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女装している時は、椿って呼んでほしいって言ってたよね。
うわぁぁぁ、やっぱり綺麗。
蒼さんはもちろんかっこ良いけど。同一人物だとは思えない。
言葉遣いも、椿さんになると家の中でも女性になるんだ。
私が目を輝かしていると
「桜ちゃんは、《《蒼》》より《《椿》》の方が好みなの?」
フフっと女性らしく笑う椿さん。
「ええええと、椿さんは私の憧れで大好きで……。蒼さんは……」
なんて言えばいいんだろう。素直に伝えてもいいのだろうか。
「蒼さんは?」
椿さんは首を傾げている。
「蒼さんはかっこ良くて、優しくて……。頼りになって、蒼さんも大好きです」
んっ?これって一種の告白になってしまうのではないだろうか?
でもまぁ本当のことだからいいか。
恋愛感情とかじゃなくて、人として大好きなんだから。
私の言動に一瞬、椿さんの顔が赤くなったように見えた。
「そっか、《《蒼》》も《《椿》》も好きになってもらえて良かった。私、仕事に行ってくるから。何かあったら連絡してね?」
出かける椿さんを玄関先まで見送る。さっきまでの蒼さんと全然違う。
「じゃあ……」
と出かける椿さんに
「あのっ、夕ご飯頑張って作るので!楽しみにしてもらえると嬉しいです!」
あっ、差し出がましいかな。
しかもハードルを上げてしまった。
椿さんと話をしたくて、咄嗟に言葉が出ちゃった。
クスっと笑い
「ええ。楽しみにしているわ」
最後に手を振ってくれて、ドアがパタッと閉まった。
はわぁぁぁ、綺麗だったな。
優人のためなんかじゃなくて、自分のためにあんな風に綺麗になる努力をしないと!今度、時間があったら「美」について椿さんに相談をしてみよう。
「よしっ」
気合を入れるため、声を出した。
ちょっと早いけど部屋も掃除ができたし、夕ご飯の支度をしよう。