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「……志乃さんは、どうして編集の仕事を?」
それは打ち合わせが終わって、ふたりきりになった廊下でのこと。
窓際に差し込む夕陽が、彼女の横顔を淡く照らしていた。
志乃は少し考え、遠い記憶を撫でるように言った。
「……子どものころから“消えていくもの”に敏感だったんです。
記憶とか、言葉とか……誰にも気づかれずに、消えるものに」
彼女の声は静かだった。けれど、圭吾の中に何かが波打つ。
まるで――
自分の存在が、その言葉で“見つけられた”ような気がした。
「先生の作品も、そうですよね」
「“消えてしまいそうなもの”に、触れようとしている」
その言葉に、圭吾はドキリとした。
今まで多くの編集者に会ってきた。でも、ここまで核心を突いた人はいない。
「……あなた、俺のことを知ってるみたいですね」
「そうかもしれません」
志乃は微笑んだ。けれど、どこか寂しげに見えた。
その瞳に――確かに、あの夏の夜に見た瞳が重なった。
数日後、志乃から1本のメッセージが届いた。
【夜分すみません。
デビュー作『月の隣にいたひと』、今さらながら読み返しました。
……泣いてしまって、何と伝えたらいいかわかりません。】
圭吾はそれを読んだ瞬間、何も言えなくなった。
その作品は、影の圭吾が書かせた最初の物語だったからだ。
内容は――
“自分という存在が、誰にも気づかれず月の隣でずっと浮かんでいる”
という、孤独な少年の話。
志乃がそれを読んで泣いた。
つまり、彼女は“あの少年”の存在を、覚えているのだ。
その夜、圭吾の中で、影の声がはっきりと聞こえた。
《彼女、ほんとうに僕を見てたんだね》
圭吾は息を呑んだ。
それは、ただの記憶の残像ではなかった。
――影の圭吾が、今も彼の中で生きている証だった。
そして、声は続けた。
《お願い、また会って。彼女に、ちゃんと話してほしい》
その声には、焦りがにじんでいた。
まるで、消えてしまう前の最後のチャンスを訴えているように。
翌日、圭吾は志乃に言った。
「……次の打ち合わせ、よければ場所を変えませんか?」
「どこか、決まってますか?」
「……実家です。あなたに、どうしても見てほしいものがある」
志乃は一瞬驚いたが、頷いた。
ふたりは“鏡のある家”へと向かう。
影の記憶と、揺れはじめた恋心を抱いて――。
ちなみにですね!!お師匠様(推し様)から頂いたリクエストはですね!!「恋愛系・ミステリアス系」だったので、恋愛系に挑戦してみたいと思います!!あんま、恋愛とかしたことないんでね、、挑戦魂ですが!!!
下手くそだったら教えて!!参考にするから!(-д☆)キラッ!!ってことで!!!お次は後編です!!