テラーノベル
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突然の事だった。楽しい日常が、一瞬にして崩れた。楽しい日常が、どこか変わってしまった。
——難病の影響で、余命一ヶ月と宣告されてから。
いつもの朝。だけど、mz太の中では、どこか違っていた。——学校に行く時間だ。
mz太「…はぁ……学校、行くか。」
鏡の前で溜息をついて、いつもの制服に袖を通す。左側の白の髪を整えて、悪魔のヘアピンを留めた。その仕草だけは、いつも通りだった。——ただ、目の下の隈が濃い。
玄関を出ると、秋の朝の冷たい空気が頬を刺した。通学路の銀杏が黄金色に染まっている。綺麗だ、と思った。——思っただけで、声には出さなかった。
校門をくぐると、聞き慣れた声が飛んできた。
prっつ「mz太ーっ!」
黄緑と緑のグラデーションが揺れる。prっつが駆け寄ってきた。朝から元気なやつだ。——mz太とは正反対の。
prっつ「なんや、しけた顔して。寝不足か?」
緑色の瞳がまっすぐこちらを見ている。——心配の色が滲んでいた。けれどmz太には、それに気づく余裕があったかどうか。
mz太「あぁ〜……ぃや、ちょっとゲームしすぎて……w」
prっつ「はぁ?アホやなぁ。テスト近いん分かっとる?」
呆れたように笑いながら、prっつはmz太の横に並んだ。肩がぶつかるくらいの距離。——こいつはいつもそうだ。遠慮がない。
prっつ「何時までやっとったん。」
何気ない問いかけだった。——けれどmz太にとっては、「夜何時に寝たか」なんて答えられない質問だったかもしれない。病院から帰って、検査結果の紙を握りしめて、眠れなかった夜のことなんて。
チャイムが鳴った。予鈴だ。廊下を走る生徒たちの喧騒が二人を包む。
prっつ「あ、やば。——ま、昼休みに聞いたるからな。」
そう言い残して、prっつは教室の方へ走っていった。振り返りざまに、にっと笑う。——その笑顔が眩しくて、少しだけ、胸が痛んだ。
mz太「…… 、」
prっつの背中が人混みに消えていく。mz太はその場に数秒だけ立ち尽くしてから、ゆっくりと歩き出した。
——残り二十八日。カウントダウンはもう始まっている。
午前の授業は何事もなく過ぎた。英語、数学、古典。ノートを取る手は動いていたが、文字は半分も頭に入っていなかった。時計の針ばかり追っている自分に気づいて、嫌になった。
昼休み。屋上へ続く階段の踊り場——二人のいつもの場所。prっつが先に来ていた。コンビニのパンを片手に、壁にもたれて待っている。
prっつ「おっそ。」
文句を言いながらも、隣のスペースを空けて待っていた。——当たり前のように。毎日、ずっとそうしてきたように。
prっつ「ほら、座りぃ。で?ゲーム何やっとんの。」
パンの袋をがさがさと開けながら、横目でmz太を見る。——何でもない昼下がり。こんな時間があと何回あるのか、prっつはまだ知らない。
mz太「最近買ったゲームが楽しくてつい……笑」
prっつ「あー、わかるけどな。俺も新作気になっとるやつあるし。」
prっつはパンを一口かじって、もぐもぐと咀嚼しながら続けた。
prっつ「今度一緒にやらん?俺んち来たらええやん。」
軽い誘いだった。——「今度」。prっつにとっては何でもない、未来に向けた一言。でもmz太の耳には、「今度」がひどく遠い響きを持って届いた。
秋風が階段を吹き抜けた。窓から差し込む光がprっつの毛先の緑を透かして、やけに鮮やかに見えた。
prっつ「……mz太?」
返事が遅れたのを不審に思ったのか、prっつがこちらを覗き込んだ。
prっつ「ほんまに大丈夫か?なんか今日ぼーっとしすぎやろ。」
鋭い。——こいつは昔からそうだ。ふざけているようでいて、妙なところで勘がいい。
mz太「ぇ……あ、ごめんごめん!笑 眠いのかも……w いいよ、今度一緒にやろ!」
prっつ「……ふーん。」
じっとmz太の顔を見つめていたが、やがて視線をパンに戻した。——納得はしていない顔だった。「眠い」で済ませてやる、という判断をしたらしい。
prっつ「ほな約束な。破ったら奢りやから。」
小指をひょいと突き出してくる。——ガキかよ、と言いたくなるような仕草。でも、その無邪気さが今は少し沁みた。
午後の授業も終わり、放課後。二人は校門で別れた。「また明日」と手を振るprっつに、「おう」と返した。——明日。また明日、か。
帰り道、一人になった途端、足が重くなった。鞄の中には病院の予約票が入っている。——明後日、定期検診。数値がどうなっているかなんて、もう大体わかっている気がした。
夕焼けが街を橙に塗り替えていく中、mz太の影だけが長く、長く伸びていた。
mz太「……ごめんな、pーのすけ。」
誰にも届かない声だった。——「pーのすけ」。小学生の頃からの、二人だけのあだ名。mz太だけが使っている。
立ち止まった交差点。信号が赤に変わる。——横断歩道の向こうで、親子連れが手を繋いで歩いていた。何気ない光景。それがどうしようもなく目に焼きついた。
ポケットの中でスマホが震えた。画面を見ると、prっつからのLINE。
prっつ『ちゃんとゲーム控えて寝ろよ』
——たった一行。スタンプもない素っ気ないメッセージ。なのに、指が止まらなくなった。
信号が青に変わった。——歩き出さなきゃいけないのに、まだ画面を眺めている。既読はつけた。返信の入力欄が白く光っている。
mz太「ッ 、……… 」
mz太『うん、そうするわ』
それだけ。ただそれだけを送った。
送信ボタンを押した指先が冷たかった。——もっと言いたいことがあったはずなのに、「うん、そうするわ」の八文字で全部飲み込んでしまった。
家に着いて、靴を脱いで、部屋に入る。——静かだった。
机の上にはやりかけのゲーム。その横に、薬のケースが無造作に転がっている。朝飲む分を一つ取り出して、水で流し込んだ。——もう、味にも慣れてしまった自分が嫌だった。
ベッドに倒れ込む。天井の白さをぼんやり見つめる。——prっつとゲームをする未来。一緒に帰る放課後。くだらない話で笑い合う昼休み。——全部、全部覚えているのが残酷だった。
スマホをもう一度開く。トーク画面の最後には、あの素っ気ない一言。——「寝ろよ」。
……あと二十七日。
next ♡ 2000 ⤴︎⤴︎
参考パクリ×
表紙イラスト保存⚪︎
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自作発言 禁止
無断使用
コメント
3件
やばい やばい 上手すぎてる 😿💖 1つ 1つ の 言葉遣い が 好きすぎて 物語 の 内容 が すらすら 頭 に 入 っ てくる の えぐい (( 語彙力皆無 それに サムネ 上手すぎやしませんか 🥹💕︎︎ 最高 でした ︎🌟❤️🔥 続き 待 っ てる ‼️‼️
ゑ、表紙絵上手すぎだし ノベルも上手い。文章も本当に自分と同じ歳か疑えてくる ... ( と言うかストーリーがそもそも神。 続き楽しみに待ってます✨