じっと会話を見ていたら、二人の天使は剣と月華の視線に気付き、気まずそうに謝罪をしてきた。
「す、すまない勝手に着いてきて…。」
「俺達皆さんの戦いっぷりを見て感心しちゃって、気づいたら勝手に体が動いてたっす。」
白髪に黒色のメッシュの入った髪の天使の方は申し訳なさそうに謝り、白髪で睫毛の長い天使の方は誠意がないように見えてしっかりと頭を下げながら話していた。
「やってることがほぼストーカーだからな…本当にどう謝罪したらいいのか…。」
「謝罪なんかで足りないと思うっす。」
白髪の方がびしっと指摘をする。メッシュの入った天使は「…確かに。」と小声で呟いていた。
「……月華君。」
「…あぁ。」
二人は同時に思った。メッシュの入っている天使、彼はどこか抜けている部分がある、と。
「…まぁまぁ、ここで話すのもあれですし、今からお二人のとこ向かいますね。」
剣は天使の二人と合流することにしたようだが、月華は警戒しているようだった。
「い、行くのか??」
「うん、俺はあの二人、悪い人達じゃないと思う。もし警戒しているんだったら俺だけで行くけど…。」
「い、いや、それは不安だから俺も行く。」
月華も剣同様外に出る準備をし、屋敷から出て二人のもとへ行った。
「えーっと、具体的に俺らは何をしたらいいとかあるっすか??あ、俺はウェズっす。」
「俺はネザーだ。」
「俺は剣です、隣にいるのが月華君です。」
軽く自己紹介をした後、剣と月華は二人から人外の説明を詳しく受けた。最近一般人に危害を加える個体が増えてきていること、敵対的だが処分出来ない個体がいること、様々な個体について聞かされた。
「ざっくり説明するとこんな感じっす。何か気になったこととかあるっすか??」
「危害を加える個体が増えてる原因とかはまだ分からないですかね…??」
剣は少し不安そうに二人を見つめた。
「そう、そこなんすよ、俺らも分からなくて。まじで厄介っす。」
「消しても消してもまた湧いてくる…原因が分からないからひたすら討伐するしかない。」
ウェズとネザーは顔を顰め、考え込んでいる。
「……ただ、自分で言うのもなんすけど、俺らみたいな友好的な人外もいるってことを忘れずに。大事なのは協力っすよ。」
そう言ってウェズはネザーを軽く抱き寄せた。ネザーはその腕を払いのけ剣と月華に向き合った。
「もし良ければ、俺達にもお前達を手伝わせてくれないか。」
二人は迷うことなく頷いた。月華は始めこそ警戒はしていたものの、二人の真っ直ぐな目を見て決意したようだ。
「俺らが力になれるなら。」
「仲間として、よろしく頼む。」
「!!ありがとう…!!」
「あざっす」
ウェズからはやっぱり誠意は感じられないように見えたが、心の底から嬉しそうな声をあげた。その様子を、窓から月弥が見ており、四人を見て独り言を呟いた。
「新しい友達が増えたのかな。今度俺も話してみたいな…。……弟も、こんな風に思ったことがあるって言ってたっけ。」
月弥は次の瞬間、ふと何かを思い出したかのように場所を移動した。
人外屋敷地下室。普段は行くはずのないこの場所だが、月弥はよく行っていた。
「影人形の…月音。」
影人形の月音と呼ばれた個体はゆっくりと首を月弥の方へ捻る。ギギギ…という音を立てながら月弥の方を見ると、「まだ見つからないのか」とでも言いたげにゆっくりと体の向きを変えて月弥に近づく。
「一体俺の弟はどこに行ったんだろうね、影人形月音。…そしてお前はどうやって作られたんだろうね。……お前は俺の癒しだよ。」
月弥の悲しそうな声が、地下室に木霊した。
「ってもう夕方っすか、話してたらあっという間っすねぇ。」
「そろそろ俺達は天界に帰らせてもらう。また会おう、剣、月華。」
「はい!またお会いしましょうお二人とも!」
「またな。ネザー、ウェズ。」
ネザーとウェズは二人の頭を撫でた後、名残惜しそうに人外屋敷を後にした。
「優しい天使さん達だったね。」
「そうだな。」
人外屋敷に戻って行った二人は、部屋の中でまたくつろいでいた。
一方天使二人は、天界の仲間に剣と月華の自慢話をしていた。
「剣って子、超可愛いんっすよあんなに強いのに。」
「軽く人間やめてると思った…。」
「そっか、凄いねその子、僕も会ってみたいな。」
柔らかい笑顔でネザーとウェズの話を聞いていた天使、トネアは心底興味深いという様子だった。
「彼らなら、人形達の相手も出来そうだよね。」
トネアは真剣な眼差しで二人を見ていた。