テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
リューカはセリナに言われるがまま帝都グラディウム連れられた 。
巨大な魔導障壁に守られた、魔術と軍事の権威が集まる都である。 高くそびえる白銀の塔群、空を行き交う飛空艇、整然とした兵士の行進…… すべてがリューカにとっては異世界の光景だった。
セリナの案内で、二人は帝都へと足を踏み入れる。
「ここが……世界の中心か…」
初めて見る文明の繁栄に目を奪われながらも、リューカの胸中には重くのしかかるものがあった。 魔剣を手にしたあの夜、焼け落ちた村。仲間の悲鳴。彼の手が触れたとたん、剣は暴走し、人々を炎に変えた。
だが、この帝都には、巨大な闇が渦巻いていた。
セリナはかつて帝国魔導研究機関《ルミア・アカデミア》の研究者だった。 魔剣を人殺しの道具として扱う帝国の方針に異を唱え、追い出された過去を持つ。
「この国は、魔剣を利用して多くの血を流し、支配を拡大しようとしている。 ……リューカ。あなたの剣も、例外じゃない」
二人はセリナのかつての同僚、《白衣の魔導師》レクスと再会する。 彼は静かに警告を発した。
「もう時間がない“彼”が動く。 あの剣を手にして、帝都を壊すつもりだ、君も早くここから出ろ」
セリナは静かに断った
「私にはまだやるべき事が残ってる…」
その夜、帝都は突如として雷鳴に包まれる。
空を裂く轟音。帝都西区に巨大な雷の柱が落ち、炎と叫びが街を呑み込む。 雷雨の中現れたのは、一人の青年。銀髪に紅眼、黒衣を纏い、雷の魔剣《ヴァルゾルグ》を携えた男。
彼の名はグラウド・ザイン。 かつて帝国の王子でありながら、帝国の腐敗を見限り反乱軍を率いた革命者。
「民よ、目を覚ませ! 魔剣は奴らの道具じゃない! これは、お前たちを解き放つ雷光だ!」
彼の一閃が、帝国兵の隊列をなぎ倒す。 ヴァルゾルグは雷の化身となって轟き、街を薙ぎ払った。
その暴威の中、リューカとセリナは急ぎ避難民を誘導する。 がれきの中、少女を抱えたまま倒れる老騎士がいた。
「お願いだ……この子を、頼む……」
リューカは少女を抱き、剣を構える。イグナリアが震えた。 それは、力を解放したがっていた。再び——炎を解き放つことを。
「燃えろ……燃えろ……人間共!」
雷と炎が、帝都の空で交錯する。
グラウドがリューカを見た。 その瞳に一瞬、驚きと共鳴のような何かが宿った。
「貴様……その剣は……」
その時、魔導爆撃が帝都中心に降り注ぎ、交戦は一時中断される。
帝国はヴァルゾルグを“魔族”として認定、全軍出撃を開始。 事態は、もはや一個人では止められぬ規模に達していた。
リューカは、ただ剣を握る。 ——自分は、この剣に選ばれた。 ならば、この力を、誰のために使うべきか。
帝都が燃え、雷が咆哮する夜。 少年の瞳に、初めて覚悟の炎が灯った。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!