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侵略者たち

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侵略者たち

11 - 010 闇夜の死客(1)

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2024年11月27日

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 大きな都市街でも、夜の街の明かりが暗い場所は多くあり、その路地には、近付かない者も多い。
「お前〜、酔っ払いすぎだよ〜」


「ごめ……うぷっ……」


「ったく、社会人になって何年目だと思ってんだ? そういう迷惑は自重できるようにしろよ……」


 グサッ


「マージごめん、うぷっ……マジ次から気を付ける……。ってあれ、聞いてる?」


 飲み会帰り、同僚の介抱で路上に吐いていた男性は、同僚の小言がなくなった違和感を感じ、背後を振り向く。

 そこには、背後から血を溢れさせ、肉塊がドロドロと背中から出続け、さっきまでの説教が嘘のように真っ青な顔で横になる同僚の姿が映る。


「え……何……? 夢……? 幻覚……?」


 男性は、咄嗟の判断力も虚しく、涙目を浮かべさせながら、状況把握に努めるが、アルコールに侵された脳では、その場から逃げるという行為もできなかった。


「ダメじゃないか……こんな夜中に、こんな暗い道を歩いていたら……。お母さんに習わなかったかい……?」


 どこからか、不気味な男の声が聞こえる。

 その声は、どこからともなく、男性を覆うように聞こえて、男性は気持ち悪くなりながらその場に蹲る。


 グサッ


「うぐっ……!」


 鈍い音を発し、肉体に半径10cmほどの穴が空くには、相当の威力が必要で、その鈍い音は周囲に響き渡る。


「上だよ……上……。ふふ……また栄養が増えたね……。お前は一生の相棒だよ……。これからも美味しい食事を食べさせてあげるからね……」


 そう言いながら、二人を刺し殺した男は、闇世の中で姿を眩ました。

 その無惨に内臓を散りばめた亡骸を残して。


 ――


「昨晩も二人……明らかな殺人。一昨日と昨日と、手口も一緒で、場所も全部路地裏っスね。一つ妙なのが、この経路……ここ、UT刑務局に少しずつ近付いてるんスよね。どうしますか? 鮪美まぐろび副局長」


 青色の髪、青色の瞳を浮かべさせながら、数枚の書類をペラペラとめくり、鮪美に尋ねる。


「お前、また勝手に書類漁ってんのか。指示が出るまでお前にその権利はねぇって何度言ったら分かるんだ。まあでも、こっちに向かって来てんなら話は早え。相手は明らかに侵略者じゃない。斬る……それだけだ」


「はぁ〜あ、これだから死神様はおっかねぇ。殺人犯だろうと、俺たちが第一目標とすんのは、身柄の拘束ですぜ。それを斬るの一言なんざ、どっちが殺人犯か分かったモンじゃねぇや」


 その鮪美を煽るような言い方に、鮪美は剣を抜く。


「よぅし、ロス。まずはお前からぶった斬ってやる」


「へへ、じゃあこれで、正当防衛ってことになりますかね」


 鮪美の威圧も諸共せず、ロスと呼ばれた青髪の男もまた剣を抜く。


 ゴン!!


「お前たち! 私闘はするなと何度言えば分かるんだ! どうしても意見が割れる時は、ジャンケンか指相撲って言ってんでしょうが!!」


 殺気立つ二人を諌められるのはただ一人、UT刑務局が局長、ブライト・D・ローガンだった。


「痛……。じゃあ、改めて指示するぞ。UT刑務局 特攻部隊隊長 ロスタリア・A・バーニス。部隊を引き連れて、夜間に犯人の特定、捕獲に当たれ。俺も夜は部隊を引き連れて身辺の見回りに行く。UT刑務局の名にかけて、これ以上の被害者は出させるな」


 ロスタリアはペロリと舌を出し、剣を戻す。


「へいへい、了解っスよ」


 ――


 複数枚の書類を机に押し付けると、集められた三人の前で、静かに透き通った目を見せる。


「UT刑務局は、この数日の殺人犯を本格的に捕まえるようで、私たちUT特殊部隊にも応援要請が入りました。闇夜に警備ロボの目を盗んで数人の殺害を行える犯人……簡単な相手ではありません。ですので、今回出動する部隊は、私から選出させて頂きます」


「それで、この三人の部隊ですか……?」


 不安そうな顔で、UT特殊部隊 六番隊隊長 ヴ・G・グは、目の前に鎮座する中隊長 アリス・F・マーマレードに尋ねる。


「はい。私の見立てによると、犯人は暗闇の中でも的を外さない視覚と、暗闇の中を自由に行動できる何らかの能力を秘めていると考えます。その為、どんな状況下でも臨機応変な対応可能な一番隊、迅速に仕事を全うする速度を持ち合わせる三番隊、そして、地空に対してアプローチが可能な六番隊が、この任務には相応しいと考えました」


 その真っ直ぐな見解に、常に煌びやかな装飾を纏い、元王子であることを強調する三番隊隊長 シルヴァ・J・ウラノスは、ニコッと微笑む。


「流石の采配です、アリス中隊長。この私の部隊に命を下さるなんて……。必ず成果を上げて帰還します」


 そうして、ニコッと深々とお辞儀をすると、くるりと後ろを向いて去って行った。


「そういう采配であれば、承知致しました。今夜九時より指揮系統を手配します。失礼します」


 続いて、六番隊隊長 ヴ・G・グも立ち去る。


「貴女も大丈夫ですね?」


 一人、呆然と立ち尽くす白髪の少女に、アリスは声を掛ける。


「命令、従う。私、使命」


「随分と日本語にも慣れましたね。今回も期待していますよ。一番隊隊長 ユェ・F・思妍スーイェンさん」


シー


 静かに頷くと、玥もその場から立ち去った。


「『これ以上の犠牲者を出したくない』、恐らく、刑務局の人たちもそう考えて、今回僕たち特殊部隊にも応援要請をしたんだろうね。犯人の的確な情報がない以上、どれだけ強者を揃えても被害が出る恐れはある」


 横の扉から、今までの部隊長たちへの指示を聞いていたであろう男は、ゆっくりと扉を開ける。


「今回は、僕も行こう」


「総隊長……! お戻りでしたの!?」


「今さっきだよ。慌ただしい様子が見えて、直ぐに司令室へと向かったんだ。さて、刑務局と特殊部隊……上手く連携は取れるのかな」


 そう言いながら、UT特殊部隊 総隊長 ビアンカ・D・ドレイクは、ニコッと笑みを浮かべさせた。


 ――


 作成実行、夜の九時。

 UT刑務局、UT特殊部隊の三部隊は、それぞれ当たりを付けた路地へと待機命令が下された。


「この人数、流石に特殊部隊の連中、人手を寄越し過ぎじゃないですかね? 隠れてるとは言え、こんなにわんさか人がいたんじゃ、犯人も現れらんないでしょう」


 やれやれと周囲を見回しながら、ロスタリアは暑苦しい制服を脱ぎながら緊張感もなく立ち尽くす。


「おら、隠密っつったろ。さっさと配置につけ。奴はこんなに証拠を残して、まるで俺たちを煽るかのように反抗に及んでいる。どんなに人員を集めても、必ず反抗に及び、逃げる三段でもあるんだろう」


 緊張感のないロスタリアの頭を軽く叩きながら、鮪美は帽子を深々と被る。


 そんな折、誰も隠れていないはずの路地裏から、うすらうすらと、人影がゆらりと現れる。


「ビンゴだ……」


 鮪美は静かに剣を構え、ロスタリアは無言で手を上げ、一番隊の隊士たちへ臨戦態勢の合図を送る。


「さあ、行くぞ……!」


「なんでこんな時間に、24時間営業の中古屋に付き合わなきゃいけねぇんだよ!! 明日朝イチで行くか、グータラなお前はネット通販とかでもいいだろ!!」

「あんなもの見せられたら今すぐにでもやりたくなっちゃうじゃないか〜! この見た目だと女一人じゃ職質か補導されちゃうんだよ〜!」


 そこに現れたのは、鮪美が以前、真夏日の任務で、第一級指名手配班 鮫島さめじま・A・つかさと遭遇した際に居合わせた、謎の蒼炎の剣士と、コスプレとしか思えない魔女っ子の格好をした、今にも職質をしたい身柄の女だった。


「な、なんでお前がここにいるんだよ!!」


 つい、鮪美は声を上げる。


「あ、お前……! あん時のスカした野郎!!」


「なんだ、鮪美さんのお知り合いっスか? こんな時に、緊張感を失くすような真似……」


 グサッ


 ロスタリアが警戒を解いた瞬間、背後に構えていた隊士から、鈍い音が響き渡る。


「ダメじゃないか……こんなに警察機構が勢揃いしているのに……油断していたら……」


 辺りに人影はなく、渋い男の声だけが空間に響き渡る。


「救護班……!! コイツを早く連れて行け……!!」

「クソッ……こんな時に……!!」


 闇の中で、静かに悪夢の時間が始まろうとしていた。


 ――


 ◇UT刑務局

 ブライト・D・ローガン(局長)

 鮪美まぐろび・B・斗真とうま(副局長)

 ロスタリア・A・バーニス(特攻部隊長)


 ◆UT特殊部隊

 ビアンカ・D・ドレイク(総隊長)

 アリス・F・マーマレード(中隊長)

 ユェ・F・思妍スーイェン(一番隊長)

 シルヴァ・J・ウラノス(三番隊長)

 ヴ・G・グ(六番隊長)

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