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ウルル
#ご本家様とは一切関係ありません
ウエハース鈴木
4,268
それからしばらくの間、朝食はレウクラウドと一緒に食べることが多くなった。
特に約束をしたわけではなかった。ただ、気づけばそうなっていた。ぺいんとが食堂に来ると、レウクラウドがいる。レウクラウドが何かを作っている。ぺいんとが少し離れた場所に座って、それを待つ。
「今日は何が食べたい?」
毎朝、同じことを聞かれた。
最初は「なんでも」と答えそうになるのを、なんとか堪えた。好きなものを答えていいと、少しずつ分かってきた。
「……温かいもの」
「寒い?」
「少し」
「そう」
それだけだった。余計なことは言わなかった。ただ、その日の朝食は、いつもより少し温かいものになった。
ぺいんとはそれを食べながら、窓の外を見た。森が見えた。深い緑の、静かな森。あの夜彷徨った森と同じ場所だとは、昼間には思えなかった。
「レウクラウドさんは」
気づいたら声が出ていた。
「ここに、長くいるんですか」
レウクラウドは少し考えてから、「そうだね」と答えた。
「らっだぁが長いけど、俺もそれなりに」
「……らっだぁさんが一番長いんですか」
「この森では、そうだよ」
ぺいんとは頷いた。らっだぁがこの森に一番長くいる。それがなぜか、少しだけ安心感につながった。理由は分からなかった。
館の中での日常は、少しずつ形を持ち始めた。
朝はレウクラウドと食事をする。昼間はらっだぁの近くにいることが多い。夕方になるとコンタミが廊下を通って、触手をひらひらさせる。
それだけのことが、繰り返された。
繰り返されるうちに、少しずつ怖くなくなっていった。
ある日の昼下がり、ぺいんとは廊下を歩いていた。らっだぁを探して、でも見つからなくて、どこにいるんだろうと思いながら歩いていた。
そのとき、角の向こうから声が聞こえた。
「あーもう、またか」
低くて少し呆れたような声だった。でも怒っているわけではなさそうだった。
角を曲がると、背の高い人物が立っていた。コンタミではない。らっだぁでもない。レウクラウドでもない。
知らない顔だった。
その人物がこちらに気づいた。
「あ」
一瞬、どちらも動かなかった。
知らない人物は、ぺいんとをじっと見た。それからため息をついた。
「お前がぺいんとか」
低い声だった。
「……はい」
「金豚きょーや。よろしゅうな」
それだけ言って、またため息をついた。手に何か書類のようなものを持っていて、それを見ながら歩いていた。通り過ぎようとして、立ち止まった。
「飯、ちゃんと食えてる?」
唐突だった。
「……はい」
「そか」
それだけ言って、今度こそ通り過ぎていった。
ぺいんとはしばらくその場に立っていた。
怖かったか、と自分に聞いてみた。少し、と答えが返ってきた。でも最初のコンタミのときよりは、ずっと少なかった。
(慣れてきた、のかもしれない)
そう思って、少しだけ不思議な気持ちになった。
ある日の朝、ぺいんとは一人で食堂に来た。
らっだぁと一緒ではなかった。らっだぁは先に起きていて、何か用事があると言って出ていった。一人で行って来い、とは言わなかった。でも、一人で来られる気がした。
それが少し不思議だった。
数日前の自分には、考えられないことだった。
「おはようございます」
食堂に入るとレウクラウドがいた。いつもと同じ場所に立って、いつもと同じように何かを作っていた。
「おはよう。今日は一人?」
「……らっだぁさんが、用事があるって」
「そう」
レウクラウドはそれだけ言って、また鍋の方に向き直った。
ぺいんとはいつもの場所に座った。窓から朝の光が差し込んでいた。森が明るく見えた。
「今日は何が食べたい?」
「……少し、お腹が空いてるので、多めに食べたいかもしれないです」
言ってから、言いすぎたかと思った。わがままだっただろうか。
でもレウクラウドは「そっか」と言って、少し嬉しそうに笑った。
「それは良かった」
それだけだった。でもその一言が、なぜか胸に残った。
お腹が空いていることを、良かったと言ってくれた。それだけのことが、ぺいんとにはまだ少し慣れなかった。
その日の午後、ぺいんとは館の中を少し歩いた。
らっだぁはまだ戻っていなかった。レウクラウドは厨房にいた。コンタミは廊下ですれ違って、触手をひらひらさせた。ぺいんとも小さく頷いた。
それだけで十分だった。
館の奥の方は、まだよく知らなかった。どこに何があるのか分からない部分の方が多かった。でも今日は、少しだけ遠くまで歩いてみようと思った。
理由は分からない。ただ、そう思った。
廊下を進んでいくと、突き当たりに扉があった。物置のような場所だろうか。ぺいんとは少し考えてから、扉を開けた。
中は薄暗かった。棚が並んでいて、色々なものが置いてあった。古い道具、布、何に使うのか分からないもの。
一歩、中に入った。
扉が、音を立てた。
コメント
2件
ああ〜もう、このエピソードめちゃくちゃ沁みた😭💕 ぺいんとがちょっとずつ「自分の気持ち」を言えるようになってるの、尊すぎる…「お腹すいてるので多めに」とかさ、最初の頃のぺいんとからは想像できない成長だよ〜🥺✨ 金豚きょーやの登場も良き!いきなり「飯食えてる?」って聞いてくるのがもうツンデレ枠確定でしょ!笑 レウクラウドの「それは良かった」にも胸熱…あの一言にどれだけ救われたか。 3話にしてこの距離感の変化、エモすぎて泣くわ😭🌈 続きが気になりすぎる〜!!