テラーノベル
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現代に生まれ変わったメリットは明らかに会いやすくなったことだろう。
私はこの世に生まれ変わり、一般的な「人間」として仕事をしている傍ら前と同じく文字を書いたりしている。
たまたま宋さんと出会ったのは夏の暑い日であった。と言っても、偶然に近い。運命というのはそういうものだと思う。偶然入ったカフェで偶然目が合って____
それから連絡を取り合って(L█NEという便利なアプリがあるので最近はそれで連絡している。)今回、今世で初めてであるデートをしようとしている。
宋さんは少し離れたところに一人暮らしをしているらしく、今日は車で迎えに来てくれるらしい。
チャイムが鳴る。「はい」と返事をして急いで玄関のドアを開けた。
「…久しぶりだな。と言っても、1ヶ月程度か」
「いえ、1ヶ月でも私にとっては酷く長く感じましたよ」
そうか、と少し微笑んだ。どきっとした。前会った時はお互いラフな格好だったので、こうして現代のキチッとした服を着ているのを見るのは初めてだった。きっとそれだけではない、久々に会ったから相乗効果みたいなものもあったのだろう。
宋さんの車に乗り込む。確かに宋さんらしい落ち着いた色合いに、車内も整っており準備でもしてくれたのではないか、と少しだけ期待してみた。真実こそ知らないが、考えるだけならタダである。
「今日は映画見に行くんでしたよね」
「あぁ」
それも大型の映画館ではなく街のはずれにある小さなものに。理由は単純、2人とも流行りものよりも癖のある映画の方が好きだからだ。そうなったら映画館の規模は小さい方が良い、というかそこでしか上映していない。
車を運転している宋さんの横顔を眺める。清潔感のあるシャツにすらっとしたスタイルは良く似合い、さらさらの髪も車内のエアコンに靡いて趣がある。シンプルな物を好むと以前言っていたが、指に散りばめられる指輪や耳にあるピアスの跡など、少し遊び心のある姿もまた魅力的で……いや、明らかに私が惚れ込んでいるみたいではないか!半分そんな感じだが!
「…そんなに見られると恥ずかしいのだが」
信号待ちで止まった車内で宋さんは少し顔を赤くした。
「迷惑でしたか……?」
「いや、こうやって見られるのは……あまり慣れていない」
「意外ですね、こんなに綺麗なら女の子とかから人気じゃありません?」
勘弁してくれ、と宋さんは正面を向いた。ちょうど信号も青に変わった。
「着いたぞ」
ありがとうございますとお礼を言って、1つ伸びをした。二人で映画館へ向かう。
「そういえば、褒められてばかりで俺からは何も言っていなかったな。服も含め全て似合っているぞ、特に靴の色の合わせ方が良い。」
「そ、そんな…!無理に褒めなくても」
「俺が嘘をつくように思うか?」
思わない。彼は正直な男だと思う。だからこそ恥ずかしいし、目も合わせられなかった。
早いところこの焦れったい関係をやめにしたいとまで思う。
選んだ映画は世間一般ではB級と言われるもので、地球が危機に瀕した所を特別な力を手に入れた主人公が仲間と協力して回避していく____というもので、最後はベタなラブシーンで終わるものだった。宋さん曰く「やはり危機に陥った所を救い出すようなヒーローに憧れる」とのことで、彼らしいと思った。
私は正直、順風満帆で終わる話よりも悔いの残るものであったり色々な終わり方があっても良いように思えるが、ここは彼の気持ちを優先させることにした。
強いて言うなら最後のキスシーンは少し気まずいというか気恥ずかしいところではあった。この手の映画は大体「2人は幸せなキスをして終了……」みたいな所があるからある程度は予想していたが、普段ひとりで見ている分慣れていないのだ。まあ、実際宋さんは何とも感じていない所を見ると杞憂であったが。
「久々に良いものが見れた」
スッキリした様子で宋さんは言う。
確かに、勧善懲悪が好きな彼にとって更にスケールの大きいものとなれば満足するのは当然だろう。
「いや~良かったですね」
と話を合わせる。
きっと昼食を食べたあとの集合での映画鑑賞であったので他の客は割と寝ていた(B級なのだから普通である)。他の人の前、ましてや宋さんの前で寝顔を晒したくもないので私は頑張って見ていたのだった。
外は残暑と言っても未だ暑い。本来はカフェなどに入って少し涼みたいのも山々だったが、皆考える事は同じでどこも満員だった。というわけで仕方なく車の中で涼んでいる。
「そういえば、宋さんコンビニって行ったりしますか?」
「いや、そういったものは…」
確かに、何となく行かないイメージがあった。
「新作の飲み物が美味しいんですよ。良かったら行きませんか」
「それは良い案だな」
にっこりと笑う。運転してもらっているのに図々しいとは自分でも分かっていたが、多少のわがままくらい許してくれるだろうと思っている。
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セ█ンのスムージーを知っているだろうか(!?)。とても美味しい。それがどうしても飲みたかったし、彼にも味わってみてもらいたいのだ。
王朝というものは基本的に前世の記憶が強く、大抵は機械に慣れない。が、私の適応力と吸収力をなめてもらっては困る。現に、今世にこれだけ馴染めているのも特技である。
ということでセ█ンに停めてもらった。
「色々置いてあるんだな。前から話は聞いていたが…」
宋さんは棚を眺めている。
「あ、これです!」
数あるスムージーの中から「抹茶」を選んだ。昔から馴染みのある味なのできっと喜んでくれるはずだ。彼はパッケージをじっくり眺めている。
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#るこ🌱𖤐🌻
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「…ここはカードで払えるのか」
「あ、私が出しますよ!せっかく連れて行ってくれたわけですし」
「いや、ここは俺に奢らせてくれ。わざわざ映画に付いてきてくれたお礼だ」
せっかくなのでお言葉に甘えることにした。
手順は私の方が覚えているので、ボタンを押せば完成である。車内に戻り、二人でスムージーを飲んだ。
「で、どうですか」
お味は、と付け足す。
「美味しい」
「なら良かったです」
今思えば味の濃いものや甘いものはあまり飲まないと言っていたので嘘をついているのだろうか、はたまた本心なのかよく分からない。
結局のところ私は彼の事をよく分かっていないのだ。前世は物理的に距離が離れていたからで、今世はどこか心に距離を感じてしまう。確かに色々と誘ってくれるが、それが何のためなのかも分からない。私に気があるのかもしれないという淡い期待だけで着いてきてしまったが、果たしてどうなのだろうか。
「どうしたんだ、そんな顔して」
「え、?そんな変な顔してます!?」
顔を手で覆う。こういった気持ちは抑えておくべきだということは嫌でもわかっている。こういう関係は安い映画のように上手くハッピーエンドになるとは限らないからだ。
「俺もそうだが、すぐに色々考え込んでしまうタイプだろ?折角の楽しい気持ちを無駄にするのは勿体ないと思うが、違うか?」
「いえ。」
しかしクヨクヨ悩んでしまうのも何年経っても治らないし、杞憂に終わることだって数え切れないほどある。
「……宋さんは今楽しいですか?」
「…?おかしなことを言うな。俺は楽しくない誘いには乗らないし、まず誘ったりはしない」
「全く、よく人たらしって言われませんか」
ふっと笑い宋さんは答えを濁らした。
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その後、街中をしばらくドライブしてお開きとなった。1人では不安だと家までキッチリ送ってくれるところに惚れ惚れとしてしまう。私もこんな風にエスコートして、あわよくば人を惚れさせてみたいものだ。
「今日はとても楽しかったです。」
「それなら良かった。次はどこか遠く……例えば海とかどうだ」
「海ですか…。死を予感するので今世で行ったことはないんですよね」
宋さんは知っているはずだが、平安を代表する「私」という存在は海の下で死んだ。故に海は怖いのだ。静かだし、何より冷たくて暗い。
「実は俺もだ。俺も沈んで死んだからな」
「宋さんも……?」
「……だから、二人でなら行けるかと思ってな。嫌だったら断ってくれ」
「二人」という言葉に酷く引っかかってしまう。海など他と行けるはずなのに、私なんかと行っていいものなのか。
「断れるわけないじゃないですか」
宋さんは手をそっと握って笑った。
「日程などは追って連絡する。今日はどうもありがとう」
「…はい。」
例え水に呑まれようとも、困難に当たったとしても、なんとなく宋さんとなら乗り越えていけるかもしれない。例えそれが独りよがりだったとしても構わない。ハッピーエンドなど自らの手で掴まねば、人に決められてたまるかと一人決心をする。
「楽しみにしています!」
家の前で大きく手を振り宋さんの車を見送った。
コメント
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さつまいもさん、第3話読ませていただきました🌷 平安から現代へ舞台を移しても、お二人の距離感の描き方が本当に繊細で、胸がぎゅっとなりました。特に「車内でスムージーを飲むシーン」と「海の話から手を重ねるところ」、静かな会話の裏にあるお互いへの想いがじんわり伝わってきて、とても好きです。 まだまだ焦れったい関係を続けるお二人が、どう変わっていくのか楽しみで仕方ないです。次回も楽しみにしていますね!