テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
85
コメント
1件
みことさん、第1話読了です。冒頭の「雨の音が嫌いだった」という一文から、澪さんの心の傷と静かな反骨が滲んでいて、もう引き込まれました。保健室の先生が「ここでは怖がらなくていい」と繰り返す優しさと、その言葉で少しずつ澪さんが心を開いていく過程が本当に丁寧に描かれていて……。最後に登場した「今日から妹になる子」という青年の言葉に、これから始まる関係性に期待と少しの不安が混ざって、続きが気になります。地の文のやわらかさに、澪さんの繊細な心情がよく乗っていました。
雨の音が嫌いだった。
窓を叩く水滴の音を聞くたびに、あの家の薄暗い廊下を思い出す。
高校一年生の榊 澪(さかき・みお)は、教室の隅でひとり、窓の外を眺めていた。
誰かと話すのは苦手だった。
男子は特に怖い。
急に近づかれるだけで肩が震えるし、少し大きな声を出されるだけで息が苦しくなる。
周りからは「静かな子」と思われていたけれど、本当は違う。
人を信じる方法を、忘れてしまっただけだった。
澪は中学に入ってすぐの頃から、父親に傷つけられていた。
誰にも言えなかった。
言っても無駄だと思っていた。
母親は見て見ぬふりをした。
だから澪は、感情を押し殺すことだけが上手になった。
泣かない。
期待しない。
誰にも頼らない。
そうして生きてきた。
けれど、その生活は長くは続かなかった。
ある日、学校で倒れた澪は保健室の先生に言われた。
「大丈夫じゃない顔をしてる」
最初は何も話せなかった。
でも何度も、
「ここでは怖がらなくていい」
そう言われ続けて、少しずつ言葉が溢れてしまった。
そこから児童相談所が動き出した。
そして澪は、遠い親戚の家へ引き取られることになる。
その家には――
「……えっと、今日から妹になる子、で合ってる?」
少し困ったように笑う、一人の青年がいた。