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電車に一駅分だけ乗って着いた店の裏へ回り、二階の家へ繋がるインターホンを夫は連打した。
「ちょっとっ……サエちゃんがビックリするって」
いるか、いないかは分からないけど、非常識な押し方だ。
“はい”
不機嫌なマスターの声に
「先輩、降りてきて。話がある」
マスター以上の不機嫌さで夫が言った。
「どうした……?休みに……」
私服のマスターを初めて見たな……
と、思う私の隣に立つ夫は
「ちょっと入って」
マスターの肩を押して、裏から店へと入る。
怪訝そうな表情でマスターが私を見たけれど
「スミマセン……」
としか私は言えなかった。
「既婚者合コンって、何?この店のどこでやるわけ?」
店の真ん中に立った夫は、マスターを見据えて聞く。
「ああ、そのこと。そのテーブル席だ。カウンターには誰も座らない」
「それでもわざわざ俺に言わんかったんは、なんで?」
「わざわざってことはないし、知っていると思っていたけど?」
がっ…ッツ……
「ハルくんっ…!」
マスターのポロシャツの胸ぐらを掴んだ夫は
「知っていたら、直美をこんなところに連れて来ない!」
と言い、マスターの背中をカウンターにガンッ……押し付けるようにした。
「直美はもう来させない。先輩と俺も二度と会わない。客に聞かれても絶対に直美のこと、何も教えるなよ?」
「わかってるって…そんなこと」
「ぁあっ?わかってへんから、合コンなんて日に直美をここに立たせてたんやろうが?」
「ストップッ…」
拳を振り上げた夫を何とか止めると
ガン、ッ……ゴンッ……
夫はマスターをカウンターに捨てるようにしてから、スツールを蹴った。
そしてまた私の手を引っ張る。
「待ってって……マスター……お世話になりまし……」
最後まで言い終わらないうちに、私は店の外に引っ張り出された。
……終わった……こんな形で終わるとは、思ってもみなかった。