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今日は先日の打ち合わせで話し合った、植物園の冬の企画、「植物園のクリスマス」開催初日だ。
開催日初日ということで、俺が短いが挨拶を述べ開催に華を添える。(華になっているのかはさておき)
そして、毎回大人気の催しが予定されているのだが、例年その催しに俺は一役買っている。
とりあえず植物園は王城の目と鼻の先なので、徒歩でエーベルとふたりで心持ちウキウキしながら向かう。
少し早足だったこともあり、あっという間に植物園に着くと、例年どおり今年も入口はめいいっぱいクリスマスの飾りで彩られていた。
「毎年、使い回しの飾りだけど変わらないのも良いな」
「そうですよね。今年もこの季節がやってきた実感が湧きますね」
エーベルは瞳を輝かせながら入口の飾りを見入っている。そのエーベルの様子は幼い時から少しも変っていないくて、エーベルに正直に言ったら睨まれそうだが、とても可愛い。今年もその顔のエーベルが見られてよかった。
俺もエーベルのその顔を見て、今年もこのクリスマスの季節がやってきたと実感をする。
園の中に入ると、植物園のシンボルツリー的存在の大きなもみの木にたくさんのオーナメントが飾られていた。
今年の間伐材を利用して作られた新しいオーナメントも見受けられる。これは植物園友の会の有志が作成してくれたと聞いている。有志の方々のご厚意に胸が熱くなる。
そして、今日の開催日初日の一大イベントは「アーロン殿下と愉快な騎士たちと歩く植物園ツアー」だ。
毎回開催の大人気イベントである。
自分で言うのもアレだが、このツアーは植物園のクリスマス名物になりつつあるのが誇らしい。
このツアーを支えるスタッフは、植物園職員は通常の仕事があるため、俺とエーベルと独身騎士有志で構成されている。
そのためか、参加者のほとんどが若い独身女性だ。独身女性からは普段は交流することができない独身騎士達と交流できる、出会えるということで、大人気になっているのだ。
たぶんだが、俺が大人気というよりは騎士達を目当てにしている女性が多い気がする。
俺はツアーガイドとして、植物園の順路に沿って歩き、あれこれを説明する。
説明できるのも、幼い時から頻繁に植物園に出入りし、職員の迷惑を顧みずに入り浸っていたからだ。だから、今日ぐらいは迷惑をかけた職員たちに少しでも恩返しをできればと思っている。そして人間、無駄になる経験なんてひとつもないんだとしみじみ実感をする。
植物園職員、騎士団有志と一通りの簡単な打合せをして、開催時間を迎えた。
例年、同じ流れなので俺の挨拶も順調に終えることが出来た。
深秋の植物園は多くの色で彩られている。
葉が落ちてたくさんの落ち葉が積もっているところもあれば、枯れてしまってなにもないところもある。
気候帯によって、植栽が植えられている場所もあり、温かい気候帯の植物たちは冬支度をして藁などが巻かれ温かそうだ。
ガイドツアーは女性達と騎士達が楽しそうに交流して、とても盛り上がっている。
今年もまた、何組かのカップルが誕生しそうだ。
「アーロン殿下はいつサンタクロースになるのですか?」
これはツアーに参加される女性から毎回いただく質問だ。
わが国の有名な歌手の曲で、毎年このクリスマスの時期になると演奏されるクリスマスソングがある。
恋人が実は本物のサンタクロースで、愛しい彼女にクリスマスイブの日の夜に寝ている彼女に指輪を嵌めて指輪を贈る有名なラブソング。
だから、この質問の訳は「アーロン殿下はいつ恋人、もしくは婚約者を作るのですか?」だ。
「時期がきたらサンタクロースになります」
そう真面目に答えると、キャーと黄色い声が上がる。それを見ているエーベルや騎士たちが笑いをこらえているのがわかるので、とても恥ずかしい。
今回もこのお決まりの質問をされて、エーベルが苦笑しながら俺の肩を叩いて、慰めてくれるところまでがお約束。
それを見るのが楽しみで開催される度に参加しているご令嬢もいるぐらいだ。
今回も無事にこの儀式を終えられた。
「あの…、質問をよろしいでしょうか?」
やや緊張しながら、周りの女性達に背中を押されて、質問をしようとしてくれている女性がいる。
「もちろんどうぞ」
「ありがとうございます。あの…アーロン殿下とエーベル殿は、こ…恋人同士でしょうか?」
んん???
思わず隣にいたエーベルと顔を見合わす。
エーベルは明らかに驚いているが、周りの女性達は何かを期待するように瞳をキラキラさせて、こちらの返答を待っている。
「私がお答えさせて頂きますね」
エーベルが青ざめながら質問に答えてくれる。
「そ、そんな風に見えるのでしょうか?私とアーロン殿下は幼馴染でもありますが、仕事の時は主従関係ですよ」
と、これはカチコチの普通の真面目で真っ当な返答をする。
「では、プライベートでは?」
プライベート?
「え、ええっと?」
エーベルが言い淀んだ。
ここで再びキャーと盛大な黄色い声を頂く。
エーベルがその黄色い声に怯んで否定することもできず、ガイドツアーの終了時刻になってしまいこの質問の答えがうやむやで終わってしまった。
ガイドツアーの準備をするのは毎年大変だ。それでもこの植物園のツアーを毎年1回ではあるが開催するのは、みんなが笑顔になるからだ。
それに美しい紅葉を前に誰も眉をしかめる人はいない。
後日、私とエーベルの恋人説がまことしやかに市中で流れているのを知った。
あの時、俺とエーベルがプライベートでは恋人同士かと聞かれて、否定する時間がなく終わってしまったことを思い出す。
俺とエーベルは顔を見合わす。
「エーベル、俺のサンタクロースになる?」
「まさか!」
いつもの冷静なエーベルにあっさりと冷たくて一蹴されてしまった。
一ノ瀬 せな
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百はな🍑
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コメント
1件
あああ第19話読んだよ〜!!🥺💕 植物園のクリスマスツアー、めっちゃ素敵…! 「殿下はいつサンタクロースに?」の質問がもうお約束になってるの可愛すぎるし、まさかの「お二人は恋人同士ですか?」には私も一緒に「んん???」ってなったよ!!笑 最後の「俺のサンタクロースになる?」→「まさか!」の流れ、エーベルの照れ隠しにしか見えないんだけど…!?😭💞 二人の距離感がじれったくて尊すぎます…次回も楽しみにしてるよ〜!!