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なぽりんたん☯️
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パピコォォォ
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#文スト
パピコォォォ
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文スト×ヒロアカ 0ーープロローグ
空が歪んでいた。
耳鳴りがする。
遠くで何かが崩れる音が聞こえる。
身体から力が抜けていく。
温かいものが流れ出ていく感覚だけが妙に鮮明だった。
ああ。
俺は死ぬんだな。
霞む視界の向こうで、誰かが何かを叫んでいる。
聞き慣れた声だ。
必死で。
情けなくて。
それでいて、どこか安心する声。
「……や……ちゅ……や……」
ぼやけた意識の中、その声だけが妙にはっきり届く。
「……中也ッ!!」
視界いっぱいに飛び込んできた顔に、思わず笑いそうになった。
太宰だった。
大嫌いな青鯖。
いつも人を食ったような顔をしているくせに、今はひどい顔をしている。
焦り。
怒り。
悲しみ。
悔しさ。
どうしようもない無力感。
全部がぐちゃぐちゃに混ざっていた。
そんな顔、初めて見た。
「……あ……」
声を出そうとする。
だが息を吸った瞬間、喉が痙攣し、ごぼりと血が溢れた。
「中也!」
太宰が震える声を上げる。
「……だ……ざい……」
「喋るな!」
叱るような声だった。
俺は薄く笑い、頬に添えられた手を掴む。
冷たいと思っていたその手は、ひどく温かかった。
「……だ……」
「だから喋るなって言ってるだろう!」
「……いい、か……」
血が零れる。
息が苦しい。
それでも言わなければならない。
「これは……俺の……自己満足だ」
途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「嫌がらせ……だよ……」
「中也……」
「とっておきの……な……」
太宰の顔が歪む。
俺が何を言おうとしているのか分かっているのだろう。
「分かった」
太宰は何度も頷いた。
「分かったから。もうすぐ与謝野先生が来る。だから――」
その先は続かなかった。
言っている本人が一番分かっている。
間に合わない。
汚濁に侵された身体は、とっくに限界を超えている。
与謝野が来る前に終わる。
俺も。
太宰も。
分かっている。
「中也――」
「聞け」
最後の力を振り絞って手を握る。
肺が軋み、また血が溢れた。
それでも構わない。
これは絶対に伝えなければならない。
「……太宰」
「……なんだい」
震える声だった。
こんな太宰を見る日が来るなんてな。
「街を守れ」
太宰は目を見開く。
そして、苦しそうに笑った。
「それは君の仕事だろう」
「うるせぇ……」
息が苦しい。
視界が滲む。
それでも言う。
「お前は……生きろ」
その瞬間。
太宰の顔が、くしゃりと歪んだ。
熱い雫が頬に落ちる。
ぽたり。
また一つ。
ああ。
泣いているのか。
太宰が。
俺のために。
胸の奥が締め付けられる。
愛おしいと思った。
同時に悔しくも思った。
まだやり足りない。
もっとこいつと馬鹿をやりたかった。
もっと喧嘩したかった。
もっと隣で笑っていたかった。
まだ見たことのない太宰の顔を、もっと見てみたかった。
もっと…生きていたかった。
「この馬鹿……!」
太宰の声が震える。
「君は本当に馬鹿だよ……!」
次の瞬間、身体が引き寄せられた。
強く。
壊れそうなほど強く。
太宰の胸に抱き締められる。
とくり。
とくり。
耳元で心臓の音がした。
温かい。
生きている。
太宰は、生きている。
それだけで、不思議と安心した。
力が抜ける。
指先から感覚が消えていく。
それに気付いた太宰が慌てて身体を離した。
「中也?」
覗き込んでくる顔が滲む。
「中也!」
必死に呼ぶ声。
縋るような声。
「目を開けてよ」
太宰が言う。
「まだ話が終わってない」
終わってないか。
そうだな。
確かに。
一つだけ。
まだ言ってなかった。
「なぁ太宰」
「なんだい」
「お前と組んでたの」
「最悪だった」
「うん」
「本当に最悪だった」
「知ってるよ」
俺は笑った。
慈しむように。
愛おしむように。
目の前の男を見つめる。
「でも……愛してた。」
太宰が息を呑む。
世界が静まった。
崩れる音も。
風の音も。
何も聞こえない。
ただ太宰だけが見えた。
「……太宰」
震える唇が開く。
「ずるいなぁ、ほんと。」
そして絞り出すように。
「…僕も愛してる。」
視界が狭くなっていく。
音が遠ざかる。
感覚が消えていく。
もう時間がない。
ゆっくりと瞼が閉じていく。
その途中。
太宰の顔が近づいた。
柔らかな感触が唇に触れる。
温かかった。
ああ。
泣いているんだな。
俺も。
太宰も。
涙が一筋、頬を伝った。
そして。
優しく。
壊れそうなほど優しく。
「さようなら」
少しだけ掠れた声で。
「また来世、私が君を見つけてあげるから。」
暗闇が降りてくる。
不思議と怖くはなかった。
「馬鹿、お前じゃ無理だ。…俺が見つけてやるからよ。」
きっとまた会える。
そう思えたから。
だから俺は。
静かに、その闇へ身を委ねた。
「……おやすみ、中也」
最後に聞こえたのは。
誰よりも愛おしい声だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
唯一、回収できたものだった。
中原中也の帽子。
無理を言って、尾崎紅葉から譲り受けた。
あの男の遺品と呼べるものは、もうほとんど残っていない。
激戦だった。
あまりにも。
遺体すら満足に残らなかったのだから。
机の上に置かれていた帽子へ、ゆっくりと手を伸ばす。
指先が触れる。
黒い生地。
長い年月を経てもなお残る面影。
けれど。
近くで見れば、その傷みは隠しようがなかった。
裂けた縁。
ほつれた糸。
擦り切れた部分。
あの日の爪痕が、そのまま刻まれている。
太宰は帽子を両手で持ち上げた。
そして胸元へ引き寄せる。
その瞬間だった。
堰を切ったように感情が溢れ出した。
「――――っ!!」
声にならない。
息が詰まる。
肺が痛い。
視界が滲む。
膝から力が抜けた。
そのまま床へしゃがみ込み、帽子を抱き締める。
強く。
壊れてしまいそうなほど強く。
ぽたり。
涙が落ちた。
フローリングに小さな染みが広がる。
ぽたり。
ぽたり。
止まらない。
どれだけ歳を取ろうと。
どれだけ時間が経とうと。
涙だけは止まらなかった。
そして。
聞こえるはずのない声が聞こえた。
『太宰』
不機嫌そうな声。
いつものように眉をひそめている顔まで見える気がした。
「なに」
掠れた声で返事をする。
『太宰』
今度は真面目な声音。
「なに」
『太宰』
呆れ切った声。
何度も聞いた。
何百回も聞いた。
「なに……」
『太宰』
酒に酔った声。
「なに……?」
『太宰ッ!!』
怒鳴り声。
喧嘩の始まりを告げるような。
「なにさ……」
『太宰っ!』
焦った声。
珍しく余裕を失っていた時の。
「なに……」
『太宰』
楽しそうな声。
心底愉快そうに笑う声。
「なに……っ」
『太宰!』
誇らしげな声。
高らかな声。
生きることそのものを肯定するような声。
「なに……」
そして最後に。
『太宰』
優しい声だった。
静かで。
穏やかで。
どこまでも愛おしそうな声だった。
太宰の肩が震える。
唇を噛む。
息を殺す。
それでも嗚咽は漏れた。
「……っ」
帽子を抱き締める腕に力が入る。
まるで。
失ったものを取り戻そうとするように。
震える声。
かすれた声。
それでも必死に。
返事をする。
「…なぁに……中也」
返事は返ってこない。
もう。
二度と。
返ってこない。
いつだって返してくれた。
どんな時でも。
面倒臭そうにしながらも。
文句を言いながらも。
ちゃんと返してくれた。
けれど。
今だけは違う。
何度呼んでも。
何度返事をしても。
君は答えてくれない。
部屋には静寂だけが残る。
太宰はそのまま動けなかった。
帽子を抱いたまま。
何時間も。
何日分もの涙を流すように。
泣き続けた。
ーーーーー
太宰は多くの人を見送った。
仲間を。
敵を。
友人を。
大切だった人たちを。
それでも生きた。
中也が残した言葉があったからだ。
守れ、と。
生きろ、と。
願いだったのか。
呪いだったのか。
最後まで分からなかった。
けれど太宰は、その言葉を守った。
呼吸のように繰り返していた自殺もやめた。
死にたくなる夜を越えた。
何十年も。
何十年も。
独りで。
そうして気づけば百年近い歳月が流れていた。
世界は変わった。
街も変わった。
知っている人間は誰もいなくなった。
けれど。
机の上には今も帽子がある。
たった一つ残された。
彼の証。
太宰はそっと帽子を撫でる。
そして小さく笑った。
泣きそうな顔で。
「……まだ生きてるよ」
誰に聞かせるでもなく。
ただ一人。
もう会えない相棒へ向けて。
「約束だからね」
静かな部屋に。
その声だけが、いつまでも残っていた。
コメント
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もう、、第1話からこれかよ…!!😭💔 中也の最期の言葉、「でも愛してた」が刺さりすぎてもう無理…! 太宰の「僕も愛してる」からのキスシーンもだけど、その後何十年も帽子抱いて泣きながら生きてる太宰が辛すぎるよ… 「まだ生きてるよ」って呟くところ、約束守り続けてるんだなって思ったら涙が止まらん…次話も読むね!!🌸