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「何でも話す⋯⋯ねぇ?
なら、もう一度聞くが⋯⋯
もう一人は、何処だ?」
ソーレンの声は静かだった。
だが、その低く押し殺した声音は
重く、鋭く
張り詰めた空気を
さらに凍り付かせる。
血に濡れたような琥珀色の瞳が
男達の恐怖に
歪んだ顔を見据えていた。
「⋯⋯い、いない! 本当だっ!
俺達は5人であの店に行ったんだっ!!」
縋るような声で叫ぶ男の顔は
涙と汗に濡れ
既にぐちゃぐちゃだった。
「ほぉ?
なら、ウチの店長様が間違えた⋯⋯
って、言いてぇんだな?」
ソーレンは
わざとらしく片眉を上げると
ゆっくりと指を鳴らした。
——パチン!
指の音が鳴った瞬間
磔にされた両脇の男が
一瞬にして圧縮された。
まるで空気を入れ過ぎた風船が
突然、破裂するかのように。
——バチュッ!!
弾けた肉片と血飛沫が
真ん中の男に降りかかった。
濃厚な血が顔にこびりつき
べっとりと髪を濡らす。
内臓の断片が肩に落ち
かつて〝仲間〟だった者の眼球が
彼の足元で転がった。
「う゛⋯⋯うぅ⋯っ!」
男は歯をガタガタと鳴らしながら
白目を剥き
股から尿の滲みが広がっていく。
「お前は⋯⋯素直そうな顔してんな?」
ソーレンは
血塗れになった男の頬を
指先で撫で上げた。
その仕草は
まるで母親が
我が子をあやすかのように
優しげで優雅だった。
「話してくれたら⋯⋯考えてやるぜ?」
優しさを装った声が
かえって男の恐怖を煽る。
「本当に⋯⋯
此処の、5人⋯だけ⋯⋯です」
男の声は、今にも潰えそうだった。
(⋯⋯ここまでして、そう言い張るなら
本当に時也の読み違えか?)
ソーレンの眉が僅かに歪む。
「⋯⋯なら、お前の
アジトの場所、 人数、教えろよ?
見てみろよ⋯⋯?」
そう言いながら
彼はべっとりと血に濡れた
地面を指さした。
「⋯⋯お友達みてぇになりたくねぇだろ?」
男は嗚咽を漏らしながら
震える声で
アジトの位置や人数を
事細かに話し始めた。
「⋯⋯お利口さん」
そう呟いたソーレンの口元に
冷酷な笑みが刻まれた。
「話したっ! 話した⋯⋯からっ⋯!」
男は
涙と血に塗れながら
必死に命乞いをする。
「いいぜ⋯⋯?」
ソーレンは軽く肩を竦め
男から数歩距離を取った。
その仕草に
男の顔には安堵の色が灯る。
——その瞬間。
ソーレンは地を蹴り
鋼のように締まった足を
一気に振り上げた。
——グシャァァァッッ!!!
強烈な蹴りが
男の頭に叩き込まれる。
鈍く砕ける音と共に
頭骨が粉砕された。
皮膚が破け
脳漿が飛び散り
眼球が弾け飛ぶ。
血と肉片が飛び散り
後ろの木の幹にまで
ソーレンの足がめり込んだ。
「⋯⋯ったく。汚ねぇな」
ソーレンは
つま先に付いた肉片を
地面に擦り付けながら冷たく笑った。
「お片付けは、ちゃんとしなさいって
ママに教わったろ?」
呟きながら
ソーレンは拳を握りしめた。
すると
弾けた肉片
砕け散った頭骨
散乱した血痕や内臓
銃弾の破片、衣服や武器
あらゆる証拠が
重力の異常な圧力に
引き寄せられていく。
——ギリ⋯⋯ギリギリ⋯ッ!
肉の塊は
ぎちぎちと音を立てながら圧縮され
次第に小さく縮んでいった。
まるで握り潰された紙屑のように
血塗れの肉片は
ソーレンの掌に収まる程に縮み
やがてぼろりと崩れ落ちた。
「ふぅ⋯っ」
肩を軽く回し
首を鳴らしたソーレンは
ポケットからスマホを取り出した。
指先が画面を滑り
タップする。
「⋯⋯よぉ。
来てたヤツらは
お片付けしたぜ、ママ?
後は、子豚ちゃんのお家に
遊びに行ってくるわ!」
通話の向こうから
「誰がママですか?」と
呆れた時也の声が僅かに聞こえたが
ソーレンは気にも留めず
通話を一方的に切った。
そのまま、無言で森の奥へと歩き出す。
その背中には
血の匂いが纏わりついていた。
「さて⋯⋯次は、何人殺せるかな?」
琥珀色の瞳が、冷たく輝いたまま
拠点への道を進んでいった。
——残りのお片付けが待っている。