家に帰っても、心は何だか重いままだった。
夕食の席で母が、
『元貴、最近どうしたの?元気なさそうね』
と言うけど、『うん、疲れてるだけ』
と嘘をついた。
部屋にこもってスマホを眺める。
グループLINEには、
滉斗“テスト近いけど大丈夫か?”
涼架“明日何食べたい?”
涼ちゃんと若井の、
いつもの、楽しげなやり取り。
僕は何も返さず、
ただ長いこと画面だけ見ていた。
2人のトーク画面に、何度も、
“好きだよ” “辛いよ”って打っては消す。
既読もつけずに、
タイムラインや過去の写真を遡る。
例えば明日、若井が『好きな人いる』って
言ったらどうしよう。
それが涼ちゃんなら、どうしよう。
堂々巡りの不安に、胸が締め付けられる。
夜、ベッドの中で何度も涙がこぼれた。
静かな部屋の天井を見上げる。
もう、なにも考えたくないけど、
考えずには眠れない。
好きにならなければよかったのに。
でも、若井じゃないと駄目だって思ってる。
もし全部打ち明けて、
友達でいられなくなったら…
そんな未来が怖すぎる。
どうしてこんなに、
苦しくなるまで好きになっちゃったんだろう、
布団の中で声も出せず、
また小さく泣いてしまう。
そのとき、スマホが音もなく震えた。
LINEに若井からメッセージが届いていた。
若井『元貴、明日ちょっと話せる?
放課後、屋上来てほしい』
心臓が跳ねる。
何か気づかれた?
それとも、嬉しい話だろうか。
怖さと、ほんの少しの期待が混ざって、
どうしていいかわからない。
眠れぬまま夜が過ぎていった。
でも――
もしかしたら、
明日、何か変われるかもしれない。
小さな光を頼りに、
僕は涙で滲むスマホをそっと枕元に置いた。
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続き楽しみです…!