テラーノベル
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陽雅さんの家に着き、中に入る。家の中は真っ暗だ。
「あれ。零斗、部屋かな。まぁいっか」
陽雅さんはそう呟いた後、繋いでいた手を離す。
そして、靴を脱いで二階へ向かっていく。
まだ手に残る温もりを感じながら、陽雅さんに付いていった。
ベッドに寝転ぶ俺に陽雅さんが跨る。
「恭也と俺は恋人。分かった?」
「はい」
俺が返事をすると、陽雅さんは俺の口にキスをした。
「恭也、好きだよ」
「えっ」
心臓がドクンと高鳴る。
「恭也は俺の事好き?」
分かってる。これはただのプレイだ。陽雅さんが本当に俺の事好きな訳じゃないし、俺も陽雅さんに本気で好きなんて言っちゃいけない。
「好きですよ。陽雅さん」
好きって言えたのに、なんだか胸が苦しい。
でも、
「俺も好きだよ」
なんて言って微笑む陽雅さんを見て、嘘だと分かっていながらも俺は嬉しくなってしまった。
陽雅さんの唇が再び俺の唇に触れる。
何度か唇を重ねた後、深いキスに変わる。
今日のキスは、なんだかいつもより優しい。
唇が離れ、陽雅さんが顔をあげる。
俺の顔を見てニコッと笑った後、俺の頭を撫でた。
「じゃあ、始めよっか」
陽雅さんに奥を突かれながら陽雅さんを見つめる。
「あっ、んっ…」
「恭也」
「あぁっ、んっ…」
「好き」
「あっ、んっ…」
陽雅さんが何度も名前を呼び、好きと言う。
嘘だとかどうでも良くなるくらい、心地いい声で。
「陽雅っ、さんっ…好きっ、です」
「好きだよ。恭也」
これが本当だったら良かったのにな。
でも、この時間が幸せで、嘘でも好きと言って欲しくなった。
陽雅さんの好きを聞いて、俺も好きと言う。
何度も繰り返した後、俺達は絶頂を迎えた。
「一緒にシャワー浴びよ」
陽雅さんがニコッと笑ったのを見て、俺もニコッと笑う。
「はい」
陽雅さんと一緒に階段を降り、リビングの扉を開く。
「えっ?」
前にいた陽雅さんが立ち止まる。そして、電気を付けた。
「零斗、どうしたの? 電気も付けないで」
陽雅さんの言葉を聞いて、俺は陽雅さんの視線の先を見る。
そこには、ソファーにうずくまっている零斗さんがいた。
陽雅さんは零斗さんの傍による。
そんな陽雅さんに俺も続いた。
「零斗、大丈夫?」
「…嫌われた」
「え?」
「快に…嫌われたかも…」
「快って、恭也のお友達?」
「あぁ…ちょっと…調子乗った…」
「何があったか知らないけど、そんな暗い空気辞めてよね。今俺達、恋人プレイ中なんだから」
「こ…恋人…プレイ…」
零斗さんはそう呟いてため息を着いた。
(陽雅さん…なんで追い討ちかけちゃったの…)
「もう。俺は知らないよ? 恭也、行こ」
陽雅さんはそう言ってお風呂場に向かって歩き出す。
そんな陽雅さんに俺は言う。
「あの、陽雅さん。先行っててください。零斗さんの話聞いたらすぐ行くんで」
俺の言葉を聞いて少し間が空いたあと陽雅さんが言う。
「分かった。早くしてね」
「はい」
陽雅さんが脱衣場の扉を閉めると、俺は零斗さんの隣に座る。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃねぇ…」
「今度は何しちゃったんですか?」
「アイツの事、襲った」
「えっ?」
(襲ったって…)
「でも、キスしかしてねぇから…未遂…」
「キスはしちゃったんですね」
俺の言葉に零斗さんはゆっくり頷く。
「せっかく許してくれて、熱も吸わせてくれたのに…」
(すごい落ち込んでる…)
零斗さんにはお世話になってるし、助けてあげたい。
「あの、また俺が説得して連れてきますからそんな落ち込まないで下さい」
「もういいよ。許してくれねぇだろうし」
「零斗さん、諦めないでください。大丈夫です。俺が付いてますから」
「あお…」
零斗さんは顔を上げ、おれを見つめる。
そして、座ったまま、俺を抱きしめた。
「…ありがとな」
零斗さんはそう言った後、俺から離れる。
「ほら、そろそろ行けよ。陽雅待ってんだろ」
「はい。いってきます」
俺は立ち上がり、お風呂に向かった。
脱衣場の扉を開けると、陽雅さんが壁にもたれて待っていた。
「零斗、もう大丈夫そう?」
「まぁ、多分大丈夫です」
「よかった。零斗があんなに落ち込んでるの初めてで、ちょっと戸惑っちゃった」
陽雅さんはどこか視線を逸らしてはにかむ。
お互い服を脱ぎながら、俺は言う。
「初恋らしいですからね」
「零斗の初恋か〜。二十六で初恋って、遅すぎない?」
陽雅さんはそう言ってフフッと笑う。
「まぁ、確かにそうですね。っていうか、陽雅さんと零斗さん、同い年なんですね」
「そうだよ。大学から一緒」
「へぇ〜…泰輝さんは?」
「泰輝は二個下。三人とも同じ大学なの。短大だけどね」
と言いながら陽雅さんは風呂場の扉を開け、中へ入っていく。俺もそんな陽雅さんに続いて中に入り、扉を閉めた。
「短大なんですね。卒業してすぐこの仕事始めたんですか?」
「うん。最初は零斗と二人でやって、泰輝は卒業してから入ってきたの」
「へぇ〜…」
そう言いながら、一つしかないバスチェアを見つめる。
「恭也、座って」
「はい」
陽雅さんに促され、俺はバスチェアに座る。
「髪洗うよ。シャワーかけるから目瞑って」
それを聞いた俺は目を瞑る。
すると、頭にお湯がかかった。
「湯加減いかがですか〜」
「丁度いいで〜す」
「は〜い」
しばらくして陽雅さんが言う。
「シャンプーしますよ〜」
「は〜い」
俺の返事を聞いて陽雅さんはシャンプーを付ける。
そしてワシャワシャと髪を洗い始めた。
コンディショナーを付け、馴染ませると、陽雅さんが言う。
「はい。交代。次俺の髪洗って」
俺が立ち上がり横にズレると、陽雅さんがバスチェアに座る。
俺はそんな陽雅さんの後ろに立った。
そして、陽雅さんと同じように髪を洗う。
そしてお互いの体を洗い合い、お風呂を出た。
「髪もお互いの乾かす?」
「いいですね。そうしましょう」
そして俺達は髪を乾かし合い、帰る時間になった。
玄関で陽雅さんが俺を見送る。
「今日はありがとう。ディナーデートも恋人プレイも楽しかったよ」
陽雅さんはそう言って嬉しそうに笑う。
「俺も楽しかったです。ありがとうございました」
「うん。またやりたいな。恋人プレイ」
「確かに、結構楽しかったですもんね」
(でも今度はプレイじゃなくて、本当の恋人がいいな…)
密かにそう思いながら、俺は陽雅さんに微笑む。
「じゃあ、気をつけて帰ってね」
そう言った後、手を振る陽雅さんに俺は手を振り返した。
_________
「陽雅」
学校帰り、横を歩く少年が笑顔でそう言う。
「何?」
「見て見て。あの雲、ペンギンみたい」
空を見上げると、彼の言う通り、ペンギンみたいな雲があった。
「本当だ。ペンギンだね」
「でしょ?」
「うん。でも、雲ばっかりじゃなくて俺の事も見てよ」
「もしかして雲に嫉妬? もう。本当に陽雅は嫉妬深いんだから」
彼がニコッと笑うと、視界が一瞬、真っ暗になる。
また、明るくなったかと思うと、少し先にさっきの少年の後ろ姿が見えた。
屋上の端に立つ、彼の姿が。
俺は慌てて声をかける。
「優真!」
その呼びかけで、彼は振り返る。
「ごめん、陽雅。俺、もう限界なんだ」
彼は再び前を向き、下を見る。
「待って! 優真!」
俺は慌てて手を伸ばす。
けれど、その呼びかけに答えないまま、彼は前に倒れた。
そこで目が覚める。
額には汗をかき、少し息が荒かった。
(…夢)
ちょっと調子乗っちゃったかな。
恭也との時間が幸せ過ぎて忘れかけていた。
俺は、恋人を作る資格なんてない。
さっきの夢はきっと、神様から俺への警告。
「…ごめんなさい」
俺は小さくそう呟いた。
ruruha
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コメント
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えっと……第18話、すごく切なかったです……🥀 「恋人プレイ」って分かってるのに、陽雅さんの「好き」に一喜一憂してしまう恭也くんの心情が、読んでて胸がぎゅっとなりました。嘘でもいいからって思っちゃう気持ち、分かる気がする…… それに最後の陽雅さんの夢。あれ、絶対にちゃんとした理由があるよね。優真って誰? 陽雅さんが「恋人を作る資格なんてない」って思う過去が気になりすぎる…… 零斗さんが落ち込んでて、恭也くんが「俺が付いてますから」って言うところ、すごく優しかったです。 2人の関係の歪さと優しさが混ざってて、もっと読みたくなりました。続き、楽しみにしてます🌙