6月になり、田村は本拠地に戻った時、再び大地に会おうと決めていた。
前回のように、3試合目が終わった翌日に大地が入院している病院へ向かった。
今回は病室も覚えていたため、受付を通して問題なく入ることができた。
「こんにちは」と田村は言って大地のベッドへ向かうと、
その日は、ひとみだけが大地の病室へ来ていた。
二人は田村の方へ振り向くと、
「あ、タムだ!」と大地は大声を出すと、
「田村さん?」とひとみは驚いた表情で言った。
「大地君、元気にしているかな? この前、手紙を送ってくれてありがとう。今日はどうしても大地君に会いたかったので来たんだ。ところで、大地君の誕生日はいつかな?」と田村が尋ねると、
「7月4日だよ」と大地が答えた。
「大地君、誕生日のプレゼントは、何がほしいかな?」と私が聞くと、
「田村さん、大地にプレゼントだなんて、ほんとうにお気持ちだけで十分です。こちらに来て頂けるだけで、大地にとって嬉しい思い出ですから」とひとみが言った。
「そんなたいした物は、できませんから」と田村はひとみに言うと、
「大地君、何でもいいよ」
「ほんとに何でもいいの?」と大地が聞くと、
「いいよ、何でも言ってごらん」
「欲しい物はないけど…」と大地が少し躊躇しているようにみえた田村は、
「欲しい物はないけど、何かな?」
「タムのホームランが見たいの」と大地は言った。
「ホームラン?」と田村が言った後、少し考えた末に
「わかった、大地君。1本打てるように頑張るね」と田村は人差し指を出すと、
「ちがうよ、ホームラン二本、打ってほしいの」と大地は指でピースをした。
「大地、そんな事を田村選手に言わないの」とひとみが大地に言うと、
「だってタムは何でもいいよって、言ったよ」
「大地、いい加減にしなさい」とひとみが大地を叱った。
「村山さん、大地君を叱らないであげて下さい。私が言い出したことなので、私の責任ですから」と田村がひとみに言った後、
「大地君、僕もがんばってホームランを打つので、大地君も病気をやっつけるんだよ」
「うん、がんばって病気をやっつける」と大地は言った。
田村は大地に再び会う約束をして、病室を出た。
田村がタクシーを待っている時、フラッシュのようなものが、二、三回光ったような気がしたが気のせいだと思っていた。
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