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『木漏れ日の中庭、ちいさな訪問者たち』
雲一つない見事な秋晴れの午後。連日の忙しい調査任務が一区切りつき、研究員のアイは、サイト-19の敷地内にある広大な緑の中庭へとやってきていた。芝生の上にレジャーシートを広げると、木々の隙間からあたたかな木漏れ日がきらきらと降り注ぐ。「ふぅ……。たまには、こうしてのんびり外の空気を吸うのも最高ね」アイが白衣の袖をまくって深く息を吸い込むと、足元からオレンジ色の999が「プニィ〜」と、まるでとろけるように気持ちよさそうに鳴いて芝生の上に寝転がった。2匹のアイポッド、ベニヤとキハダも、今日は警戒モードを完全にオフにして、キャスターをトコトコと鳴らしながらシロツメクサの周りを嬉しそうに回っている。感覚共有双子のルイとイマニは、シートの上でお弁当のサンドイッチを広げていた。「アイ、見て! あそこの大きなクヌギの木に、普通の可愛いリスがいるよ!」ルイが指差した先では、ふさふさの尻尾を持った小さなニホンリスが、どんぐりを両手で抱えてカリカリとかじっていた。「本当ね。財団の研究所だけど、ここにはアノマリーじゃない、本物の普通の生き物たちもたくさん暮らしているのよ」アイが微笑んでいると、アイの腕の中から、真っ白なウサギのウォルターがぴょんと芝生へと降り立った。ウォルターはピクピクと鼻を動かしながら、トコトコと芝生を散歩し始めた。すると、どこからともなく、小さくて黄色い、本物の「普通のひよこ」たちが、ピヨピヨと音を立ててウォルターの後ろをついて歩き始めたのだ。どこかの飼育小屋から迷い込んできたのだろうか。ウォルターが歩けばひよこたちも歩き、ウォルターが立ち止まればひよこたちもピタッと止まる。まるでウォルターを自分たちの大きなお母さんか何かだと勘違いしているみたいだった。「ふふ、ウォルター、大人気ね」イマニが笑うと、その温かい幸福の感情が脳のネットワークを通じてルイにも伝わり、ルイも一緒に声を上げて笑った。999もひよこたちの元へ滑っていき、その温かいオレンジ色の体でひよこたちを優しく包み込んだ。999に触れられた普通のひよこたちは、特別なバグを浄化されるわけではないけれど、ただただ最高の安心感に包まれて、999の体の上でうとうとと居眠りを始め、小さな幸せのピヨピヨという鳴き声を響かせている。ベニヤとキハダは、草むらで見つけた一匹の小さなカタツムリを、絶対に瞬きをしない大きな一つ目でじっと見つめていた。いつもなら空間のバグを固定するその瞳も、今はただ、ゆっくりと進むカタツムリの歩みを優しく見守るためだけに使われていた。カタツムリが殻から角を出すと、2匹は「チチチ!」と嬉しそうに小さな声を交わし合った。ウォルターはというと、ひよこたちを引き連れたままシートの近くまで戻ってくると、ルイが差し出した普通の人参の一切れを、小さなお口でカチリと受け取った。シャキシャキ、シャキシャキ。世界を滅ぼすバグも、神様の剣もそこにはない。ただのみずみずしくて甘い、美味しい本物の人参だ。ウォルターはお口を忙しそうにモグモグさせながら、本当に美味しそうに、そして満足そうに人参を完食した。食べ終わると、アイの足元に頭をすり寄せて、もっと撫でてとおねだりをする。
アイはウォルターを優しく抱き上げ、そのふわふわの毛並みに顔を埋めた。999の甘いチョコレートの香りと、中庭の緑の匂い、そして普通の生き物たちの穏やかな鳴き声が、優しく響き渡る。特別な武器も、強力な呪いも、ここには何一つ存在しない。アイはルイとイマニ、そして大好きな4匹の温もりを両腕に感じながら、この優しくて愛おしい世界をこれからもずっとみんなで守っていこうと、どこまでも青く澄み渡る秋の空を見上げて、心からの笑顔を浮かべるのだった。
コメント
1件
あ〜、もう、この回めっちゃ良かったです…🥺💕 いつもはダークな任務とかバグとか追いかけてるアイたちが、今日は中庭でただただのんびり平和に過ごしてるだけで、なんでこんなに胸がいっぱいになるんだろう。 特にウォルターの後ろを普通のひよこたちがピヨピヨついて歩いてるのが可愛すぎて…思わず「えっ、それお母さん間違ってるよ!」ってツッコミたくなっちゃいました(笑)でもそれもまた尊い。 999に包まれてうとうとしてるひよこたちを見てたら、この世界の“普通の幸せ”って、これなんだなって本気で思えました。🍊好きさん、こんな温かい日常の1ページをありがとうございます😌🌿