テラーノベル
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放課後、
一人で教室に残るのは慣れているはずだった。
けれど今日の空気は、
なぜか重たく胸にのしかかる。
部活を終えた若井と涼ちゃんは、
手を振って笑い合いながら帰っていった。
滉斗『また明日な!』
涼架『またね元貴!』
その声は、
確かに僕に向いていたのに、なぜか遠い。
2人の背中が並んでいくのを、
どうしてだろう、
眩しさと寂しさで瞼を伏せる。
教室の隅に座って、俯いたまま自分の心が、
全部バラバラになりそうだった。
…なんで、僕は若井のことが好きなんだろう、
最初はただ話しやすい友達だった。
どんなときも中心にいて、
だけど弱い奴や静かな奴も、
ちゃんと輪の中に入れてくれる。
僕が気づけば1人になってる日も、
若井は『元貴!』って声をかけて、
いつも一緒にいてくれた。
その優しさにたすけられた瞬間が、
いっぱい胸の中にある。
だけど、
“じゃあ、その優しさって、
誰にでも向けられてるものだよね”
“僕だけじゃない”
そう思うたび、
自分の特別になりたい気持ちが苦しくて、
みんなに優しい若井が、逆に遠く感じる。
涼ちゃんと楽しそうに笑い合う姿を見て、
“もしかして、2人って付き合うのかな”
“涼ちゃんのことが好きなのかな”
考え出したら止まらなかった。
2人でいる時の若井と涼ちゃんは、
不思議なくらい自然で、
僕だけが3人の中で浮いているような気がした。
妬ましい、とか悔しいとか、
言葉にするのが勿体無いぐらい――
全部自分が悪いみたいで、
自分の気持ちが嫌で堪らなくなった。
…どうして好きなんだろう、
好きになんてならなかったら、
こんなに苦しくならなかったのに。
それでもやっぱり、
若井のことを考えずにはいられなくて、
会いたくて、声が聞きたくて…
若井は僕のこと、どう思ってるんだろう、
友達?それとも、ちょっとは特別?
もし“好きだ”なんて言ったら、
全部壊れて二度と元に戻れない気がした。
机に突っ伏して目を閉じたら、
涙があふれて止まらなかった。
服の袖で拭っても、嗚咽の音がこぼれる。
なんで僕、こんななんだろう
なんで、若井なんだろう
自分の弱さも恋心も、
自分じゃどうにもできなかった。
友達として平気なふり、当たり前の顔、
その全部が急にできなくなって、
胸の奥がぎゅうっと痛かった。
涙は止まらないまま、
『ごめん、ごめん、』って
自分自身を何度も責めて
小さな声で何度もつぶやく。
でも、ただ泣くだけ泣いたら、
少しだけ楽になった気がした。
本当はこの気持ち、誰にも知られたくない。
だけど、一人きりで抱えるのも、
正直辛くて堪らない。
きっと明日も、
若井の前では何事もなかったみたいに笑おう。
そう決めながら、
僕は頬の涙をそっと拭った。
――好きな理由なんて、うまく言えない。
それでも、どうしても、
若井じゃなきゃ駄目なんだ。
それが1番切なく、怖い真実だと思う。
“自分のことどう思ってるのかな”
“どうしてこんなにも好きなんだろう”
“どうしてこの人じゃなきゃ駄目なんだろう”
など、三角関係・片思いならではの感情を
意識して制作してみました。
恋愛は楽しいこともありますが、
時には辛いこともあると思います。
色々と考えすぎて、
何が何だか分からなくなって、
感情が抑えきれないこともあると思います。
それで今回、
もっくんは自分を責めてしまいました。
そんなもっくんに寄り添いながら、
読んでいただければ幸いです。
コメント
2件
悲しすぎる(´;ω;`)大森くん自分を責めないで🥺大森くんが報われるといいなぁ!若井くんの好きな人が気になりすぎる!!続き楽しみに待ってます(*^^*)