るなに似合うと思って、とそのヘアピンをゆあんくんからプレゼントされたのは、何ヶ月か前。
きらきら雪の飾りがついたそれはすぐにるなのお気に入りになって、学校にも、遊びに行く時も、事ある毎に身につけていた大切なものだ。
大切な、ものだったのだ。
「う 、うそ 、うそうそうそ 、うそでしょっ……?」
……そんな大事なものが、なんで今るなの部屋から見つからないの??
「ないっ 、ない 、ない 、ないないない ~ …っ!!」
部屋中全部ひっくりかえしたのに!!
それだけじゃなくて鞄の中も、上着のポケットも、全部全部!!
それなのに、どこにもあの妖精の粉をまぶしたような水色のきらきらがない。るなはさぁぁぁぁっ……と顔が青くなっていくのを感じながら、ない 、ない 、と部屋中をうろうろし続ける。
なんで、どうしてないの?るな、前につけたときどこにしまったの?
いつもはこの箱の中に入れてあるはずなのに…。
最近中身の増えてきたアクセサリーボックス。えとちゃんとおそろいで買ったお気に入りだから、ここにしまうのを忘れることなんてあるはずないもん。
じゃあ……じゃあ、 どこかに落としてきちゃったってことなの?
「そ、そんなぁ…ッ」
とうとう、泣き出しそうな情けない声がるなの口から漏れた。
大事なプレゼントを失くしちゃったことにも、それに暫く気がつけなかったことにも悲しくなった。もっと早く気がついていたら探しに行くこともできたかもしれないのに。いつ失くしたかすら検討がつかないんじゃ、心当たりさえわからない。
しかも今日は、プレゼントしてくれた張本人であるゆあんくんとお出かけなのだ。
「ううぅ……」
どんな顔して合えばいいんだろう……。
でも今から急に行けなくなったって連絡するのはそれこそ困らせてしまうだろうし、どんな理由をつければいいのかも思いつかない。ヘアピンは見つからないけど……とにかく行くしかない、よね……。
「うぁぁぁぁ ~ ッッ!!」
かなしい恐竜みたいな呻き声を上げながら、代わりのヘアピンを選ぼうとして……やめる。なんだかどれをつけてもしっくり来ない気がするし、他の子からプレゼントされたものだったり、お揃いだったりするものは、相手の子にもゆあんくんにも悪いことをしているような気持ちになるから。
だって、るなが今日本当につけたかったのは、絶対絶対あのヘアピンなのだ。
それなのに他のアクセサリーをつけたって、色んな申し訳なさが募るだけ。
ヘアピンがないなら、…!とるなは急いで髪の毛をふたつに纏めた。前にこのアレンジをしたら、ゆあんくんが可愛いねって褒めてくれたのを思い出したからだ。きっとヘアピンをつけたらもっと可愛くなるけど……。今は、それを考えたって仕方ない!
「よしっ、行こう!!」
べこんと凹んだこころの形を見ないふりして、るなはお家を飛び出した。
ゆあんくんを待たせる訳には行かないし、ゆあんくんに会ったら、ちょっとは気持ちも晴れるかも……。
そんなすがるような期待を、胸に抱いて。
°・*:.。.☆
待ち合わせ場所でるなを見つけたゆあんくんは、やっぱりいちばんに、
「わ、今日はふたつ結びなんだ。久々に見たけどやっぱり可愛いね」
と褒めてくれた。ふわりと微笑んだ目元は優しくて、髪型が崩れないようにそっと頭を撫でてくれる指先もまた優しかった。るなはそんなゆあんくんの気持ちが嬉しくって「えへへぇ…」とついだらしない声を上げてしまって。
「ありがと…っ!!」
「お礼を言うのは俺の方だよ。今日も支度頑張ってくれたんでしょ?」
「う……うんっ!」
ゆあんくんの言葉に急いで頷く。嘘では……ない。
ブンブン首を振ったるなに、ゆあんくんは笑みを深めて、そしてちょっぴり照れくさそうに「そっか」と言った。
「ありがとね、るな。すごい可愛いよ 」
「……!」
途端、胸の中で嬉しい気持ちが爆発して、るなは思わずゆあんくんに飛びついていた。「わっ!!?」と声を上げた彼は、でもちゃんとるなを抱きとめてくれる。目立つから…!!っていうお小言といっしょにすぐその場から移動する流れになっちゃったけど……歩き始める前に一瞬ぎゅっと抱き締め返してくれたのだって、るなはちゃんと気づいてたよ。
ゆあんくんとふたりでおでかけ……デート 、するときは、いつもこう。
一番最初から最後のページを閉じるまで、ずっと幸せで困っちゃうんだよね。
今日だって、手を繋いで歩き出したその瞬間からこころがぽかぽかして、ぴょんぴょーんって、跳ねてどこかに行っちゃいそうなくらいわくわくしてて。
ゆあんくんが微笑んでくれる度に、胸がきゅうううっ……となって……。
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コメント
5件
はい最高。 ハート50…ね…ふーん…
少々長文になりそーです!!!!!!!