テラーノベル
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「すれちがい」
注意 🦍社二次創作 ifルート
Chapter4「Bonjour」
目が覚めると、部屋の中は闇に包まれていた。
硬いソファーから起き上がり、乱暴にカーテンを開けると、月光が部屋に差し込み、微かな灯りが自分の影を作り出す。
「月、綺麗だなぁ」
窓を開けると、冷たい空気が一気に部屋の中に入ってくる。
テーブルに置かれた箱とライターを引っ掴み、ベランダに出た。
箱から煙草を取り出し、火をつけて咥える。
月を見つめて、ぼーっと街を見下ろす。
「…俺は…これからどうすればいいんだろ」
煙を吸いすぎたからだろうか、軽く咽せた。
今は2018年の2月。
「あ〜…怠いなぁ…」
そう呟いて、ベットに飛び込む。
「バイト行かなきゃ…」
起き上がりたくない。面倒臭い。
でも、行かなくちゃ駄目だと、頭ではわかっている。
「いらっしゃいませー」
最近始めたコンビニのバイトは楽しい。
平凡な生活を送るよりかは恐らく充実している。
「これ、お願いします」
ふわっとした笑顔を浮かべた好青年。
声は高くて柔らかく、温かい声だった。
髪は雪のように白く、瞳は冬の青空のように綺麗な群青色だった。
その顔と声に少し既視感を憶えたが、きっと気のせいだ。そう思い、静かにレジ打ちをした。
毎日、変わり映えのない日常が延々と続いていく。
煙草の箱が、ゴミ箱の中に数え切れないほど捨てられていく。
自堕落な生活を送っていることは自覚している。
こんな負のループは今すぐ抜け出してしまいたいのが本音だ。
でも、そうは行かない。
俺はもう、引き返せないところまで突き進んでしまった。
今更、「普通の人」が言う「普通の生活」を過ごせるわけがない。
今日も重い身体でベットに横になり、そっと目を閉じた。
夢を見た。克明で、鮮明な夢だった。
誰だかわからない人達の、人生を。
否、 俺はこの人達を、知っている。
でも、あの4人は、誰も互いを覚えていない。
だって、そういう世界だから。
この世界は、「ドズル社が存在しない」世界で、全員が「当たり前」に馴染んでいった世界でもあるから。
ぼんやりとした記憶として、形なき想いとして、心の片隅にそれぞれの存在がぼんやりと、ぽつんと取り残されているだけなのだ。
覚めたい、この夢から。
そう思い、久々に家を出てから走り出した。
寒空の下、本当に君に会えた。
「……おんりー、さん…」
そう呼ぶと、君はこっちを向いた。
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「俺の事…わかる…?」
「…ごめんなさい、どちら様ですか?」
そう問う君は、目線が冷たくて、困っているかのような顔を浮かべていた。
俺が知っている君とは、違う君だった。
2021年の、4月のことである。
「どうして忘れちまったんだよ…」
机を勢いよく叩き、力無く声を出した。
一人きりの部屋に、震えた俺の声は少し響いた。
悔しくて、寂しくて。
噛んだ唇からは じんわりと血が出てきた。
それからも俺は、メンバーを探し続けた。
おんりーとmenには会うことかできた。
ただ、他人として扱われたけれども。
でも、ドズルさんとおらふくんには会えなかった。
夢の中で、あの人達が今何をしているのかはぼんやりとわかっている。
その2人は移動が多いか、全く家を出ないか、で中々見つけられなさそうだった。
毎日毎日バイトの合間を縫うように、あの人達が居そうな場所を探し続けた。
今のあの人達は、笑っていなかった。作り笑顔ばかりで、心から笑っていない。
またみんなに、笑ってもらいたい。
「ドズルさん‼︎」
俺は走って走って、貴方に追いついた。
貴方が振り向くと、白衣がふわっと舞った。
「…誰ですか?なんで、僕の名前を知っているのですか?」
「俺は…ぼんじゅうる…」
名前を言っても、貴方は首を傾げていた。
胸元に下げた名札には近くの総合病院の医者だと書かれていた。
「あっ、もうこんな時間…すみません、もう休憩時間が終わるんで…」
時計を見た貴方は、焦って走っていく。
「待って‼︎」
貴方は立ち止まり、パッと振り向いた。
「貴方が俺の事を覚えていなくても、俺は貴方を覚えているから。」
そう言うと、ドズルさんは会釈をして、また走って行った。
「はは、みんな忘れちゃったのか…」
涙が止まらなかった。
この人生で、ここまで泣いたのは久々かもしれない。
Chapter4「Bonjour」fin
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コメント
3件
Bnさんは記憶が残ってる……!? 互いが「Dzr社」を忘れた世界でただ1人 みんなを覚えているBnさん… 考えうる倍以上は切ないでしょうに……