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兄の披露宴は市内でも一番派手な芸能人、ご用達のホテルの宴会場で開かれた
すでに1000人の招待客は二度目の花嫁のお色直し待ちで、楽団の演奏に聞き入って、中には中央のダンスホールでダンスをする人達もいた
贅を尽くしたコース料理、高級な引き出物、世界中から取り寄せたさまざまな種類のワインや酒
父は芸能人櫻崎拓哉の新しい門出だと言いながら、海自や政財界での自分の力をここぞとばかりに見せつけた
櫻崎一郎は田舎の小さな造船所で漁船作りから始まり、最初の10年で、ほぼ日本中の造船のパーツ製造を受け持つほどの造船企業を創設した人物だ
そして去年市会議員選で当選し、昭和の成り上がりの見本のような人だ
私が幼い頃はめったに顔を合わせる機会もないくらい父は忙しく、日本のあちこちを飛び回っていたので
父と朝食をとるというのはサンドイッチを口にふくみ、市場ニュースを聞きながら隅から隅まで読んでいる。新聞を大きく広げている姿をただ黙ってじっと見ていることだった
母はそんな父には一切逆らわず、ただ父を支え尽くしこれも昭和の女性の見本のような人だ
母は近所でも評判が良く私の学校行事などには、必ず参加してくれていたが、いつも婦人会の集まりなどで忙しく昼間は家を空け気味だった
そんな父の力の見せ場と化した兄の披露宴の主賓の中には、櫻崎財閥を日本に知らしめるべく、前府知事、テレビでも経済ニュースの顔で、有名なニュースキャスター、兄の知人の大御所女優、俳優陣、そして義理姉の知人の弁護士軍団、スーパーモデル、有名監督、政財界のお偉方など有名人のフルコースだ
ここまでくるとありがたみもへったくれもなかった