ローザリンドとフィンがギルドの追手に囲まれ、ドーベンは冷静に剣を構えていた。その姿は無駄のない動きだ。
「ちょっと待って、ドーベン!あんた、本当に戦うつもり?」フィンが心配そうに言うが、ドーベンは無表情のまま答える。
「お嬢様を守るために必要なことです。」
すると、追手の一人がにやりと笑う。「お前の力がどれほどでも、ギルドの権限には逆らえん。お前の過去を洗い出してやる!」
その瞬間、ドーベンの目が一瞬だけ輝いた。次の瞬間、彼の手に持つ剣がぴたりと敵の胸に向けられていた。
「待って!その剣、どうなってるの?」ローザリンドが驚いて叫ぶ。
「これは…」ドーベンの声が冷たく響く。
「私の能力、必中(ヒット・アサルト)です。」
「必中って、どういうこと?」ローザリンドが眉をひそめる。
ドーベンはゆっくりと説明を始める。
「私には、王国が開発した能力が組み込まれています。必中(ヒット・アサルト)、それは…攻撃が絶対に外れない能力です。」
「え、待って、それって…つまり、何をしても必ず命中するってこと?」フィンが目を見開いて尋ねる。
「その通りです。私が狙った対象に、どんな障害物があっても、絶対に命中する。」
「マジかよ、怖すぎる!」ローザリンドが目を丸くする。
ドーベンは能力を披露するため、追手の一人に剣を振るう。だがその剣は、わずかな動きで敵の剣をすり抜け、あっという間に敵の心臓に命中した。
「い、今の…何が起きたの!?」フィンが口をあんぐり開ける。
「これが私の力。」ドーベンは冷静に続ける。
「必中(ヒット・アサルト)は、私の意識が定めた瞬間から、必ず対象に命中します。場所、角度、速度…すべては計算された結果です。」
追手たちはドーベンの驚異的な能力に驚きつつも、さらに強力な魔法を使い始めた。
「ふざけるな!お前を倒すためには、ギルドの力を使ってでも消し去るしかない!」追手の一人が魔法を詠唱し始める。
だが、ドーベンはただ無表情に立っていた。
「魔法であろうと、必中の力に届くことはない。」
ドーベンの目が一瞬輝いた瞬間、再び剣が素早く振るわれ、追手の魔法の障壁を簡単に貫いた。
「これが私の力です。必中。」ドーベンの言葉に続き、再びその剣が敵の心臓を貫通した。
戦闘が終わり、ドーベンは冷静に剣をしまいながら、ふとローザリンドに視線を向ける。
「…お嬢様、私の力がどれほど強力であろうと、その代償はあります。」
「代償?」ローザリンドが疑問に思いながら尋ねる。
「はい。必中を使うたびに、私は少しずつ命を削られていきます。無限に使えるわけではなく、私の体には制限があります。」
「それって、使いすぎたらどうなるの?」フィンが不安そうに尋ねる。
「…私は私の使命を果たすために、それでも使い続けます。」ドーベンは答えると、遠くを見つめるように黙った。
ローザリンドはドーベンを見つめながら思う。
「彼はただの兵器ではない。人として、感情を持ち、使命を持ち…その命を賭けて私を守ろうとしている。」
「ドーベン、あなたの力…私は無駄に使わせない。」ローザリンドは決意を新たにし、ドーベンに向かって言った。
「お嬢様…」ドーベンが少し驚いたような表情を浮かべる。
「あなたの力を、私のために無駄にしない。それが私の決断よ。」ローザリンドはしっかりとした目で言う。
ドーベンは静かにうなずく。
「ありがとうございます。お嬢様が守りたいものを守るために、私はどんな代償も払います。」
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