」
熱くならないよう抑えて、雅史はシュートとの通話に応じることにした。
「うん、まぁとりあえずはそれもあるな。親父から聞いたよ。問答無用で二人を解雇させたってな?それって俺に対する報復のつもりらしいな?
お前の息子…お前の名を借りて偉そうにしてただけの、七光りで人間のクズの中里優太くんを、俺がズタボロに壊してやったからなんだろ?大切な息子を傷つけられて、お父さん怒ったぞーって切れたんだよなぁ?」
『こ、の……っっ』
電話越しに中里会長の怨嗟がこもった声を聞いたシュートは愉快げに笑う。
雅史は苛立たしげに机の縁をギリギリと握り締めるも、どうにか怒鳴るのを抑えて、次いで余裕そうに笑みを浮かべはじめる。
「お前は自分が今どういう立場にさらされているか、まだ分かっていないようだな?まだ中学生の子どもだから無理もないか。親が今だけ無職だろうとそのうちどうにでもなれると、思っているのだろ?
お前はこの中里雅史の怒りを買ったことが、どういうことなのかが分かっていないようだな」
『どういうことなのか、教えてくれよ』
「お前は私の大切な家族を大いに傷つけた。その報いとしてお前を徹底的に潰すことにする!中里大企業の会長であるこの私の力を使ってな!
その手始めとして、我が企業の傘下にある会社で勤めているお前の両親を解雇させる。それだけでは足りない、今後奴らが立ち上げようとしている会社に圧力をかけ続けてやる。事業は当然上手くいかず赤字が続き、倒産するだろうな。一家揃って路頭に迷させてやろう」
『……………』
無言でいるシュートに気を良くした雅史はさらに脅しにかかる。
「当然、三ツ木柊人…お前にも地獄を味わってもらう!お前が優太にしたことをそのまま、いやそれ以上にして返してやる!
お前は必ず、破滅するまで嬲り続けてやる…!中里大企業に、この私の怒りを買うことがどういうことか、権力を持つ大人を怒らせたらどういう目に遭うのかを、嫌というほど思い知らせてやるからな…!」
電話から中里会長の怨嗟と怒りの感情がこもった声と脅しを聞いても、シュートはどこ吹く風といった態度だった。
「あーあ、国内トップクラスの大企業の会長が、未成年の少年一人にそんな脅し文句を並べちゃってまぁ……。お前このことが世に知れ渡ったらどうなるか分かってんのか?
『下らん虚仮脅しを。私の力を舐めるな、この程度の通話履歴などいくらでも改ざんあるいは揉み消せる。強がっていられるのも今のうちだぞ』
中里会長が通話を終える気配を察したシュートは「待てよ」と間髪入れずに話を切り出す。
「俺が挨拶する為だけにこんな電話すると思ってるのか。ここからが本題だ。というか、俺はお前に命令しにきたんだよ」
「……命令だと?中学生のガキが、大企業の会長であるこの私にか?」
どこまで世間知らずの子どもなのか、と雅史は再び血管を浮かび上がらせる。
「親父と母さんの解雇処分を取り消せ。別にあの二人が無職になろうが俺は別に何とも思わねぇ。けどお前が良い気分に浸ってるのは面白くない。当然、二人の会社の邪魔もするな」
電話からは中里会長の失笑が漏れて出る。
「何を言うのかと思えば……滑稽にも程がある。私がお前ごときの言葉に従うはずがないだろ!?しかもそのような命令……そもそもお前が私に命令などするな!」
『で、言う通りにするの?しないの?』
「ふん、当然拒否する。お前もお前の両親も破滅まで追い込んでやる」
今度はシュートの不気味な笑い声が電話から漏れ出る。
『あっそ。お前、本当にそれで良いんだな?俺はお前の怒りを買ったそうだけど―――お前こそ俺に悪意を…害悪を振りまいてただで済むと思うなよ?』
「……っ!?」
途中でシュートの声色が変わったことに雅史は微かな違和感、そして脅威を感じる。
(この私が、たかがか中学生のガキに臆してるというのか?馬鹿馬鹿しい……っ)
臆しようとした自分を叱咤する雅史だが、シュートの次の発言に目を見開くことになる。
『じゃあたった今から、お前もその中里大企業とやらも、俺の敵になったわけだ。
ということだから、近いうちに、お前のところへ行って、お前を壊してやるよ。まぁせいぜい用心してろよ。場所は自分で調べてるから言わなくてもいいから。あとどこに逃げても無駄だから。
――絶対に見つけ出して、お前を地獄送りにしてやるよ。じゃあな』
その発言が終えるとシュートから通話が切れる。
「ガキが何ふざけたことを……馬鹿馬鹿しい!地獄を見るのはお前の方だというのに……っ」
副会長と秘書の困惑した視線を背に受けながら、雅史は怒りを机にぶつけてシュートへの報復の決意を固めた。
(相手は同い年の子との喧嘩に勝って粋がってるだけのガキだ、私や中里大企業の全てを相手に、何が出来るというのだ……っ)
そう確信している雅史は、自分が何故冷や汗をかいているのか、何故嫌な予感がしているのかが理解出来ずにいた。
「………上等だよ。というか好都合だ。あのクズ野郎を育てた親もどうせ人間のクズだと思ってたけど、本当にその通りだった。中里があんなゴミクズなのは、親がゴミクズだからだ。
それなら諸悪の根源の中里会長にも、復讐しないとな。お前も徹底的に壊してやるよ……!」
この日を境に、シュートは中里雅史を復讐対象として認定した。
カイガ
1,432
#魔道具職人
こはる
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コメント
1件
カイガさん、六十二話読了しました。中里会長との電話越しの対決、すごくスリリングで一気に読んじゃいましたよ。シュートくんが「俺の敵になったわけだ」と宣言するところ、胸が熱くなりました。中学生があそこまで堂々と渡り合う姿、痛快でしたね。そして、自分の感情を抑えて冷静に情報を集めるシュートくんのしたたかさと、中里会長が嫌な予感を感じながらも認められない心理描写が絶妙で、本当に引き込まれました。続きが気になります!