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番外編みたいな感じでほぼ出番のなかったフィリヴィッツ家の面子を出せるかチャレンジで平和で幸せに溢れたマリノアル愛され世界線を書いてみようと思って書いてみました。
「マリノアル様、お茶のおかわりは如何なさいますか?」
「ううん、もういいよ。ありがとう、クオール」
「クオール~~僕らはおかわり欲しい~~~」
「あとこのクッキーもまだある?」
今いるこの場所はマリノアルが在籍する魔法学園の中央広場にあるいくつか建てられているガゼボの中。マリノアルと1つ下の双子の弟、ノールとベルファト、そして従者であり専属執事のクオールの4人。
クオールは現在24歳。学園は13歳から18歳までの5年間。従者も勿論入学することはできるが在籍している間は共に勉学に励み切磋琢磨する級友となる。本来ならば彼はこの学園とは無関係なのだがマリノアルを溺愛している父、フィリヴィッツ侯爵と母のフィリヴィッツ侯爵夫人によるお願いという名の圧力をかけてマリノアルが卒業するまで共にクオールを学園に入れた。
後で事態を知ったマリノアルが兄であるユアに父と母を止めるように相談した所
「?クオールが側にいてくれたら私も安心だから反対する理由はないよ?」
と微笑まれながらさも当然のように言われ一緒にいた双子には
「クオールがノア兄様と一緒に入学するのは当たり前じゃないの?」
「全寮制なんだしクオールがノア兄様の側を離れたら専属の意味ないよ?」
ノア兄様何言ってるの?と言われる。マリノアルは自分がおかしいのかと頭を抱えた。全寮制だから自分のことは自分でやるように個室となっている。そもそも学園内では余程のことがない限り主人と従者ではなく級友だ。
ちらりとクオールを見やれば目が合う。クオールは申し訳なさそうな表情を浮かべた。
雇い主であるフィリヴィッツ侯爵の命令にクオールは従う義務がある。断ることなど出来るはずもなく。
マリノアルは自分が大切にされていることはよく理解している。いくつになっても未だに兄と弟たちと一緒に過ごす事が多い。だがまさかクオールを巻き込むことになるとは夢にも思わなかった。
マリノアルはクオールにごめんねと謝れば
「マリノアル様やフィリヴィッツの名に恥じぬように精進いたします。」
とどこまでも真面目なクオールに給金を上げるよう父上に進言しようと決めた。
マリノアルが在籍する魔法学園は一定の学力とマナー、作法などが出来ていれば貴族平民などの身分や階級は関係なく13歳になれば誰でも入学できる資格を持つ。
魔法学園と言っても学ぶのは魔法だけでなく、将来、国を護る騎士を育てる為の剣術科もある。クオールは魔力が極端に少なく魔法がほぼ使えないため剣術科に在籍している。
しかしクオールはフィリヴィッツ家で剣の修行も独学でしており時折私兵たちと共に訓練に励んでいる。入学試験では剣術科において学力、剣術共にトップの成績を残した。ちなみに従者としての能力テストも最高点をたたき出し周囲をザワつかせた。
「うちの私兵は国軍以上の力を持つとさえ言われてるんだ。そりゃクオールも当たり前に強いに決まってるのにわざわざ試験を受けなくても良かったんじゃないの?」
国軍以上の力を持つ私兵を有している侯爵家とはどういうことだと思うが事実、私兵だけで魔物の脅威から国を守っている為、国もフィリヴィッツ侯爵家を無下には出来ない。
「しかも使用人たちや私兵の彼らには屋敷から離れて別の所で働くことになっても困らないように徹底的に勉強とマナーを教え込むんだから成績だって首席に決まってるのにねー」
ベルファトはおかわりを強請ったクッキーを頬張りながら言う。
「そして我らがノア兄様は魔法科において首席。剣術においても次席ときたら新入生代表として挨拶するのは分かってたことだよね。見たかったな~~~!!」
「僕も見たかった!!美しくてかっこいいノア兄様!!」
兄も弟たちも相当なブラコンである。
「2人とも…場所を弁えようね」
いつもの事とはいえ周りには他にも学生たちがいる。
フィリヴィッツ侯爵家は大貴族。自分たちの言動でフィリヴィッツの名に悪評がつくことは避けたい。
「お言葉ですがマリノアル様、ノール様とベルファト様がご入学されて半年。お2人のマリノアル様に対する愛情を含む言動はとうに周知され皆様微笑ましく見守られております。」
「そっ…れはなんと言うか…うん…今更だと言われたらそれまでだけど……うん……そっかぁ……」
マリノアルは遠い目をする。弟たちから慕われるのは兄として嬉しい。けれど今はまだ良くても兄離れをしてもらわねば彼らの将来が心配になる。
いや兄のユアも家の跡継ぎとなるのだ。弟離れしてもらわねば困る。
自分はそんなにも弱く見えるのだろうか
うんうんと唸るマリノアルをノールとベルファトは見やる
「ノア兄様可愛い~」
「本当にね。成長するにつれてこんなに美しくなるなんて1人で学園に入れたらどうなるかなんて目に見えてる」
ノールもベルファトも目が笑っていない。マリノアルに何かあれば学園はおろか国すら危うくなる。それ程にマリノアルに対する両親と兄弟たちの愛情は重いのだ。
だからこそマリノアルを蔑ろにしているこの国の第一王子であり婚約者でもある現生徒会会長のルノ・ラズファルを2人は嫌悪している。
本来ならば今この場でお茶を楽しむのはノールとベルファトではなくルノのはずだった。
基本的に昼休みは婚約者同士が交流を図るための時間。それなのにこの半年マリノアルとルノは共に過ごしていない。原因は分かっている。
「ノア兄様」
「なに、ノール」
「……んーん、なんでもない」
にこと笑うノール。
「そう?」
「うん」
「……くそ殿下」
ベルファトはボソりと呟く。
「?ベルファト何か言った?」
「んーん。なんでもない~」
さすが双子。笑い方が全く同じだなとマリノアルは思う。
「…2人が何を考えてるか分からないけれど、僕は平気だからね。心配しないで」
2人の頭を撫でればもっとと言うようにマリノアルの手に頭を押し付ける。マリノアルはふふと微笑んで応えるように優しく撫でた。
なんでいつもバレるんだろうと2人は思う。長兄のユアと両親には通じるのにマリノアルには必ずバレてしまう。いや、クオールにもバレてるな。
なんだろうこの2人にはいつだって僕らの悪事や隠し事、本心を気付かれてしまう。いつだって寄り添って優しく包んでくれる。惜しみなく愛情を注いでくれる。ノールとベルファトはそんなマリノアルとクオールを愛し尊敬し敬愛している。クオールには絶大な信頼も寄せている。
「ノア兄様大好き」
「クオールも大好き」
2人の想いにマリノアルとクオールは互いの顔を見合わせ笑う。
「ありがとう、2人とも」
「大変光栄です」
穏やかな空気の中、昼休みが終わる鐘が鳴る。
魔法科1年生の教室へ向かうノールとベルファト
「ノア兄様と毎日お茶出来るのは幸せすぎるし最高なんだけど」
「クオールが作ってくれるお菓子が食べられるのも嬉しすぎるけど」
「「それはそれとして婚約者のノア兄様を蔑ろにするあの男は許さない」」
穏やかさは冷たく重い空気へと一変する。2人から表情が消えた。
「やっぱり父上に言って王命をどうにかしてもらった方が良くない?」
「それは僕も思うけど。ユア兄様もくそ殿下を嫌ってるし…けどノア兄様が平気だって言ってる以上僕らが勝手に動くわけにはいかないよ」
「こんな事でノア兄様に嫌われたくないしね~~」
「ノア兄様に嫌われたら死ぬ。」
「わかる。生きる意味ない。」
重苦しい空気の中、自分たちの教室の前には見覚えのある人物が2人。ルノともう1人はルノがやたら可愛がっている平民の男、ミトラ。茶髪で幼さが残る顔立ちは可愛らしく、声も少し高い。ルノより頭1つ分以上に低い身長でどことなく庇護欲をかき立てられる。
ルノとミトラは楽しそうに談笑しているようで。
ノールとベルファトは聞こえるほどの大きな舌打ちをする。それに気付いたミトラは肩をビクつかせた。
「…ノールとベルファトか」
「どーもぉ、生徒会長様」
「生徒会長様が平民の男とこんな人目のある所で逢瀬ですか。気持ち悪いことを堂々とよく出来ますねぇ」
「っ違っ…」
「平民が勝手に口を開くな。僕らはあんたのような下等生物が気軽に口を聞いていい存在じゃねぇんだよ弁えろ」
地を這うような低い声にミトラは青ざめる。
「やめろ、2人とも。この学園において身分や階級は関係ない。ミトラが誰と仲良くしようと話をしようと彼の自由だ。お前たちが口出すことではない。」
ミトラを庇い隠すように2人の前に出るルノは言う。
「「きっっっも」」
王家の人間に対して嫌悪も不快も隠さず真っ向から罵詈雑言を放つノールとベルファト。
「こんなに自分の立場を理解できてないクソ野郎が次の王?」
「あんたが王様になったらこの国は1年と持たず滅びるわ」
「なんだと…?」
ルノは静かな怒りを言葉に乗せる。
「おー怖い怖い。でも事実だろ」
「婚約者1人大事にできない奴に国を任せる王家なんざさっさと滅びてしまえ。」
ノールとベルファトはルノの背に隠されたミトラに侮蔑の念をこめて
「「死ねばいいのに」」
感情の籠らない、冷ややかな目で見下ろし言い放った。
「っ!!」
「っお前たちっ!!言葉が過ぎるぞっ」
ルノの叱責など耳に入らないかのようにさっさと教室の中へと入っていった。
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