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音声ガイダンスに従って、商品について、商品の不具合、担当者に繋ぎます、と選んだ善悪が暫く(しばらく)待っていると、
「お問い合わせありがとうございます。 私お客様相談センターの結城(ユウキ)と申します。 本日は如何(いかが)なされましたか?」
と丁寧で明るい口調の男性が電話に出た。
早速、商品の予約から、本日受け取った事、素晴らしい出来であった事への賞賛などを次々述べていく善悪。
結城氏も、いちいち感謝の言葉を述べつつも時折嬉しそうな相槌を打ちながら会話は進んだ。
どうした事だろう、話題が動作確認に入った辺りから、あからさまに結城氏の様子が変化している。
具体的には、相槌を打つ回数が極端に減った事と、その音階が二オクターブ位下がっている部分だ。
善悪も気にはなっていたが、この報告で一番大事な所に入っていたので、気にしない事にして一気に不具合のあらましを説明し切った。
「と言う事で、左肘部分のギミックが壊れていたのでござる。 原因としては、やはりプラスチック製のジョイントの耐久力不足が考えられると思うのでござる。 今後の改善には、安定度を考えれば金属部品への変更が一番とは思うのでござるが、重量バランスを鑑(かんが)みるとやはりセラミックが理想と愚考(ぐこう)するのでござる」
自分なりの改善案まで伝えたのは些(いささ)か出過ぎた事だったかもしれないが、まあ老婆心(ろうばしん)ゆえの勇み足と言った所だろう。
満足げな善悪に対して、結城氏の発した言葉は少し意外なものだった。
はい『観察者』です。
『観察』の中で、不意に私にとって気になる単語が登場しました。
これより少しの間『経験』に視点を切り替える事とします。
「………それで、ご要望は? どういった対応を御希望されるのでしょうか?」
? ん、要望? 対応?
拙者は只単にメーカーの評判が落ち無い様に、更に言えば今後も成長していって欲しいのでござるが?
まあそのまま言うでござるか……
「こんな、小さな事で会社の評判が悪くなるのは、結城氏も本意ではなかろ? 折角伸びてる会社である事でござるし?」
「……ええ。 それはそうですが、こちらとしても出来る事と出来ない事がありますし」
まあ、そうであろうな。
HPの警告ぐらいなら簡単でござろうが、素材変更なんてそうそう容易(たやす)くは無い事位は、我輩でも分かるでござる。
であれば、もう一言伝えて置くでござる。
「まあ、優れた方々が居られるであろうから、ゆっくり時間を掛けて対応すれば良かろ? 我輩は楽しみに待っているでござる」
そう、一ファンとしてはその日を楽しみにするのみでござる。
? 感動しているのだろうか? なんか、無言なのでござるが?
お、息を吸い込んだでござる。
「仰る事は理解出来ました。 只ですね、予約時の注意書きにも、そちらにお届けした商品の外装、及び取扱説明書の方にも記載してあるのですが、数量限定のシリアルナンバー付きであるという特殊性から、返品、交換等には基本的にお応えできない旨、事前説明済みである事は今一度御了承下さい。 その上でもう一点再確認して頂きたいのですが、下段に記入されている※印の箇所でございますが、開封後の返品、破損に対する修理、色落ち等には一切応じられないと明記されて居ります事も併せて御理解くださいませ。 先程ガイダンス案内の冒頭で御入力頂いた当社のサポーターナンバーで確認させて頂きました所、かつてより幸福様が当社に対して、非常な御愛顧を頂いている事は私も深く感謝を申し上げるものです。 ですから、先程の御指導に従いまして、今回の件は上の者に相談させて頂く事は、この場でしっかりと約束させて頂きます。 でございますが、先程申し上げた事前の了承の件がございますので、御要望にお応えする事は、非常に難しい事、はっきり申し上げれば不可能を大前提として御理解頂くしか無い訳です。 幸福様、以上の説明でお判り頂けましたでしょうか?」
「おっ? えっと…… はい?」
何か予想外の事を一杯話されたでござるが、一体なんでござろう?
思わず聞き返してしまったでござるよ。
「はい、では対応が決まりましたら、何(いず)れにしてもご登録済みのメールかお電話の方へご報告させて頂きます。 アドレス、電話番号にはお変わりございませんか?」
「え、あ、はい」
「わかりました。 本日は御連絡及び、貴重な御意見誠にありがとうございました。 では失礼いたします」
『観察者』です。
何やらヒントなのかと思いましたが違ったみたいです。
では改めて『観察』を続ける事にしましょう。