テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
本編どうぞ
キーンコーンカーンコーン…
「起立,礼_____」
裏ボスの声で挨拶を終えた後,一緒に帰る約束をしたロシアに会うため別校舎へと足を進める。
…日本を連れて。
「…後ろの,誰?」
「…悪い」
「いや,めっちゃ可愛いんだけど。普通に連れてきてくれてありがとう」
まじかロシア…
「…こいつ男」
「へ~…中性的な顔だもんな,女って間違われそう」
意外にも,普通。ロシアはそのまま続ける。
「なぁ,名前何て言うの」
「あ…日本国と言います,日本って呼んでください…」
「日本,ね。俺はロシア,宜しく」
ロシアは簡単に自己紹介して,日本にすっと手を差し伸べる。日本は握手だと思ったんだろう,その手を何の疑問も無く取ろうとするが_____
ぎゅっ
瞬間,ロシアは日本の手を引き,バランスを崩した日本に覆い被さるようにして抱き締める。
「やべー,超抱き心地良いんだけど!」
「ロシア,あのなぁ…」
案の定,日本は何が起きたか理解できていないみたいだ。
「ごめんこいつ,距離近いの」
「は,はい…」
初対面で抱き締められる何て想像にも無かっただろう。日本はまるで熊に捉えられた猫のように震えていて,どうにもいたたまれない。
「ほら,ロシア,放してやれ」
「もーちょっと…」
「妹に見付かったらまた刺されるんじゃねーの」
妹,というワードを出すとロシアは即座に日本を手放した。やっぱ便利だな。
「今日,日本も一緒に帰るから。あと転入生だから,色々教えてやって」
「あーい…」
今朝はあれ程嫌だった校門も,今は少しくぐることが寂しく感じる。
「アメリカ,早く~」
と,同時に,家に帰ったら何をしようかとか,色んな期待と想像で胸が膨らむ。
照りつける日差しとアスファルトの熱。丁度1日の中でピークの気温で,頬を撫でる風すらも涼しいとは感じられなかった。
「てか,聞き忘れたけど,日本は家どっちなの?俺らは近くだけど,日本は違うんじゃねーの」
「えっと,向こうの方です」
「じゃあ方向は同じだな,良かった」
それきり何を話したら良いのか良く分からなくて,お互いに黙ってしまった。気まずさを紛らわすべく,能天気に歩いているロシアに声を掛ける。
「ロシア,ホントに暑くねーの」
「ぜーんぜん」
夏物のYシャツの上に黒のカーディガンを羽織ったロシアの服装は,この熱気の中に不釣り合いで,何処か浮いていた。
「てか,日本も長袖じゃん!仲間!」
突然話し掛けられた日本は小さく肩を震わして,そうですね,と曖昧に微笑む。細めた瞳に太陽光が反射して煌めいた。…まつげの落とす影が勿体無い。それさえ無ければ,その目はもっと絢爛さを増すだろうに。
「日本は何で長袖着てんの?」
ロシアの純粋な問い。
それに日本は一瞬表情を曇らせた気がした。
「…教室の冷房が効いてると,寒くて」
「まじ?俺は全然足りないんだけど!…でも日本は小さいもんな,小動物って感じ?寒いの弱そう」
「…これから大きくなるんですから…」
そう言って,日本は少々顔を赤らめた。
どうやら小さいことがコンプレックスなようだ。けど,否定はしないのか。それが可笑しくて,思わずくすくすと笑いを漏らした。
「あ,アメリカさん,何笑ってるんですか!」
「小さいのは認めんの,面白いな」
「…アメリカさんとロシアさんは,身長高くて羨ましいです…」
そう言って羨望の眼差しを向けてくる日本を見て,俺は謎の優越感を抱いてしまった。
「良いじゃん,日本は小さいの似合ってるぞ」
ロシアが口を挟んで来た。
「似合…う?」
「うん,抱き心地良いし」
「あ,そ,それはありがとうございます…?」
違う日本,そこ感謝する所じゃ無い。
「ロシア…お前変態みたいだぞ,というか変態。日本もありがとうとか言わなくていいから」
「は!?変態じゃねーし!」
そう言ってロシアは再び日本を抱き寄せた。
「ほら,何か子供体温って感じして温かい!」
「…子供じゃ無いです~…!」
何とかロシアの腕から抜け出そうとするものの,結局その腕に抗うことは出来ず,大人しく腕に収まる日本。その姿は確かに子供のようで,またも俺は笑いを漏らした。
「いい加減放してやれよ,ロシア~」
「やだー,家までこうする~」
「ははっ,どんまい日本」
「笑ってないで助けて下さい~…」
べっとりとくっついて離れないロシアに離れろ離れろと言いながらも,日本の顔は心底嬉しそうだった。
やがて家まで残り僅かになって,ロシアは名残惜しそうに一層腕に力を込めた。
…それが間違いだった。
「兄さん,そいつ誰…?」
ベラルーシ。
ロシアの妹。兼,ブラコンでヤンデレ。
「ねぇっ,ソイツ誰?兄さんは今日アメリカさんと2人で帰る筈だったんでしょ?ていうか私も一緒に帰りたかった!何で教室居ないの?私探し回ったのに…けどそいつ誰!?」
物凄い剣幕でロシアに詰め寄ったベラルーシは,ここぞとばかりに言葉を並べた。
「…落ち着けベラ…」
「こんな状況,落ち着ける訳無いじゃない!ていうか,あんた兄さんから離れなさい!」
言い放ったベラルーシは,日本の腕を乱暴に掴みロシアから引き離す。
「痛っ」
日本は一瞬,酷く表情を曇らせた。さっき感じたあの表情よりも,冷たく,鮮明に。
「おいっ,ベラルーシ…」
思わず声を上げる。
が,その瞬間ベラルーシは硬直する。
「…ベラ?」
「…綺麗」
ぽつりと呟いたその言葉は,誰もが納得するであろう反応だった。
日本の瞳は真っ直ぐにベラルーシを捉えていた。気まずそうに目を逸らしたベラルーシに,もう戦意なんて無い。
「…えっとベラルーシ,さん?」
「…気安く呼ばないで」
「ご,ごめんなさい…僕,ロシアさんの友達?で…」
「そうだよ,日本は友達だから」
「…友達にしては,距離が近いじゃない…」
「それはロシアの距離感がバカなだけで…」
「兄さんの事バカって言わないで!」
しばしの言い合いが続いた。
「とりあえず,もう家入れよ…目の前じゃん,こんな道路の真ん中で言い合いすんなよ」
少し冷静さを取り戻したベラルーシは,しぶしぶとロシアの腕を引いて家に入ろうとした。
「…あんた,名前何?」
「に,日本です…」
「…今度兄さんに手を出したら許さないから。兄さんに近付く女は私が全員……」
「えっと,僕は男です…」
絶句。
うん,当たり前の顔。
「うっ,嘘でしょ!?!?!?」
「本当です!ほら,保険証!」
恐る恐る保険証を確認したベラルーシは,信じられないという顔で何度も日本と保険証を交互に見る。
「…な,何か…悪かったわね…」
「…いえ…」
既視感のある会話だなぁ。
「ほら,もう良いだろ。いい加減家入れよ」
まるで燃え尽きてしまったような顔をしたベラルーシと,何か言いたげなロシアは今度こそ家に入っていった。
(ロシアも苦労するな…)
気付けば帰路には俺と日本の2人。
「…帰ろうか」
しばらく揉めている内に,先程までちらちらと帰路を辿っていた生徒達の姿も無くなっていた。
一言も交わすことは無い。
「…じゃあ,俺の家,ここだから」
「はい,今日は…迷惑を掛けてしまってごめんなさい」
申し訳無さそうに日本は謝る。
いや,あれは100%あのバカ兄妹のせいなんだけど…
「…迷惑じゃないよ。でも,ベラルーシとロシアには気を付けとけ」
「…はい,分かりました。」
名残惜しい。
ロシアがあの時腕の力を強めたのも分かる。
「…日本」
日本の瞳は,俺を捉えていた。いや,そう思いたかっただけかもしれないけど。
「またな」
日本の目が見開かれていく。
そんなに変な事,言ったかな。
「…はい!」
ふわりと,柔らかく微笑んだ。
日本も,不釣り合いだと思った。
目に映る景色の中で,彼だけが浮いていた_____
「兄さん,何かご機嫌だね」
カナダがふとそう言った。
「…そうか?」
「うん。何か良いことあったの?」
「…んー…別に。久し振りに友達に会ったからかな」
「そっか~」
…そっか,俺,今良い気分なのか。
そんな,表面に出る程?
これと言って,特別な事なんて無かった。
でも,これまでに無い位気分は高揚していた。
…憂鬱な学校も,明日からは何だか楽しめそうな気がした。
それから,ベラルーシが,
「男…美少年…これはおいしい…」
とか,変なことを言ってたのは秘密。
_____今回は日本が可愛いがられてましたね。
ちょっとだけ乱暴に振る舞ったベラルーシをお許し下さい。ロシアが大好き過ぎるだけです。最後は何かに目覚めたようですし。
↓おまけの日本達
コメント
4件
ええーハイ、神!天才!一生尊敬します!
もう全部がすきすぎる、 ロシアの距離バグ可愛いしアメリカも無自覚にふにゃってなるのも良すぎる…‼️‼️‼️ 絵も透明感えぐすぎて…😩🫶🏻 応援してます🥹💖