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「そのランク決めは、どのような方法で?」
哲人が前に出て質問したので、私は一歩後ろに下がる。横に広がるのはちょっと邪魔だからね。
「ランクごとに、決まった試験があります。加入時には、下から連続して受験できます」
「なるほど。合理的ですね。受験資格などはないのですか?」
「特にはありません。ただ、一度落ちると10日は受けられません」
毎日ランク試験を受ける、なんてことはできないらしい。10日程度で強くなるとも思えないが、体調不良や武器の変更を考えればまぁ適度な期間なのかもしれない。
「そうなんですね。ほかに、『人物評価』の確認などは行わないんですか?」
そう、ソレは気になってた。哲くんグッジョブ。
一応偽装はしてるけど、万が一偽装まで看過するような魔法的な道具があったら対策を考えないといけない。
「『人物評価』は、自分で自分を確認することにしか使えません。神殿には、評価を確認できる魔道具があるらしいですが、魔力を異常に使うそうです。普通そんなものは使用できないでしょう。組合に申告する内容は、あくまで自己申告となります。試験に合格しさえすれば、問題ないようです」
あれ?私は勇人のステータスも見られるけど……。一応、神殿に行くことがあったら気をつけよう。哲くんに、神殿の魔道具のことを調べてもらうのもいいかも。
「書いたことよりも、事実を重視するんですね」
「その通りです。また、保障などは特にありません」
「すべて自己責任と」
「はい。厳しいでしょうか?」
「いいえ、そんなもんでしょう。国の管轄から外れるわけですから。それを理解できない人は、冒険者としてやっていけないのでしょうし」
ベルータさんは、哲人の答えにちょっと微笑んだ。
そこまで甘ちゃんではないよ。
日本で社会人やってきた経験もあるし、さすがに大人だもの。
冒険者組合の建物は、周りと同じで木造だ。
ただ、ほかの建物が2階建てまでなのに対し、こちらは3階まである。
ちょっと高い。
入口はドアがない状態で、中が見える。
閉じる気がないってことは、もしかして24時間営業なのかな。ブラックじゃないといいな。
ベルータさんと哲人に続いて入ると、中は受付らしいカウンターによって2つに分けられていた。
手前の空間には、椅子と机がいくつかあり、ほとんど誰も座っていない。
壁には、たくさんの依頼書らしい紙が貼りつけられていた。
カウンターで仕切られた奥側は、棚や机があって、職員さんらしき人たちが仕事をしている。
ラッシュを過ぎたからか、まったりした雰囲気だ。
何だお前のような軟弱者は場違いだーげらげらーおうやるかーどっかんすまねぇ兄さん許してくれー、みたいなテンプレは起こりそうにない。
カウンターにいるのは、屈強なおじさんと肝の座っていそうなおばさま。
綺麗な受付嬢はラノベだけですかそうですか。
「ようこそ、冒険者組合へ。お話はうかがっております。こちらの用紙にご記入ください」
おじさんの一人が話しかけてきた。
スキンヘッドで、左目に眼帯を付けているいかつい人だ。
元冒険者で、現在は引退して受付と教育係をしているって感じかなぁ。
まだまだ鍛えていそうだから。
用紙に名前、職業、使用できる武器、使える魔法などを書き連ねる。
なんか、魔法の欄が小さくて書ききれない。
はみ出すけどいいかな。
そういえば、特記事項が一応ある。
子連れって書いておこう。
勇人は、歩いて気持ち良かったのかぐっすりお昼寝中だ。
「では、試験場は裏側にありますので」
「はい」
「分かりました」
ついて行けば、体育館のような建物につながっていた。
ここで試験するのかな。
「武器はどうされますか?」
おじさんが聞いた。
試験って誰かと戦うのか。
「私は、長剣を使います」
哲人が言った。
そういえば、宰相さんに長剣貰って、腰に下げてたね。
朝、いくつか持ってきてもらって選んだものだ。
これは、融通の一つらしい。
一応剣道やってたから、刀とは違うけど使えるんじゃないかな。
私は、野営に使える道具セットを用意してもらった。
後々必要になるものね。
鞄もセットになっていたから、今も斜めに下げている。
「貴女は?」
「私は魔導士なので、武器は必要ありません」
「分かりました。お子様はこちらの籠に」
「いえ、このままで大丈夫です」
「は?」
「え?」
ちょっと、なんで哲人まで驚いてるの。
「どこかに行くにしても、結局こうやって一緒にいることになりますので。このまま試験する方が、正しく評価できるはずです」
「なるほど……しかし、これはあくまで試験です。危険があるのが分かっていれば回避していただきたい。どうしてもというなら、同じ重さの重りを持って対応してください」
「……わかりました。試験中は、夫に頼みます」
「そうしてください」
大丈夫だと思うんだけどね。
まあいいか。