戦争前、僕らはとても仲の良い兄弟だった
戦争が始まると
みんなが別人のように変わって行って
僕だけが取り残されてるみたいだった
ある日
今日こそはみんなの役に立とうって頑張った
そしたら運良く
あるアメリカ軍のひとつに当たった
その瞬間
撃ち落としたアメリカ軍の戦闘機の後ろに
もう1台の戦闘機があった
あ、終わったな
って思ってたら
相手の顔がちょっとだけ見えた
すっごく悔しそうなカオしてた
そのままアメリカ軍の戦闘機がどーんと僕に当たった
とっても痛かった
虫の息だったけどもう一度2人に
お兄ちゃんに会うために力を振り絞って
痛みにも耐えて
どうにか戦闘機の外に出られた
這いつくばっていたからか気づかなかったけど
足が無くなってた
片腕も
気づいた途端痛みが押し寄せてきた
叫んだ
叫んで叫んで
喉が痛かった
本当に虫の息になった時に
陸にぃが来てくれた
嬉しかった
途端に海にぃが来なかったのがすごく悲しかった
喉が枯れて
声も出なくなった時に
海にぃが来てくれて
今まであった不安とかが全部吹っ飛んだ感じ
いつもそうだった
海にぃは僕らの不安を吹っ飛ばしてくれる力で元気をもらった
その瞬間
もういいやって
意識を手放しちゃって
また起きた
足が透けてた
なんかわかんないけど死んじゃったんだって分かった
周りには海にぃがいた
海にぃだけ
でもうれしかった
人がいる
一緒にいてくれる人がいる
海にぃはいつも寂しそうで辛そうだった
多分、陸にぃの幻覚のせいだと思う
いっつも僕のことを言うけど
そんなことしていない
陸にぃの幻覚の中で僕が死んじゃったすぐあと
陸にぃが海にぃに
お前のせいだ
って泣きながら殴ってた
頭がおかしくなってたんだと思う
海にぃは
うん、うん、
だけ言って抱きしめてた
陸にぃは泣き疲れたのか寝ちゃった
いつの間にか僕も泣いてた
ポロポロって、涙がこぼれて
幽霊なのに
幽霊なのに海にぃの傍に行って
ごめん、ごめんなさい
って何度も言いながら僕も泣き疲れて寝ちゃった
海にぃの遠くには行けないから
ずっと海にぃの近くにいたけど
陸にぃが殴ったところが青黒く変色してて
見てる側も痛かった
勿論海にぃの部下たちも心配していた
今日一段と陸にぃが海にぃを殴った
海にぃはいつも言っていた
うん
なんて言わずにずっと俯いてた
陸にぃはそれを見て
もっと怒ったのか殴る速度を早くした
陸にぃがやっと泣き疲れて寝たら
海にぃががさごそと襖に何かを探しに行った
刀だ
見覚えがある
陸にぃと買い物に行った時
海にぃが学校から帰った後に渡して喜んでもらった思い出が詰まっているもの
海にぃはそれを手にとり
腹の位置へ移動させた後
なにかに気づいたようにペンと紙を持ってきた
僕はそれを叫びながら必死に止めようとした
海にぃが書いているのは遺書
だけど幽霊なんかが叫んでも何も聞こえない
遺書には
私が生きていてごめんな
この前までは
俺という一人称を使っていたのに
だがそれよりも自分という弟が生きていないのが理由で死ぬ兄を見ている弟の気持ちだ
泣きながも必死に止めようとして
失敗して
陸にぃが起きるように叫んでも何も返事はかえってこない
助けて
なんて言っても返ってこない
嗚呼、海にぃが手に刀を持っている
止めたい
止めたい
止めたい
止め…….られない
嗚呼、僕はなんて臆病なんだろう
叫んでも
叩いても
泣いても
見向きもしない兄が怖くて仕方ない
やめて
やめてよ
ねぇ、
言葉は暗闇に消えていく
ザクッ
ねぇ、やめてよ
幸せそうな顔しないでよ
やらなきゃ良かったって思ってよ
やって良かったなんて思わないで
ねぇ、海にぃ
涙が止まらないよ
いつもだったら抱きしめて涙を吹いてくれるじゃんか
海にぃ…….ねぇ、ねぇってば、!
起きて
おきてよ
そして僕を、
僕を抱きしm(((
え、
なんで?
ここにいるの
遅くなったじゃないよ
なんでここに来ちゃったの
ねぇ、あっちいってよ
陸にぃが1人になっちゃうから
ッ…….泣きそうな顔なんかしないでよ
ッ!…….抱きしめないでよッ…
海にぃ…….
ごめんなんか聞きたくないよ
もっと強く抱きしめてよ
言い訳なんかも聞きたくない
、
ッ…….
…….海にぃ、おかえり、(にこ
コメント
2件
辛すぎる… 空は何もできないのに兄が壊れていく姿をずっと見ていて、海は空の事も陸の事も大切に思っているからどうしようも出来なくて、陸は大切な弟を失った反動でもう一人の弟を殴ってしまって… 結局、海は自分で自分を消して、『やっと終わった』って感じだけど、空は会えてうれしいのと陸が独りになってしまうことの悲しさで複雑だし、陸は本当に一人になるしで… 誰も救われない… でもすごい好きです