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#塩レモン
さしいす
357
つぶ
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後編。
最後までしないけど手が早い佐野さん。
第四週
最後の検証案
『よっしーの抱き枕(生身)』
あの後、打ち合わせでまともな解決策など出るはずもなく、「もうお蔵入りになる覚悟で一回抱き合ってこい」と半ば投げやりに楽屋へ送り出された二人であった。(塩﨑は若干渋っていたが話の着地点が見えず最終面倒になった。)
どうせ放送できないだろうと、山中はタイトルコールもカットする。
「ちょっ、ねぇ柔太朗!『抱き合ってこい』ってそれそのままの意味だよね!?ハグってことだよね!?」
モニターに向けて取り乱す吉田の姿を眺めながら、佐野は不満そうに口を尖らせた。
「え、だから一回くらい試してみようって言ってるじゃん。絶対優しくするからさぁ。」
「まだ言うかお前……!!普段彼女にもそんな適当なアプローチしてんの!?」
「いやいや、俺と仁人じゃ関係性が全然違うじゃん。」
あっけらかんと言い放つ佐野に、吉田は「はぁ!?」と眉をひそめて絶句する。
「…だってさぁ、」
佐野からしたら、吉田は同じグループで一蓮托生を誓った相棒であり、家族同然に失いたくない大切な存在だ。『好き』や『愛』といった安直な言葉で、自分たちの関係を定義づけられたくないとすら思っていた。
そこにただ、他のメンバーには絶対に持ち合わせていない少しの独占欲と、陰に隠れた性的な感情が交ざり合っているだけ。
お互いにとって一番甘えられる相手は、結局のところ自分なのだと自覚している。それだけで十分ではないだろうか。
下手に『付き合う』なんて形を決めてしまえば、いつか訪れるかもしれない『別れる』という選択肢が生まれてしまう。佐野にとっては、グループという絶対的な絆を失い、いつか壊れてしまうかもしれない関係性に怯えることのほうが遥かに嫌だった。
「……ってことでさ、下手に付き合って別れるくらいなら、ずっとグループのメンバーとして一緒にいるほうが安心じゃん。」
佐野がぶーぶーと不満を漏らすと、吉田は不機嫌そうに口元を歪めた。
「なによそれ?ほんと、どの口で俺を抱きたいとか言うわけ?勇斗が俺に触りたいなら、ちゃんとはっきりさせてくれないと嫌なんだけど。」
吉田からしたら、そんな佐野の不安や保身など知ったことではない。
恋人にはなりたくないくせに身体は抱きたいなどと身勝手な要求をのたまう佐野の図々しさに、吉田は本気で呆れ果てていた。あの楽屋での打ち合わせの時点で何度も「仁人のこと抱きたい」と不躾なワガママを重ねられ、一度は頭を引っ叩いてやったというのに、まったく懲りる様子のない佐野のしぶとさに、吉田は今度こそ本気で殴り飛ばしてやりたい。
グループという枠組みの永遠性に甘えたい佐野。
触れ合う以上は、うやむやにせず明確な筋を通してほしい吉田。
そんな二人の重苦しい空気を余所に、モニタールームからは容赦のない野次が飛んでくる。
『まーでも勇ちゃん、普通の感覚で言うたら仁ちゃんの意見に軍配が上がると思うでぇ。彼女側からしたら、関係をはっきりさせないで身体だけ重ねたいってクズ男の常套句やもん。女の子からしたら大炎上もんやで。』
『俺ら特殊な環境だから、勇ちゃんの関係壊したくない気持ちもわからなくもないけど。でも言ってることはだいぶクズでサイテーだけどねぇ。勇ちゃんのはセフレ提案してるようなもんだし。』
『…そもそも!!そんな責任取れへん男に、うちの大事な仁人はあげられへんわぁ!手塩にかけて育てたうちの箱入り娘なんやから、そんな中途半端な気持ちで手ぇ出したらほんまに許さへんで!』
『そーそー、うちのよっしーは箱入りなんだから。ちゃんと結納品持って俺らに挨拶しに来ないと駄目だからね。』
『俺は勇ちゃんの味方もしたいけどぉ、やっぱり仁ちゃんに悲しい思いはしてほしくないねん。色恋沙汰に関しては温室育ちのお姫様なんやからさ〜。』
モニター越しに言いたい放題の三人だが、そもそも性的な感情が混ざっている時点で吉田に向けられている感情だけが特別なのだと、佐野には早く自覚してほしいのが本音である。
佐野は世間では実直で誠実なイメージが定着しており、なんなら「彼氏にしたい男ランキング」でTOP十位入り(M!LK内では堂々の一位)を果たしている。
しかし今、信頼するメンバーたちから容赦なく『箱入り娘を弄ぶサイテーのクズ男』のレッテルを貼られ、反論の余地もなくグゥの音も出ない。
一方の吉田は吉田で、佐野が最低扱いされていることには全面的に同意しつつも、自分が女性扱いされている現状に、馬鹿にされてるような納得がいかないような複雑な顔を浮かべていた。
◇
『じゃ、三時間まずは抱き合ってくださいね。』
山中のあまりにも直球で無慈悲なアナウンスが楽屋に響く。
(言い方ッ!!)
吉田は心の中で激しくツッコんだ。
そもそも、この企画の始まりを思い出してほしい。
本来は仕事に全力で奔走するあまり、まともに睡眠も取れていない佐野に少しでも寝てもらいたい、というのがこの企画の本質だったはずだ。
吉田に言ってきた言い分はクズ男極まりないが、M!LKのために寝ずに頑張る仕事人間の佐野を支えたいという気持ちに嘘はない。
——グループのために一途に邁進するこの男に、ゆっくり寝てほしい。
ほんとうに、ただゆっくりと寝てほしいのだ。
少しでも心地よく眠れる環境が作れるのなら、自分にできることなら何だってしてやりたい。
(…そのために抱き枕ぐらいなんだ…!)
「…うん、よし…、覚悟は決めた!勇斗、寝るぞ。」
腹を括った吉田が男らしく宣言すると、佐野は期待を込めたような顔で聞き返してきた。
「え?えっちしていいってこと?」
「さっきからえっちえっちうるせぇな!!はっ倒されたいのかお前は!!普通に抱き枕としてってことだよ!!いい加減その脳内お花畑中学生男子から卒業しろ!!」
言っとくけど少しでも変なことしたら本気でぶっ叩くからな!!と、吉田は自分の身体を守るように抱きしめ、猫のように全身の毛を逆立てて威嚇するのだった。
◇
畳の上に敷かれた布団。
そこに佐野が先に寝転び、その横へ吉田が四つん這いで近づき、意を決したようにころんと隣へ寝転んだ……のだが。
その先がどうしたらいいかわからない。
なんせ、抱き枕なんて体験は一度もしたことがないのだ。
「…ねぇ勇斗。抱き枕って…俺、このあと、どうしたらいいの……?」
寝転んだまま、大きな目で佐野の顔を覗き込むように見上げ、ごく素直な疑問を口にする。
さっきまではっ倒すやぶっ叩くなどとキレ散らかしていた男とは思えない、不安そうに見つめてくる子犬のような瞳にグッときてしまう。
その無防備な上目遣いが可愛いんだよなぁ、と心の中で思いつつ、佐野の大きな手がするりと吉田の細い腰へ伸びた。そのまま一気に引き寄され、吉田は佐野の胸元へ顔を押し当てられる。
「わっ!」
間髪入れずに、佐野の足が吉田の足の間に割り込むように固く絡められた。両腕で吉田の体をすっぽりと包み込むような抱擁。逃がさないとばかりに足までガチガチに固定され、完全にホールドされてしまう。
「あっ、」
突然の強い力に吉田の頭は一瞬パニックを起こした。行き場を失った両手をどう処理すればいいのか分からなくなったが、ふと『抱き枕』という言葉を思い出し、おそるおそる佐野の広い背中へそっと手を回してみる。
——その瞬間。
吉田が手を回したのに反応した佐野の腕にさらに力がこもり、二人の間に一切の隙間がなくなった。
密着した佐野のしなやかで鍛え上げられた胸筋に深く顔を埋める形になり、お互いの熱が余計に際立つ。
「…仁人さ、今日の服も薄手じゃん。お前の高い体温がすげぇ伝わってくんの。もしかして抱かれるの期待してた?」
「…ッ馬鹿、自惚れんな。今日は本当に着たい服着てきただけだから。」
たまたまだと言い張る吉田に、佐野はからかうように口角を上げた。
「へぇ。じゃあ前回の膝枕のときは、意図してあの服選んだんだ。」
図星を指された気まずさと恥ずかしさで、吉田の顔が一気に熱くなる。
「…ふはっ、ほ〜んと可愛いね仁ちゃんは…。」
太い腕にがっちり抱き締められる息苦しさと、ダイレクトにくすぐる佐野特有の香りに、なんだか胸の奥までがいっぱいになってしまう。
「…っ、可愛くないし…。」
強く抱きしめる力に歳を重ねるごとに広がっていく佐野との体格差を、吉田は直接肌で感じていた。
そもそも佐野と吉田は骨格からまるで違う。
生まれ持ったがっしりとした体躯と大きな手足に抱き締められれば、自分の身体がすっぽりと収まってしまうのだ。フィジカルの差も相まって、男として敵わないのだとしみじみと思い知らされる。
それと同時に、身体に直接伝わる圧倒的な雄の威圧感。まるで捕食者に捉えられた草食動物のような微かな恐怖すら覚え、複雑な気持ちで身を固くした。
(…こんな、頑丈に抱きしめてて勇斗はほんとに寝れるのかな…。)
あまりの密着度と力強さに、吉田の頭の中にはそんな一抹の不安と、少しの緊張、触れ合う体温の熱さがじんわりと広がっていった。
◇
『…あれ、今のところ普通だね?勇ちゃんのことだから服の中に手突っ込むとか脱がすとか瞬殺でやるかと思った。手早そうだし。』
『いや!待って、柔!大分麻痺しとるよ!?だいぶ際どいよ!!足の絡め方がマジで交尾前ガード!絶対離さんと交尾する前のタカアシガニやよ!』
『…舜太、タカアシガニってなに?』
『あれ知らへん?カニの交尾。オスがメスの上から覆いかぶさって、孕むまで絶対離さへんのやで。』
『まじで?えぐぅ。勇ちゃんぴったりじゃん。』
『やろ?』
『よっしーこのままじゃ孕まされちゃう…、』
『もおおお!!やめぇやカニの例え!!想像してしまうやろ!!!ってか吉田さんめっちゃ気許した顔しとるし、なんか隣に住む憧れのお姉さんのラブシーン見とる感じで嫌やぁ〜!!めっちゃ複雑ぅ!!!』
『あ、舜。太ちゃん限界そうだから放送NGワード連発するの気をつけよ?』
『あっごめんごめん。でも柔もなかなかの直球発言やで?』
モニタールームで塩﨑が「あかん、もう見とうない!!」と頭を抱えて激しく嘆いている頃。
外の喧騒を遠くに感じながら、布団の中は静かで熱を帯びた空間へと変わっていた。
◇
佐野の手がゆっくりと吉田の背中にするりとなぞる様に触れ、腰のあたりを撫でる。その熱い体温に、吉田の体が思わずビクッと跳ねた。
佐野はほんの少しだけ抱きしめる力を緩め、二人の間にわずかな隙間を作る。
至近距離で重なる視線。
吐息が触れ合うほどの距離で、吉田はおそるおそる問いかけた。
「……勇斗…寝れそう……?」
「……むりぃ。」
佐野は情けない声を漏らすと、耐えきれなくなったように再び吉田の体を強く抱きしめた。そして、そのまま耳元に顔を寄せ、低い声でボソリと呟く。
「ねぇ、やっぱり仁人とセックスしてみたい。」
「……だから嫌だって。不誠実な関係なんて、」
「不誠実じゃなきゃいいんでしょ。付き合お。」
「さっきまで散々メンバーの関係性崩したくないってごねてた人が?性欲に負けたの?佐野さんかっこわるい。めっちゃさいてい〜。」
こんな佐野の姿はファンには見せれないな、と思わずくすっと笑ってしまう吉田だったが、佐野は抱きしめる腕にさらに力を込め、吉田の髪に顔を埋めた。
「…ごめんなさい。俺が馬鹿で最低でクズでした。もぉ降参。認める。寝れるわけがねぇわ、こんな仁人が側にいて。…もぉどうしよ、…離せるわけがない。一生離したくない。」
その直球な言葉に、吉田の心臓がうるさいほど跳ね上がった。
身勝手な言い分なのに、どうしてこんなにも胸が熱くなるのだろう。
——俺たちは一生共にするメンバーであり同志であり親友であり家族だけど…。
佐野が言うように恋とか愛とかそんな異分子が入ってきた時、この関係が崩れない保証はない。
でもそこに一つぐらい、新たな名前が増えたっていいのではないか。
……佐野の目をもう一度見たい。
いつだって真っ直ぐで自分を包み込むような、優しさが溢れるその目を見てもう一度聞いて確信したい。
もぞもぞと胸元で顔を上げる仕草を察してくれたのか、佐野は抱きしめる腕の力を優しく緩めてくれた。
もう一度互いの視線が交差する。
「…最低でごめん。でも仁人が好きみたい…、ううん、すげぇ好き。」
真っ直ぐに見つめ返してきた佐野の瞳には、一切の誤魔化しも嘘もなかった。
限界に達してから独占欲を自覚して告白してくるなんて、本当に馬鹿で愚かな奴だ。挙句の果てにさっきまで抱かせろなんて、下半身と脳みそが直通しているとしか思えない。どこまでも本能むき出しの男だ。
——それなのに。
真っ向から真っ直ぐに愛を伝える佐野の圧倒的な光に、どうしても嬉しさが勝ってしまう。
誰からも愛される少年漫画の主人公。誰もが惹かれてしまうヒーロー。
そんな男にここまで泥泥とした愛を向けられて、嬉しくないはずがなかった。
「……ほんと、俺も馬鹿で最低。」
ふふ、と思わず笑みがこぼれる。
「……勇斗は俺のこと、離したくないんだ…?」
「ッ、うん。仁人を離したくない。俺の側にずっと、一生、いてほしい。もちろんメンバーだけとしてじゃなく。……仁人、俺と恋人になって。」
「一生」なんて言葉、信じるための根拠も確証もどこにもないから嫌いなのに。信じてる人から言われると『いいよ』ってあっさり許してしまう自分は、本当にちょろいのかもしれない。
「……俺以外に目を向けないって一生…、誓うなら、…いい……。」
「誓う。」
誓うよ、と力強く即答するなり吉田をそのまま押し倒し、両手でその顔を包み込みながら齧り付くように唇を重ねる。
「んんっ、」
逃がす気などないと言わんばかりの強引さで舌を割り込ませると、吉田の口から漏れた甘い吐息に、それだけで佐野の下半身はずんと重みを増す。
口付けを深く深く絡めながら、佐野は腰を寄せて二人の下半身をより強く密着させた。
「…あ、ッ」
急に熱を帯びた性的な接触に吉田の顔が一気に真っ赤に染まる。
すかさず服の中に手を滑り込ませ、柔らかくしなやかな肌を堪能する。
「ん、んっ…ん、あっ、…あ、」
口内を舌で掻き回しながら片手は背中の肌を撫でまわし、もう片手は吉田のトップスのボタンを外していく。トップスを肩から脱がせた時の眩しい白い肌に眩暈がしそうになった。
普段メンバーにも見せない上半身が露わになり引き締まった細い腰が見えた。ただでさえ体温が上がりやすい吉田の体は、熱をしっかりと溜め込んで耳の先端まで真っ赤に染まり切っていた。
撫で回すように手のひらで腰回りや服の上からお尻を揉み込むと、吉田の口からいっそう高い声が跳ね上がった。
「んぁっ!?なに、ちょっとどこ触って!」
「仁人のお尻はでかくて柔らかいなぁ。」
「ば、ばか!!さいてい、や、あっ、んぅ、」
布団の上で押し倒され、口を塞がれ、はぁはぁと吉田の息が漏れるのが大変エロい。キスをしながら飲み込みきれなかった唾液が吉田の口端をつたい、唇を艶っぽく濡らしている。
白い肌が熱でうっすらとピンク色に染まり、胸元の熱い突起へと指先が触れると、一段とぴくっと体を跳ねさせた。
「……あっ!あ、んっ、やだ、それ、」
やだやだと目元に涙を浮かべ、必死に首を振る吉田。
「仁人、可愛い。めっちゃ好き、大好き…。」
熱を帯びたその肌は佐野の手や口が触れるたびに応えるようにしっとり吸い付いてくる。その首筋や鎖骨にいくつも跡が残るよう口付けを落としていく。
くすぐったさから逃げようと身を捩る腰を太ももで押さえ込み、尖った突起を指先でじっくりと捏ね繰り回す。
「…っあ、あっ、」
同時に、敏感な耳たぶを薄い唇で食み、熱い息を吹きかけると、吉田はゾクゾクと全身を痺れさせて佐野の背中に縋り付く。
「ふぅ…っ、ん、やだ、はやと、待って、待って、んぅっ、」
必死に言葉を紡いで拒もうとする吉田の口元を、再び強引なキスで塞ぎ込んだ。唇を重ね隙間から溢れ出る焦れったい声も荒い息もすべて自分の口内へと吸い上げて閉じ込めてしまう。
このまま下も全部脱がせて自分だけのものにしよう——と、欲望のままに突き進もうとした、まさにその瞬間。
——バァン!!!!!!
激しく楽屋のドアが開く音がする。
「は〜や〜と!!やりすぎやで!!!」
怒りのオーラを全身から爆発させた塩﨑が立ちふさがっている。
その後ろから、山中と曽野がひょっこりと顔を覗かせた。
「勇ちゃん、ここ一応楽屋ですからね。自重してもらわないと。」
「いいところごめんやで。でもさすがにこれ以上は看過できんなぁ。」
冷ややかなテンションの山中と、苦笑いしながら窘める曽野。
一瞬で夢から現実に引き戻されたメンバーの声と楽屋の空間に、佐野はハッと我に返り布団から起き上がる。一方の吉田は、真っ赤な顔ではだけた服を咄嗟に手繰り寄せながら、処理しきれない情報が一気に押し寄せ眩暈を感じていた。
「あっ……やべ、あまりにも目の前の天使がエロ可愛すぎて我を忘れてたわ。ゴムもローションもないのに最後までするとこだった。暴発する前に止めてくれてサンキュ。」
「ガチガチに股間を勃たせた状態でその返しできるのマジメンタル強くて尊敬するよ。」
土壇場な状況でも勃起させながら冷静に返答する最年長に、さすがこの業界で場数を踏んできただけはあると山中は感心するが、その悪びれもない態度にますますキレ散らかす塩﨑。
「ってうぉい!!下半身大魔王!!そんなんで納得できると思うなや!身体の関係に進むのはまだはやいっちゅーねん!!…って、仁人!気絶しそうやんけ!!」
眩暈でフラフラになり、真っ赤な顔で倒れそうになる吉田のもとへ、塩﨑が慌てて駆け寄る。
「極度の緊張と未知の体験と俺らに見られた羞恥で脳がパンクしたんやな〜。にしても俺らにもエロい仁ちゃんをだいぶ提供してくれてたけど、そこについてはええのん?」
吉田を介抱する塩﨑を横目に、曽野がニヤニヤしながら佐野の顔を覗き込んだ。
「うっ…わ、忘れて。」
吉田のいけない可愛さを見せびらかしてしまった後悔に、佐野は頭を抱えた。
「無理っしょ。吉田仁人の無修正ビデオ見せつけられてるのかと思ったわ。」
山中は「しかし勇ちゃんって好きな子にはあ〜いう触り方すんだねぇ」と容赦なく揶揄う。
その横で塩﨑が持参した除菌シートで吉田の口やら身体を拭き、服のボタンを留めて身なりを整える。
「って太智!!今の仁人に触るのはやめて!!ってか除菌シートって!俺は菌か!」
「あったりまえに触るわど阿呆!!仁人に触れる前に俺らにまず結婚の挨拶してからにせんかい!!あとなんべん同じこと言わすねん!うちは婚前交渉禁止や!!」
「は!?まじでそれいつから決まってたの!?」
「……太ちゃんはよっしーのなんなの?」
「……なんか同期組の変なスイッチ入ってもうたな。」
◇
検証結果と反省会
楽屋にて。
山中の案である『よっしーの抱き枕(※生身も可)』。これ以上は本番にもつれ込む危険性があり継続不可能。
『佐野勇斗、寝ぬのなら寝かせてみせようホトトギス企画』は、安眠検証の結果的に半分以上が継続不可能。
以上の結果を持って終了。
というより序盤から吉田とのR指定が入りそうなセンシティブな映像になったため、お蔵入り確定である。四週連続で撮ったにも関わらず、だ。
一応まともに寝られたのは、初めの吉田の案のみ(マイナス五十点らしいが)。
点数は置いておいて、一番睡眠効果がありそうなものは見つかりそうかと山中達に問われると、佐野は至極真面目な顔をしながら隣に座る吉田を見る。
「あともう一歩で寝られそう。楽屋じゃないところでもっかいやりたい。仁人、今日の夜空いてる?俺ん家来ない?」
あきらかに睡眠とは違う含みを持たせた提案に、塩﨑が「却下ぁ!!」と即座に怒声を上げて介入する。
だが、塩﨑が却下したところで無意味というもので、佐野勇斗が一度やろうと決めたら誰も止められない。そのことをよく知っている山中と曽野は、深々とため息をついた。
吉田の首元とうなじには、さっきまで佐野につけられたキスマークという名の所有印が点々と残っており、見ているこちら側が目の毒である。
だが当の吉田は「え、ちゃんと寝られそうなの??じゃあ行こうかな」などと、今時の女子高校生でも引っかからないような誘いにあっさり乗ろうとしている。捕食者の巣穴へ自ら飛び込もうとしている危機感の無さと天然っぷりに頭を抱えたくなる。さっきまで手前まで襲われていたというのに、佐野に対するこの甘さと献身っぷりは一体なんなのか。
こんな調子じゃ、今後佐野の独占欲は増す一方だろう。
…ついでに、それに巻き込まれる自分たちの胃の痛さも。
「はぁ〜。もうええて…。とっとと結婚でもして腹括ってくれません?」
「ほんまそれな。仁ちゃん無防備すぎて、誰かに奪われる前に勇ちゃんに囲い込んでもらった方が平和やわ〜。」
呆れ果てた顔の山中と曽野の横で、「だーかーら!はやとの家に行ったらアカンって言ってるやろ!!」と必死に吉田を引っ張り戻そうとする塩﨑の声が虚しく響いていた。
◇
あの直後、「手を出す前に順序を守れ」という塩﨑からの圧(もはや風格は吉田の存在しない厳格な父親)により、その日のうちに佐野はメンバー、マネージャー、関係者各位、さらにはお互いの家族にまでしっかりと交際宣言をさせられ、晴れて正式にお付き合いを始めることとなった。
そして交際宣言の翌日の楽屋にて。
「昨日短時間でもめっちゃ寝られた!!仁人抱き枕大活躍!!」と目を輝かせ、肌ツヤツヤで超絶絶好調な佐野の姿があった。
その横で、どこか腰を痛そうにしてダルそうに身体をさする吉田を見て、山中と曽野は(あーはいはいはい、そういうことね)と察する。
どんだけ手が早いんだ。
その一ヶ月後、
「仁人と一緒に住むことになりました!」
という突然の報告とともに、光の速さで両家顔合わせの挨拶まで終わらせ、あっという間に同棲まで決定させてしまった佐野の手腕に、メンバーは「どんだけ仕事が早いんだ」と二度目のツッコミを入れつつ、もはや近々結婚式や会見発表すら来かねないと心の準備を固めるのだった。
だが、なんだかんだ超多忙な仕事を全力で邁進する佐野を、一番近くでサポートできてどこか嬉しそうな吉田。
そして、ただでさえ休む間もない毎日のなかで、吉田という最高の安眠剤(兼抱き枕)を手に入れた佐野。
限られた睡眠時間で心身ともにぐっすり充電できるようになったのだから、ある意味これ以上の解決策はないのかもしれない。
『佐野勇斗、寝ぬのなら寝かせてみせようホトトギス企画』
対象者:佐野勇斗
安眠剤:吉田仁人
——これにて検証終了。
おわり。
コメント
14件
めちゃくちゃ面白かったです✨️✨️✨️ 掛け合いが上手い!!

今回も本当に神作品を書いてくださりありがとうございます! つぶ貝さんが書く小説がそれぞれのキャラクターが残っているのに、ちゃんと世界観も崩れないところ、本当に尊敬しています! また、次回のさのじんのお話も楽しみにしております! 頑張ってください、応援しています

神ストーリー!ありがとうございました!!✨ セリフが誰かに偏ることもなく、掛け合いも上手で面白かったです!! セコム発動からの除菌シートには笑いました😂 というか、普通に3人にモニタリングされてるの、シュールですよね笑 ヤイヤイ言いつつメンバーにはちょろい💛さん可愛くて大好きです!素敵なお話ありがとうございます!