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鷹槻れん

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鷹槻れん

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宇津Q
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#甘々
猫塚ルイ

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※この物語はフィクションです。
作中の受験制度や日程、進路に関する描写は、実際のものとは異なる場合があります。
あくまで物語としてお楽しみください。
これから受験をされる方は、実際の制度をご確認ください。
『第二十二話 歩き始めた道』
──九月も終わりに近づいていた。
千夏は放課後の教室で、進路希望調査を書き直していた。
第一志望。
そこには、国立大学の教育学部。
第二志望には、夏休みに結衣と見学した私立大学の名前を書いた。
そして第三志望の欄。
千夏はペンを止めた。
「……ここは、まだ決められないな」
国立大学を第一志望にすると決めた。
けれど、具体的にどの大学を受けるのかは、まだ迷っていた。
「先生、国立で教育学に力を入れている大学って、他にもありますか?」
担任に尋ねると、いくつかの大学名を教えてくれた。
「関西にも、教育に力を入れている国立大学がありますよ」
「関西……」
千夏は資料を見つめる。
「教育学部の内容もしっかりしていますし、選択肢の一つとして調べてみてもいいと思います」
「はい」
知らない場所。
知らない大学。
今までなら、自分には関係のない世界だった。
けれど今は、その場所も自分の未来の候補になっている。
──
放課後。
千夏は結衣、アカネ、珠子と駅前のコーヒーショップにいた。
四人で飲み物を囲みながら、自然と話題は受験のことになる。
珠子がフラペチーノのストローから口を離し、苦笑した。
「ウチはもう商業系の専門でほぼ決めてるけど……大学受験ってホントに大変そうだね」
「アカネは?」
「私は動物看護のある短大かな。推薦も考えてる」
それぞれが、自分の進路を話す。
そして結衣が千夏を見ながら言った。
「私は……千夏とオーキャン行った西東京大学。ちょっち背伸びしないと厳しいけどね」
千夏の胸がどきりと鳴る。
「千夏もそこ受けるんだよね?」
「……う、うん」
千夏は、どう答えるべきか迷った。
けれど、嘘をついたり誤魔化したりするのは、結衣に失礼だと思った。
「……結衣さん」
「ん?」
「国立を受けることにしたけど……いい?」
「え?」
一瞬、テーブルの空気が止まる。
千夏は思った。
結衣を裏切ったも同然だ。
「ご、ごめん……私……」
「……何それ」
一瞬だけ、結衣の表情が寂しそうになった。
だが次の瞬間、彼女は吹き出した。
「千夏っ! 私に許可取ることじゃないでしょ!」
「だって……」
「頑張りなよっ」
結衣は歯を見せて笑った。
「応援するから」
「……うん」
千夏の顔がほころぶ。
アカネも珠子も柔らかく笑った。
二人は千夏よりも結衣と付き合いが長い分、結衣の性格はよく分かっている。
「結衣さん。その代わりさ」
「ん?」
「結衣さんの勉強、私が手伝う」
「えっ?」
「もし……私が国立ダメだったら……一緒にキャンパスライフ送るんでしょ?」
千夏が笑う。
結衣も笑った。
「……そうだった!千夏が国立コケて、私も西東京落ちたら、どうしようもないよねっ!」
「それ最悪じゃんっ!」
四人のテーブルに笑い声が広がった。
──
それから、千夏の毎日は少しずつ変わっていった。
休み時間は参考書を開く。
休日は図書館へ行く。
帰宅してからも机に向かう。
国立を目指すために、今までより勉強する科目が増えた。
放課後、自習室で結衣と問題を出し合うこともあった。
「これ、分かる?」
「ちょっと待って……これはね……」
「千夏、先生みたい」
「じゃあ授業料取ります」
「鬼か!」
そんなやり取りをしながら、二人で勉強を続けた。
ある日の帰り道。
結衣が大きく伸びをした。
「もう勉強したくなーい!」
千夏も苦笑する。
「私も……」
「でもさ」
結衣は空を見上げた。
「人生一度くらいは『勉強したなぁ』って思い出す時期があってもいいんじゃない?」
「……勉強したなぁ、か」
「そうそう。大人になってから、笑って話せるくらい」
千夏は少し考えた。
「じゃあ、今は頑張ろう」
「おー!」
二人は拳を軽く合わせた。
──数日後。
帰り道、千夏はいつものように花屋の前を通った。
店先にいた花村さんが、千夏に気づく。
「あっ、千夏ちゃん!」
花村さんが笑顔で手を振る。
千夏も足を止めて、
「こんにちは!」
と手を振り返した。
「最近、遅いね」
「放課後、自習室で友達と……」
「そう。頑張ってるね」
その言葉に、千夏は少し照れた。
「はい!」
花村さんは笑った。
けれど、千夏が歩き出したあと、その背中を少しだけ心配そうに見つめた。
「頑張り過ぎてなければいいけど……」
──週末。
千夏は悠真の部屋にいた。
いつものように訪れたはずだった。
けれど、ソファに座った千夏は、
「……はぁ」
と、そのまま背もたれに沈み込んだ。
ピスカが千夏に近づき、お腹の上に飛び乗って喉を鳴らす。
「にゃあ」
「ゔっ……ピスカちゃん、重いよぉ」
悠真がキッチンから顔を出す。
「大丈夫か?」
「ピスカちゃんに腹筋鍛えてもらいました」
「いや……」
悠真は千夏を見て、少し表情を曇らせる。
「最近、疲れてないか?」
「そうですか?」
「顔見れば分かる」
千夏は頬を触った。
「そんなに?」
「そんなに」
「……受験生ですから」
「それを免罪符にするな」
悠真は呆れたように言った。
千夏は少し笑った。
「でも、国立を受けるって決めたから」
「うん」
「ちゃんと頑張らないと」
「それは分かる」
悠真は少し考えてから言った。
「でも今日は勉強禁止」
「えっ?」
「今日は休め」
「でも……」
「息抜きも受験対策のうちだ」
千夏は黙った。
そして、
「……じゃあ」
少しだけ嬉しそうに笑った。
「今日は甘えてもいいですか?」
「最初からそのつもりで来たんだろ」
「バレました?」
千夏は笑った。
その笑顔を見て、悠真も少しだけ笑った。
「疲れたときは甘いものだな」
「私、ホットケーキ焼きます!」
──夜。
帰宅してベッドに入った。
悠真の部屋で笑ったことを思い出す。
今日はちゃんと休めた。
そのはずだった。
机の上には、国立大学の資料。
その隣には、使い込まれ始めた参考書。
夢に向かって進む道も、少しずつ見えてきた。
だからこそ、その道を歩くためには、
立ち止まって休むことも必要だった。
──けれど。
千夏はベッドの上で天井を見つめていた。
休むことも大事なのは分かっている。
それでも、漠然とした不安が押し寄せてくる。
「……どうせ眠れないなら」
独り言を言いながら、千夏は起き上がった。
机に向かい、シャーペンを手に取る。
結局、空が白み始めるまで、千夏はシャーペンを走らせていた。
──続く
コメント
3件
千夏さんと結衣さん、仲が良くてほっこりします☺️でも、千夏さんが心配ですね……。 これからの展開も楽しみにしてます😊
うわあ、千夏が国立大学の教育学部を目指すって決めたんだね……! 結衣に「応援するから」って言われたシーン、すごくあったかかった。それに「一緒にキャンパスライフ送るんでしょ?」って笑い合えるのがいいな。悠真に「今日は休め」って言われて甘える千夏も可愛かったし、最後に夜中まで勉強しちゃうとこ、受験生のリアルだなあ。でも無理しすぎずにね……!