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侵略者たち

12 - 011 闇夜の死客(2)

2024年11月29日

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 こんなことになるなんて思ってもいなかった――。
 夜のテレビを見ている時、レトロゲーム特集といった、密かに未だ人気を画すゲームという内容の番組がやっており、そこには可愛いモンスターが映し出された。

 そのモンスターらは、どうやらルリのいた異世界のモンスターに似ていたらしく、昔は嫌になるほど倒さなければいけない対象だったが、会えなくなった今となってはむしろ会いたくなってしまったなんて言い出し、俺はわざわざこんな時間に、売ってるかも分からないゲームをルリと一緒に探しに行くことになった。


 一軒目は品がなく、未だ売っていそうな場所を尋ねたところ、どうやら都心の方になると案内を受け、「帰宅は私が浮遊魔法で楽に帰宅させてやるから!」というルリの熱弁により、夜の電車に揺られ、俺たちはこんな夜に都心部まで足を運び、薄暗い路地の先にある中古販売店を目指していた。


 そんな時、路地を抜けた先で、気に食わない奴No.1、UT刑務局副長の鮪美に出会したかと思えば、鮪美は刑務局の隊士を引き連れており、次の瞬間には、背後で隠れていた隊士が、何者かに奇襲を受けた。

 その後、俺たちを覆うように、どこからともなく、暗闇から声が響き渡るが、出所は分からない。


「な、なんなんだよコレ……!!」


「緊急事態なんだ!! 一般人はさっさと逃げ……」


 グサッ


 そう、鮪美が声を荒げ、こちらを振り向いた瞬間、鮪美な瞳は見開かれ、俺の背から急激な痛みが走る。


「ぐあっ……!!」


 目の前が暗くなる。

 そのまま、俺の意識は無くなった。


 ――


 一般人を巻き込んでしまった、新たな犠牲者を出させてしまった緊迫感より、鮪美は再び声を荒げる。


「ロス!! こっちにも医療班を寄越せ!! 急いで手当てをさせろ!! 連れて行け!! 残った者は背後に気を配れ!! 全員、剣を抜け!!!」


「ねえ、君……」


「お前……コスプレ女……! お前も早く逃げろ!!」


「上だよ、敵」


 ルリは杖を取り出すと、上空に魔法陣を展開。

 暗闇は一転、ルリの魔法により明るく照らされる。


「なんだ……コイツの能力か……?」


「これは光の防御魔法。強力だけど……相手も強力。魔の力を感じる。直ぐに破壊される」


「言ってることはよく分からねぇが……危険ってことに違いはねぇんだな……。上空に気を配る。お前はそういう能力なのか? 分からないが、お前はアイツの仲間だろ? 救護班が応急手当てに急いでる。お前も避難と合わせて向かってくれ。心配だろ」


「いや、優はね。アレくらいじゃ死なない。それよりも、あの力を君達だけで抑える方が至難。私はここに残って援護する」


「だから、一般人は巻き込めねぇんだっ……」


 ゴォン!!


 再び、別の場所から轟音が鳴り響く。

 一人の隊士は、見えない防壁に阻まれ、攻撃を受けなかった様子だった。

 ふと目をやると、ルリが杖を向けていた。


「ほら、君達では感じ取れていない。魔の気配が」


 そこで遂に、UT刑務局の隊士たちは、白日の元に晒された凶器を拝むこととなる。


「これは……侵略者だと……!?」


 ルリが魔法壁で守った隊士の横で、ウヨウヨと動いていたのは、上空から降り注ぐ巨大なミミズのような生物だった。


「でも、こんな形状の侵略者は見たことねぇ……」


「この子は侵略者で間違いないよ。でも、本来の大きさはこんなに巨大じゃない。この子は『スネーズ』と呼ばれる下級のモンスター。人間への害はほとんどないけど、他のモンスターに寄生する生物。だから、こんなに巨大で人を襲うなんてあり得ない」


「なんだ……お前……? 侵略者にも詳しいのか……? だとしても、連日に渡る犯行、場所などからして、どう考えても人間レベルの知性がある……。それに何より、あの不思議な声はどう聞いても日本語だ……」


「上を見て」


 ギリギリ、ルリの光が届かないくらいの上空のビルに、トカゲのように張り付く影が映る。


「なんだ!? 侵略者の本体……!?」


 鮪美からはギリギリ影として見えるソイツは、ロスタリアの目からはギリギリ正体が見えていた。


「アイツ……五年前に牢屋を脱走してから行方を眩ましていた、井筒団蔵っスよ……!!」


「なんだと……!? なんで今更奴が……! 消息不明だったじゃねぇか……。なんか臭うな……」


「ゴタゴタ言ってる場合じゃねぇですぜ……。次が来ます!! こいつぁ、とっ捕まえてるなんて言ってる場合じゃなくなってきましたよ!!」


 ザッ……!


「うーん、美しい光……まさに、私の参上に相応しいスポットライトのようだね!」


 そこに現れたのは、真っ白な羽を大きく広げ、井筒団蔵を瞬時に包囲する、UT特殊部隊 三番隊長 シルヴァ・J・ウラノス率いる三番隊だった。


「ダメ……! 何かおかしい……!!」


 ルリが必死に声を上げるが、時は既に遅かった。

 UT特殊部隊の三番隊隊士たちは、苦い声を上げながら次々に落下していく。


「何が起きている……?」


 隊長 シルヴァも異変に勘付き、すぐに井筒団蔵との距離を取るが、数名の隊士は地に伏してしまった。

 ふと落下した隊士に目を向けると、背中から小さな侵略者の一部がメキメキと生え出していた。


「種子……? この子、種子を飛ばしてる……!!」


「遠距離からの攻撃しかダメ……。しかし奴は暗闇の中で俊敏に移動可能……。近距離であれば、瞬時に近付いて攻撃し、離れる必要がある……。厄介だな……」


「こんな時……優がいれば……」


 ルリはふと、目を細め、声を溢す。


「アイツがいたら……何か変わんのか……?」


「この種子は、その名の通り、繁殖する為に飛散しているもの……。でも、本来であればやっぱり、求めるものはモンスターに宿る魔の力のはず……。優がいれば、他に飛散することもなく、優のみに飛ばされると思うの……」


「でも、それだとアイツは……! お前、仲間を見殺しにするつもりか……!?」


 そんな時、上空から叫び声が鳴り響く。


「うおわぁぁ!! ちょっと待て待て!! ここ空の上じゃねぇか!! 飛べねぇんだよ、俺!!」


「優!? どうして……!?」


 しかし、突如現れた優の出現により、三番隊の隊士たちに飛散していた種子たちは、全て優に集まる。


「お前……!! 危ないぞ……!!」


 しかし……


「は……?」


 ゴォン!!


「痛ぇ……。お前……テレポート使えるならせめて、地面に移動してくれよ……。なんで上空……」


 優は、そのまま地面に大きな音を立てて落下した。

 ふわふわと、優を連れてきた正体が現れる。


「お前は……確かUT特殊部隊 六番隊の……」


「雅・R・刹那です。一番隊、玥隊長の指示により、優をこちらにテレポートさせました」


(一番隊隊長が……? 何故だ……?)


 一瞬、鮪美の脳内に疑問が過るが、今はそれどころではない。


「そういやお前、種子は……!」


「あ……? 種子……? なんともねぇけど……」


 ルリはひょこっとしゃがむと、安堵の顔を浮かべる。


「やっぱり。優が持ってるその刀、魔を祓うから、優に種子が集まれば、勝手に退治できると思ったの。これで種子による犠牲者は減ると思うけど、やっぱり近付くのは危険かな。あの人がどうなっているのかは分からないけど、本体が直接乗っ取ってくる恐れもある」


 そんな中、一人の影がゆらりと動く。


「あらあら、鮪美さん。いつにもなく動きが固ぇですね。いつも、ぶった斬る、の一言なのに」


 その影は、特攻隊長 ロスタリア・A・バーニス。


「ロスか……。そりゃあ、ぶった斬って解決できるもんならとっくにしているが、初めての人間を介した侵略者だ。コイツは慎重に……」


「ふっ、らしくねぇや、鮪美さん」


 その瞬間、ロスタリアはバッと飛び上がる。


「おい……! ロス……!!」


 鮪美の仲裁も聞かず、UT刑務局 特攻隊長のロスタリアは、一人で井筒団蔵の本体へ向かってしまった。


 ――


 ◆緑一派

 鯨井・LU・優(異世界の魔王の息子)

 ルリアール=スコート(異世界の魔法使い)


 ◇UT特殊部隊

 シルヴァ・J・ウラノス(三番隊長)

 雅・L・刹那(六番隊)

 玥・F・思妍(一番隊長)


 ◆UT刑務局

 鮪美・B・斗真(副局長)

 ロスタリア・A・バーニス(特攻隊長)

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