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萩原なちち
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お互いの体を拭いてリビングに戻った瞬間、枕元の目覚ましがけたたましく鳴り響いた。
それと同時に、ゆうたさんのお腹が「ぐぅ~」と可愛らしく鳴り、二人で顔を見合わせて爆笑してしまった。
「コーヒー、淹れますね」
「じゃあ、俺もゆうたさんの分淹れます」
「あ、じゃあ僕、朝ごはんも……」
「じゃあ俺は、ゆうたさんの朝ごはんを……」
「……どんだけ仲良いんだよ、俺ら」
俺達の穏やかすぎる会話に、ゆうたさんがふふっと優しく目を細める。
いつも敬語で上品なゆうたさんも好きだけど、本音を隠せない「裏」のゆうたさんも、俺はたまらなく大好きなんだ。
「あ、俺、思ったんすけど……。来週、有給取ってゆうたさんのサポートしに大阪ついて行っていいですか? 荷物持ちでもなんでもしますんで」
名案だと思った。だが、返ってきたのは意外な言葉だった。
「え……。それはダメです」
「え?!なんで!?」
今の提案に、断る要素なんてどこにあった!?
「……足手纏い、っすか? 素人の俺がいたら」
正直、かなりショックだ。喜んでくれると思ったのにな。
俯く俺の顔を、ゆうたさんが困ったように覗き込む。
「……嫌なんです。こんなにかっこいい人が僕の周りにいるって分かったら、女の子たちが黙っていないでしょう? 絶対、仕事に支障が出ます」
「……断られてショックだったんすけど、なんか……嬉しいです」
悲しんでいいのか喜んでいいのか、よく分からない。
結局、大阪には一緒に行けないってことだよな……。
「……僕の仕事が終わる日に、有給を取ってください。一緒に遊びに行って、いつきさんと僕、二人だけの思い出を作りたいです」
「……はい! 喜んで!!」
「うわぁ、居酒屋さんだ!」
ゆうたさんが楽しそうに笑う。
大喧嘩をしたり、ドラマのような劇的な事件が起こったりしなくても。
こうしてお互いを想い合い、支え合う「普通」の日常こそが、俺たちにとってはかけがえのない愛の日々なんだ。
「いつきさん。いってらっしゃい。……愛してます」
「うぇぇっ!? どうしたんですか、急に!」
「りゅうせいくんが言っていたので、僕も言いたくなっちゃいました」
心臓が、今日一番の大きな音を立てる。
「……俺の方が、愛してますからね。ゆうたさんのこと」
「……んなもん、あんたのこと見てたらわかる」
「うわっ、裏ゆうたさんだ!」
顔を真っ赤にして、照れ隠しにわざとぶっきらぼうな口調で言ったんだろう。
……よし。長身イケメンの嘘をついたりゅうせいへの怒りは、今回は不問にしてやろう。