「ふっかー!あれ取りたいっ!」
〇〇が指さしたのは、
巨大なぬいぐるみ。
どう見てもアームの力では無理そうなやつ。
「……これ、たぶん無理だよ?」
「え〜、ふっかなら取れるって!」
「その信頼いらねぇよ」
そう言いながらも、
100円玉を入れて構える深澤。
ガシャン。
アームは虚しくぬいぐるみの耳をかすめて終了。
「うわ〜惜しい!あとちょっとだった!」
「いや、これ“あとちょっと”って言える距離じゃねぇ」
二回目。
三回目。
「ふっか、もう500円入れてるけど……」
「大丈夫、男には引けねぇ戦いがある」
「(いや、クレーンゲーム相手にどんな戦いしてんの)」
五回目。
アームがゆっくりぬいぐるみを持ち上げ——
ポトン。
「……落ちたぁぁ!!」
「クッソ……!」
本気で悔しそうな顔をしてるのが、
逆におかしくて夢主は笑ってしまう。
「ねぇねぇ、もう私やってみてもいい?」
「いいけど、絶対無理だぞ?」
100円投入。
カチカチ。
ポトッ。
「……取れた」
「……は?」
ふっか、固まる。
「え、ちょ、え?マジ?」
「ふふっ、ありがと、ふっかの代わりに取っといた」
「おい!俺の努力返せ!!」
「努力は見てた!かっこよかったよ!」
「フォロー雑っ!」
照れ隠しに〇〇の頭を軽くぽんっと叩きながら、
ふっかは少しだけ笑った。
「……お前、ほんとに敵わねぇな」
「でしょ?
クレーンゲームより私のほうが難しいでしょ?」
「うるせぇ」
頬をかきながら笑うその顔が、
景品よりずっとキラキラしてた。







