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視線の檻
「……お前、さっきからワタシを見すぎね」
フェイタンが低く、刺すような声で言った。
小刀を鞘に収めるカチリという音が、静かなアジトに冷たく響く。
シャルナークはキーボードを叩く指を止め、心臓が跳ねるのを必死に抑えた。
「え? 何のこと? 集中してたから、無意識にぼーっとしちゃってただけだよ」
いつものように、完璧な笑顔。
けれど、フェイタンはその「仮面」を許さなかった。彼はゆっくりと立ち上がると、シャルナークが座る椅子の背もたれに手をかけ、逃げ場を塞ぐように顔を近づけた。
至近距離。マフラー越しに漏れるフェイタンの吐息が、シャルナークの頬に触れる。
「嘘、下手ね。お前の視線、さっきからワタシの首筋と、手元、ずっと追てる。……獲物を狙う目、してるね」
シャルナークは喉を鳴らした。
他人の心を操作するプロであるはずの自分が、この男の前では丸裸にされている。フェイタンの金の瞳は、暗闇の中で獣のように鋭く光り、シャルナークの心の奥底に隠した「熱」を正確に射抜いていた。
「……気づいてたんだ」
シャルナークはもう、苦笑いしかできなかった。隠し通せないなら、いっそこの空気に身を任せてしまいたかった。
「ワタシのこと、舐めすぎね。他人の視線の『意味』、間違うはずない」
フェイタンはさらに距離を詰め、シャルナークの耳元で、地を這うような低い声で囁いた。
「……何か言いたいことがあるなら、言葉にしろね。お前が言わないなら、ワタシ、このままお前を『調べる』ね」
その言葉は脅しのようでいて、同時にもどかしそうな「促し」を含んでいた。
フェイタンの手が、シャルナークの首元に冷たく、けれど確かな観察眼を持って添えられる。
(ああ、そうか。操られていたのは、俺の方だったんだ……)
シャルナークは、フェイタンの指先に自分の手を重ねた。
「ああ、言いたいことはあるよ、フェイ。……調べてくれるの?」
挑発的に問い返したシャルナークの瞳には、もう迷いはなかった。
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