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賞味期限切れ

56 - 第56話 美和子はお手伝いさん

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2025年03月17日

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◻︎お手伝いさん



礼子が一時的に預かってる女子高生、結衣。

自分が酷い目に遭ったのに、おばあちゃんとお母さんの心配をしているらしい。


「いい子過ぎて、この先が不安になるよ。もっと反抗したりわがまま言ったりしてくれたほうが、なんだか納得がいくんだけどね」


礼子が言う。


「健気だね。立ち直ってくれるといいけど、その様子だと立ち直ったかどうかなんて判断できないね」

「でしょ?いい子過ぎると、本当の心の傷を見逃してしまいそうで、慎重になるよ」

「これからどうなるの?」

「父親の罪を立件できるかどうかわからないけど、なんとしても結衣ちゃんから引き離す。おばあちゃんは公的な補助を申請して、なんとか入れる施設を探してみる」


「ねぇ、結衣ちゃんのお母さんは?」


私はそれがとても気になった。

おそらく年代も私とそんなに変わらないはず。


「それがね…離婚するとは言ってるけど、何も具体的には進んでないみたい。なんていうか、夫の言いなりになってるとこがある気がする。娘が凌辱されたのに、なんか反応がね…」

「そうなんだ、長年の何か、かな?私たちには理解できない何かがあるのかな?」




プルルルルルル🎶

礼子のスマホが鳴った。


「はい、そうです。ええ、わかりますがそれが何か?えっ、そんな、まさか!はい、わかりました、すぐ行きます」


礼子は、バッグにスマホを入れて立ち上がった。


「ちょっと警察行ってくる」

「あ、うん、気をつけて」

「そうだ、秘密基地に行って、簡単にでいいから掃除とかしてくれないかな?洗濯機はね、安いやつ買って入れておいたから必要なら使って。結衣ちゃんには、家政婦のおばさんが行くからって言っておくから。それから…」

「わかってる、守秘義務でしょ?」

「さんざん喋っておいて、ごめん!!」

「ただの雇われ家政婦として、行ってくるよ」


礼子は慌てて出て行った。

私は時間を確かめて、まずは買い物に行くことにした。


スーパーで食材を少し買った。と言っても、秘密基地には簡単なキッチン用品しかないから、簡単にできる鍋にした。


_____結衣ちゃんは一人であの部屋にいるのだろうか…


今は夕方の4時。

これから行って掃除して、鍋を用意して。

そうだ、我が家の分も仕込んでおこう。




ピンポン♪

ピンポン♪


「こんにちは。家政婦の田中です」


部屋の中では人の気配がするけど、なかなかドアが開かない。


_____嫌な予感がする


「入りますね」


大きな声でそう言って、合鍵で中に入る。

礼子の部屋のドアが開いていて中に女の子が座っているのが見えた。

その手には、カッターナイフが握られていた。


「うっわ!何してるの?危ないよ」


「え…、あ…」


ポトリとカッターナイフが落ちた。

私は急いでそのカッターナイフを取った。


「びっ、びっくりするなぁ、もう!怪我したら大変だよ、片付けるのが。知ってる?血液ってなかなか落とせないの。ルミノール反応ってのがあってね、どんなに拭き取っても残ってしまうんだけど…あ、ごめん、サスペンスの見過ぎだわ」


リスカするつもりだったのだろうか。


「ごめんなさい、そんなつもりはなかったんです」

「だよねー!花の女子高生が、怪我なんかしちゃったらもったいない」

「もったいない、ですか?」

「もったいないに決まってる、もうね、私みたいなおばさんからしたら、あなたみたいな子は、キラッキラに輝いていて眩しいのよ。若さってそれだけで羨ましいわ」

「私なんかが、うらやましい…ですか?」

「うん、あ、私、お掃除とかを依頼されてるんだった。あまり時間がないから、手伝ってくれる?」


結衣はキョトンとしている。

雇われ家政婦のくせに、家事をやらそうとしたからだろうな。




「嫌いな食べ物とか、ある?」


白菜を洗いながら、結衣に訊いてみる。


「特に…ないです。なんでも食べないと、作ってくれた人に申し訳ないって。なんでも食べられることに感謝しなさいって」

「それは、お母さんに感謝しなさいってこと?」

「ううん、それよりも農家さんとか?」

「おぉっ!そこまで辿って感謝するとは、すごいな」

「…おばあちゃんの口ぐせで…」


おばあちゃんに、大事に育てられてきたことがわかる。

だからずっと介護も頑張ってこれたんだろうな。


「まぁ、嫌いなものがあっても関係ないけどね、全部入れちゃうから」


また、あっけにとられる結衣。

じゃあ、なんで訊く?と言いたげな。


「鍋の味は、出汁だけにして、つけダレを3種類作るね。卵の黄身と鰹節と醤油、おろした人参と生姜とネギとポン酢、食べるラー油と刻んだニラ、どうかな?」

「そんなの初めてかも?」


テーブルにコンロを出して煮立った鍋を置く。

鶏団子や、水菜や、椎茸、豆腐、葛切り、白菜をどんどん入れていく。


「よし!出来上がったよ。さぁ、食べて。私は洗濯と掃除もしないといけないから」


結衣をテーブルに座らせて、私は洗濯物を集めてまわった。


「あ、あの…」

「ん?なにか足りない?」

「よかったら…あの、一緒に」


いつのまにか、結衣がお茶碗とお箸を二膳並べていた。


_____そうだよね、誰かと食べるほうがいいよね


「うーん、雇われ家政婦だから、本当はルール違反かも?でも、食べちゃおかな?」

「よかった…」


鍋を挟んで、結衣と向かい合って座った。

こうして見ると、とても小柄な女の子だ。まだ中学生と言われても違和感がない。


「いただきまーす!」

「いただきます」


きちんと両手を合わせての、いただきますをしている。

この両手の中に、一体どれほどの責任や痛みを抱えているのだろうか。


「そうだ、名前、なんて呼んだらいい?」

「…結衣、なのでそのまま結衣と呼んでもらえたら…」

「じゃあ、結衣ちゃん、今日、何かいいことあった?」

「いいこと…ですか?」


「そう!人間ってさ、悪いことを探すのは得意らしいけど、いいことに気づくのは苦手らしいよ。だから、ついつい悪いことばかり数えてしまうみたい」

「……はぁ」


その後、黙り込んでしまった。


_____そんな能天気なことを考えられる精神状態じゃないか


「ま、まぁ、食べようか、ね!ほら、鶏団子も煮えてるよ」


私は大きめに作った鶏団子を、結衣の皿に乗せた。


「一口、ガブっとね」


「!!あっつっ!何?なんか入ってる」

「それはチーズだな。最高の当たり団子もあるよ。どれどれ、私のは?ぶわぁっ!!」


思わず、皿に出してしまった。


「ごめん!私、まさか自分で当たりを引くなんて!かっらぁ!!」


鶏団子の真ん中には、丁寧にシュウマイの皮で包んだ辛子が仕込んであった。


クスッと結衣が笑った。


「あと一つ、当たりがあるからね!さぁどっちを選ぶ?」


鍋の中にはあと二つ、鶏団子が入っている。

一つには同じように包んだ一味唐辛子が仕込んである。


「じゃあ、私はこっち!」

「ならば、こっちが私ね。せーので食べるよ!せーの!」


二人同時に食べた瞬間、私の口に火がついた。


「うわぁっ!!なんでまた私?仕込んだのは私なのに」

「ものすごく、くじ運がいいとか?!」

「この場合、悪いんじゃないかな?かっらぁ!」

「私のはプチトマトでした」


少しだけ、結衣が笑ったようでホッとした。









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