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ユフィがもう一度、俺に目配せをする。

俺は微かに頷いて、机の下でテラの太ももを指で叩いた。

俺の指に反応したテラも、カップを持ち上げようとしていた手を止める。

「どうされました?お気に召しませんでしたか」

「いや、熱いのが苦手なんだ。ところで村長、聞きたいことがある」

「なんでございましょう?」

「この村で宝石の盗難があると聞いてる。それを調査するために、昨日に城から二人の男が来ている。その二人は今どこにいるか知ってるか?」

俺の質問に村長の目が泳いだ。返答に詰まり何かを考えている様子だ。明らかに怪しい。このお茶の中にも、毒か眠り薬かわからないが、何かが入れられている。ユフィが匂いと味で確かめて気づいた。俺達に何をしようというのか。

しかし村長は、そんな大それたことをするような人物には見えないのだが。誰かにやらされているのか。

「村長」

「あ…二人の騎士様ですね。確かに昨日、この村へ来ました」

「その二人は俺と伯父上の部下だ。今、どこにいる?」

「…裏山の…採掘場近くにいらっしゃいます。王都からの警備兵と共に、見張りをしてくださってます」

村長は俯き、声がだんだんと小さくなっていった。

どうにも様子がおかしい。誰かに脅されているのか?それとも人質でも取られているのだろうか。

俺は「そうか、ありがとう」と答えると、音を立てて立ち上がった。

ユフィとテラも立ち上がる。

村長が驚いて、両手を上げ下げしながら慌て出した。

「どっ、どうされました?」

「今から採掘場へ行く。この家の裏の山だな?」

「そうでございますが……まだ夜が明けておりませんので、明るくなってから行かれた方がよろしいかと。それまでお茶を飲んでゆっくりしてください」

「いや、いい。俺は急いでるんだ。早くやることを済ませて帰りたい。それにこのお茶は飲めぬ。毒か何かが入ってるからな」

「…そ、そんなことは…っ」

寒い冬の夜だというのに、村長が額から汗を流している。

俺は腰にいた剣の柄を握りながら、村長を睨んだ。

「なあ村長、あとでじっくりと話を聞かせてもらえるか?この村で何が起こっているのか、あんたは脅されているだけなのか、それとも自ら協力しているのか、聞きたいことが山ほどある」

「わしはっ…」

「俺が戻るまで家から出るなよ。まあ出たくても魔法をかけておくから出られないけどな」

まだ何か言いたそうな村長を置いて家を出た。出てすぐに指を鳴らして手のひらを家に向ける。直後に家全体がポワリと白く光った。

「村長は何かを隠してるようだったな。戻ったら詳しく聞き出す。その前に採掘場に行きゼノとジルに合流するぞ」

「かしこまりました」

「はいっ」

家に背を向け馬の傍に行く。

小屋の柱にくくりつけていた馬の手綱を外すと、馬の背に飛び乗って裏山へと駆け出した。

整備された緩やかな坂道をかけ登っていくと、遠く向こうに月明かりに照らされた黒い穴が見えた。まるで大きな魔物が口を開けて待ち構えているようで気味が悪い。

俺は馬を止めて辺りの様子をうかがう。

「やはりな。ゼノとジルどころか警備の兵すらいない」

「そのようですね。村長はなぜすぐにバレる嘘をついたのでしょうか」

俺の隣に止まったユフィが腰の剣に触れながら首をひねる。

テラも隣に来て俺の顔を見た。

「リアム様、ゼノさんとジルさんの名前を呼んでみますか?」

テラの問いに、俺は首を横に振った。

「いや、これは罠だろう。俺達を狙う者が、どこかに隠れているかもしれない。物音を立てずにあの穴に近づいてみよう。俺とユフィが中に入る。テラ、おまえは入口を見張っていてくれ」

「えっ!俺も行きますよっ」

「ダメだ。夜が明けて一刻経っても俺達が戻って来なければ、急ぎ伯父上の城へ戻って王都へ救援を頼む使いを出してもらえ。いいか」

「でもっ」

「テラ、これは重要な役目だ。もし俺の身に何かがあり伯父上のおさめる領地が何者かに奪われれば国内は荒れる。そこを狙って他国も攻めてくる。国の存亡がかかっているのだ。だから頼むぞ」

「…承知しました」

納得していない様子だが、テラが渋々頷いた。

俺はテラの肩を軽く叩いて馬を降りる。ユフィとテラも降りて、穴の入り口からは見えない位置の木に手綱をくくりつけた。

枯れ枝を踏まないようにゆっくりと進み、穴の入口まで来た。

俺とユフィは、テラに頷いて穴へと足を踏み入れる。

テラも頷き返すと、入口横の低木の茂みに身を潜めた。

剣の音がしないよう、柄を手で押さえながらゆっくりと進む。月明かりが届かない奥まで入ると真っ暗で何も見えない。ユフィに振り向き微かに頷くと、ユフィが魔法で手のひらに小さな炎を出した。

人の手で歪に削られた石壁を見ながら奥へと進む。穴の奥に何者かが潜んでいるのかと思ったが、人の気配がしない。

「ここには誰もいないのでしょうか…。ではゼノさんとジルさんはどこへ」

「ゼノは賢い。捕まったりしない。きっと盗難騒ぎの原因を突き止めて、村のどこかにいるはずだ」

俺とユフィは、聞こえるか聞こえないかの囁き声で会話をする。

ゼノとジルがここにいると村長が話したのは、俺達をこの穴へ誘い込むための嘘だ。でもなぜここに誘い込んだ?てっきり襲われるのかと警戒したのに、魔獣どころか人もいない。村長は、俺達を襲うつもりではなく助けたのか?この穴に避難させる形で。

「わからない…ここに何があるというのか」

「リアム様」

ユフィが口に人差し指をあてて目を閉じる。

俺も口を閉じて耳をすませた。するとどこからか微かに人の声のようなものが聞こえてきた。

「どこからだ?」

「…もっと奥からのようです。行ってみましょう」

「ああ。ユフィ、気をつけろよ」

「はい、リアム様も。申しわけありませんが、背後に注意してください」

「おう」

ユフィの足跡を踏むようにしてついていく。

入口からの月明かりが届かなくなるまで奥に進んだとろこで、横穴を見つけた。その奥から人の声が聞こえてきた。

銀の王子は金の王子の隣で輝く

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