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#ミステリー
「ふふっ…あのね、実はまだ、ちょっと引きずってるんだ」
ハルは、そう言って、ゆっくりと話を始めた。
「彼氏のさ、最後の言葉が、ずっと頭から離れなくて。僕のこと、尻軽だって言われたんだ」
俺の心臓が、ドクンと大きく鳴った。
それは、俺が言ってしまった言葉と同じだった。
「…それ、俺も言ったよな」
俺がそう言うと、ハルは静かに首を横に振った。
「あっちゃんは、僕を心配して言ってくれたんだって、分かってるよ。まぁ、ムカつきはしたけど」
「…でも彼は、僕のためじゃないよ、ただ僕が面倒くさくなったんだと思う。僕、重いし」
ハルの瞳に、涙が浮かんでいる。
だから俺は、ハルの手を握って、言った。
「…悪ぃ、俺も、最低なこと言ったな」
ハルは、俺の手をぎゅっと握り返してくれた。
「へへ、あっちゃんってたまに凄く素直になるよね……でも大丈夫、あっちゃんのお陰で吹っ切れそうだから」
ハルの言葉に、俺は胸が熱くなった。
「って、なんかしみじみしちゃったよね!ゲームの続きやろ!」
「お、おう」
ゲームは、結局、俺が勝った。
3勝2敗。
「うっそ…また負けちゃった!!」
ハルは悔しそうに顔を歪める。
「おら、参ったか」
俺は得意げに笑う。
「つ、次は絶対負けないからね!」
ハルはそう言って、俺を睨んでくるがそれすらも愛おしい。
その顔を見て、俺は、胸が苦しくなる。
こいつを独り占めしたい。
でも、俺には、その資格がない。
俺は、ハルの親友だ。
「親友」
その言葉が、俺の心に重くのしかかるのは今に始まったことじゃないが
ゲームをしたり、映画を見たり、カフェに行ったり。
ただの親友だというのが悔しくて堪らない。
◆◇◆◇
そんなある日
「…なあ、ハル」
「なに?」
「…お前さ、また新しい彼氏とか作んないの?」
俺の言葉に、ハルは、一瞬、固まった。
「…え?どうしてそんなこと聞くの?」
「いや、なんとなく」
「…んー、今はいいかな。なんか、疲れたし」
ハルは、そう言って、俺から視線を逸らした。
俺は、ハルの気持ちが分からなかった。
疲れた、というのは、やはり恋愛に疲れたということだろうか。
◆◇◆◇
その日の夜、俺は富永に電話をかけた。
「もしもし?富永?」
『おう、どうした?こんな時間に』
「いや、ちょっと聞いてほしいことがあってよ」
俺は、富永に、ここ最近の出来事を話した。
富永は、俺の話を黙って聞いてくれて、最後に、深いため息をついた。
『お前さ、まだ告白してないのか?』
「…当たり前だろ」
「はー?何年引きずる気だ?お前片思いしてもう15年なんだろ?」
「…あいつとの関係壊したくねぇんだよ」
『へぇ、でもお前の話聞いてると、ハルはお前のこと好きなんじゃないかと思うけどねぇ』
「…は?そんなわけ、ねえだろ」
俺は、富永の言葉を否定した。
『ワンチャン、お前がハルのこと好きなのハルも気づいてるんじゃないのか?』
「…まさか」
『いや、マジで。お前、アイツに会うときだけ他のやつより顔が緩んでるからな』
富永の言葉に、俺は、顔が熱くなる。
『お前、ハルに告白する気、本当にないのか』
富永の問いに、俺は、何も答えられなかった。
『…まあ、いいや。でもお前、一生このままだと、ハルはまた誰かのとこ行っちゃうぞ?』
富永の言葉は、俺の心に深く突き刺さった。
俺は、ハルを失いたくない。
でも、この気持ちを伝えたら、ハルを失ってしまうかもしれない。
俺は、どうしたらいいんだ。
俺は、ハルとの関係を壊したくない。
でも、このままでは、俺は壊れてしまう。
その日から、俺は、ハルに会うのが怖くなった。
ハルからの連絡にも、返信が遅れてしまうようになった。
ハルは、俺の変化に気づいているだろうか。
そんなある日、ハルから、電話がかかってきた。
「もしもし?」
俺は、緊張しながら電話に出る。
「あっちゃん!なんか、最近、連絡くれないから、心配になっちゃったよ」
ハルの声は、少し寂しそうだった。
俺は、何も言えなかった。
「…ねえ、あっちゃん。僕のこと、嫌いになったとかじゃない、よね?」
ハルの言葉に、俺は、涙が出そうになった。
「…そんなわけ、ねえだろ」
俺は、震える声で答えた。
「…よかったぁ」
ハルは、心底安心したように、そう言った。
「あのさ、あっちゃん。今週末、時間ある?」
「…週末?」
「うん。僕ね、昔から行きたかった水族館があるんだけど、一人じゃちょっと寂しいから、一緒に行ってくれないかな?」
ハルの誘いに、俺は、一瞬、戸惑った。
でも、ハルの寂しそうな声を聞いて、俺は、どうしても断ることができなかった。
「あぁ、いいけど」
「ほんと?!やったぁ!ありがとうあっちゃん!」
ハルの声は、弾んでいた。
ハルの恋人なんて夢のまた夢だろう。
でも、俺はハルと一緒にいたい。
俺は、どうしたらいいんだろう。
◆◇◆◇
週末
待ち合わせ場所の駅の改札で、ハルは、俺を見つけると、満面の笑みで手を振ってくれた。
今日のハルは、白いTシャツに、デニムのショートパンツ。
足元は、スニーカー。
シンプルだけど、ハルらしい、爽やかな格好だった。
俺は、ハルに近づいて、言った。
「…お前早すぎ」