テラーノベル
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2024年の春、東京。中堅サラリーマンの野獣先輩は、普通の一日が送られていた。周りの人々から「ややイケメン」扱いされるが、本人はそれを全く自覚していない。自分の魅力については「まあ、だいたいこんなもんだろ」と適当に考えているだけの男だ。
だが、その外見のわりに、田所は驚くほどモテる。
「田所って、このへんがセクシー!」「田所くんおまたせ!」「田所くんの笑顔、癒されますねぇ!」
どこに行っても、男からこんな声を浴びる。しかし、田所自身はその魅力を全く意識しておらず、むしろそれに引け目を感じている。
「また来た…」
この日は、特に酷かった。昼休みに外に出ると、男性社員の群れが田所の周りに集まり、彼に話しかけてきた。
「ねぇ、田所、今度週末に屋上に行こうよ!」
「ねぇねぇ、田所、今度アイスティー一緒にどう?」
田所はしばらく黙っていた。最初は気にしていたが、次第にそのモテっぷりに慣れ、今ではすっかり無視することにした。
「うーん、どうしようかな…。いや、ちょっと今日忙しいから。」
それでも、彼に会いたい男たちは引き下がらず、次々に誘いをかけてきた。田所はその都度適当な言い訳をしてかわし、ようやく昼休みを終わらせた。
だが、田所が気づかなかったのは、彼のモテ具合が会社内の男性たちにとってはちょっとした「セクシー」であることだった。彼らはその裏で田所のことを「ウホッいい男」と感じていた。しかし、田所はそんなことに気づくはずもなく、さらに自分のセクシーさに対して無自覚なまま日々を過ごしていた。
田所が帰宅後、テレビで突然の速報が流れた。
「速報!直径114514キロの隕石が地球に接近中。衝突の予測時刻は本日午後9時15分。直径114514キロという途方もない大きさの隕石で、衝突すれば地球全体が壊滅的な被害を受ける恐れがあるとNASAは発表しています。」
田所はそのニュースを目にして、最初は半信半疑だった。しかし、すぐに自分の目の前のテレビ画面に映るその隕石の画像が、想像を絶する巨大さであることに気づいた。
「直径114514キロ? こんな大きさの隕石が…地球に?」
その時、田所の心にふと一つの考えがよぎった。
「まあ、でも俺はなんとかなるだろうな。だって俺、モテるし。周りの人たちが助けてくれるだろうし。」
そう、田所は「モテている」という事実を過信していた。普段から周囲に多くの人間が彼を慕っているのだから、この未曾有の危機においても、きっと何らかの形で助けが来るだろうと思っていたのだ。
だが、その後、状況はどんどん深刻化していった。隕石は確実に地球に向かっており、時間が刻一刻と迫ってきていた。
田所は、次第に焦り始めたが、結局自分ができることはほとんどなかった。避難場所の確保、家族や友人への連絡、そんなものは一切していなかった。
「どうせ、何とかなるだろう。結局俺はモテてるし、なんとか助かる。」
そう思ってい田所だが、突如として
隕石が地球に迫っているという事実は、ますます現実味を帯びてきた。そのニュースが流れた時、田所は、まだ自分の無敵感を信じて疑っていなかった。何しろ「男にモテている」という自負があったからだ。彼は、なぜか周囲の男性たちから異常に好かれる存在だった。
「俺って、実はモテすぎて困っちゃうんだよなぁ。」田所は自分の部屋で鏡を見ながら、自己満足に浸っていた。
「いや、俺、ホントに完璧だな…」「あぁ、さすが俺。」
もちろん、田所は他の人々の困惑を気にすることはなかった。それが自分の魅力だと思っていた。
だが、隕石がどんどん迫ってくると、田所もさすがに焦りを感じ始めた。しかし、すぐに思いついたのは、「男にモテてる自分なら、なんとかなるんじゃね?」という考えだった。
「だって、男たちが俺を助けてくれるだろう。だって、俺、モテてるし。」
そう思った田所は、まず周囲の男性たちに連絡を取ることにした。最初にかけたのは、同僚の遠野。彼は田所のことを「かっこいい」と崇拝している一方で、少し引いている部分もあった。
「もしもし、遠野?お前、俺を助けるよな?」
「えっ、田所さん?助けるって…隕石が落ちるってニュース、見ましたか?」
「見た見た。だからこそ、俺を助けるんだよ。男として当然だろ?」
佐藤は一瞬沈黙し、そしてため息をついた。
「でも、田所さん、あなたモテすぎて、俺たち男がどうしていいか分からないんですよ…。みんなあなたを追いかけてるし、僕だけじゃ無理だよ…。」
田所はその言葉に少し驚いたが、すぐに冷静になり、もう一度話を続けた。
「おいおい、遠野、そんなこと言ってる場合か? 俺がこんなにモテるのに、何か手伝わないわけにはいかないだろ。お前、俺にモテてるんだから、最低でも命を救ってくれよ。」
それから数分の間、田所は次々と男友達に連絡を取った。彼らの反応はさまざまだったが、最終的にはみんな田所が「好きだったんだよ!」という理由で、彼を助ける気満々だった。
夕方、ついに隕石が地球に接近するという時刻が近づいた。和也はどこに避難しようか迷っていたが、すぐに一つの考えが頭に浮かんだ。
「よし、俺、やっぱりモテてるし、男たちが集まる場所に行けばいいんだ!」
そう決めた田所は、最寄りのバーへ向かうことにした。バーにはすでに数人の男たちが集まっていた。彼らも隕石のニュースを受けて、どこか焦りとともに、田所の姿を見つめていた。
「田所さん、やっぱりあなたが来ると安心するんだよね。」一人が言った。
「うん、俺も。あなたの周りにいると、何か襲われてる気がするんだ。」別の男が頷きながら言った。
和也は、男たちに囲まれながら、満足げに頷いた。
「いやー、でもさ、こんな時でも俺に頼ってくるんだな。やっぱり俺、男にモテすぎてるわ。」
「モテすぎっていうか、田所さん、なんか…その雰囲気がね、特別ってはっきりわかんだね。」と、別の男が少し照れた様子で言った。
田所はその言葉に、心の中でほくそ笑んだ。
「もちろんだよ。俺って、モテてるからな。」
その後、男たちは遠野を中心に集まり、隕石が落ちてくるその瞬間に備えて行動を開始した。彼らはみんな、田所が「モテすぎるから助けなければならない」という理由で、必死に和也を守ろうとするのだった。
その頃、田所はというと、男たちに囲まれながら、心の中でこう考えていた。
「いやー、こんな時でも俺、モテすぎてるな。隕石、いいよ、こいよ。」
そして、ついに隕石が落下する時が来た。
巨大な隕石が空を覆い尽くし、光が爆発的に広がった。だが、田所はその瞬間、男たちが自分を必死に守ってくれていることを実感していた。彼らが自分を守りたい一心で動いてくれているのを感じ、田所は心から感謝の気持ちを抱いた。
「これが、モテすぎた男の特権だよな。」田所は、死ぬことなく、男たちの献身的な守りの中で生き延びることができた。
隕石が地面に激突し、衝撃波が街を飲み込んだ瞬間。田所は、ただひたすらに自分のモテっぷりがもたらした奇跡に感謝していた。
「やっぱり、俺、モテすぎてよかった…。」
こうして、田所は男たちの献身のおかげで命を繋ぎとめた。そして、世間の人々が滅びる中、唯一生き残った男、田所がそこに立っていた
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