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※政治的意図なし。史実とは一切関係ありません。語彙力がなさすぎるためところどころおかしいです。誤字脱字があるかもしれません
カナダ×日本です。 アメリカとカナダが兄弟設定です。他にも諸々お気をつけください。
会議室の電灯がカチカチと音を立てながら輝いている。金色の光がテーブルに反射し形作っている。
その輝きは、……そうだ、あの時のメダルと似ていた。
太陽が表彰台を照らしている。
その頂に立つのは、兄であるアメリカ。
金色に輝くメダルを持って両親に手を振っている。
ーーそれで、僕が立っているのは? 持っているのは?
観客の1人として、人混みの中から兄を見上げている。
手に持っているカメラには兄の写真しか入っていない。
ーーずるい。
生まれた時からずっと思っていた。
またたく間に成り上がっていく兄と、追いかけるのに必死な僕。
誰から見ても差は歴然で、評価されるのは兄ばかり。
でも、そんな僕にも命をかけてでも守りたい物ができた。
これだけは兄に渡したくない
絶対に渡さない。
「これにて、本会議を終了する。
次回はこの議案について最終的な結論を出す。
各自どちらに賛成するか考えてくるように。」
その声で張り詰めた空気が一瞬にして溶ける。
国々は思い思いに話し出し帰宅準備を進めている。
資料にメモした兄の意見に赤線を引きながら目を通す。
(この意見を成功させるために、僕がやるべき事は…)
机上の消しカスを手で集めながら考える。
(僕の考えなんていらないのだ。
無心で最大限兄につき従えばいい。)
足音と話し声が少しずつ小さくなってきた。
自分も帰ろうかと思い、椅子を引く。
今日も椅子は冷たい。
その時、少し、気になるものを見つけてしまった。
ただ、一人だけ、熱心に資料を見つめている人がいた。
小柄な背中のその子は、過去の資料も持参して見比べている。
脳は出口へ向かおうとしているのに、自然とその子の方へ近づいてしまう。
付箋を取り出してはそれぞれの意見を考え書き込み貼っている。
ーー自分の意見以外捨てている兄とは違って。
時計の秒針はもう、何周も回っているのはずなのに、ずっと視線が逸らせない。
まるで、お花? 子猫?
瞬きをする。
ーいや、そんな安っぽい言葉で表すもんか。
『可愛い』では浅すぎる
見ているだけで心がいっぱいになるこの感覚。
ーー底無しの沼に落ちていく感覚。
左手が空を切る。
あぁ、話し掛けてみたい。
言葉にならない音が喉からなる。
僕の言葉で、笑ってほしい、怒ってほしい、泣いてほしい。
貴方のことが知りたい。
そして、僕のことを知ってほしい。
「おい、日本!!帰るぞー!!」
脳内に異質な音が響く。
扉を突き破る勢いの叩く音ともに、
兄である、アメリカの声が僕を妄想の世界から現実へ引き戻す。
あの子は扉の方に視線を向け、苦笑する。
「はい、今行きますよ。」
資料を机にトントンと叩く。
やけに、その音が大きく心地よく聞こえた。
普段一番でかく聞こえる兄の声よりも。
そのまま丁寧に机を引き、静かに兄の方へ行ってしまった。
僕のことを1度も見ないまま。
手に持っていた資料がゆっくり落ちる。
通路の真ん中で立ち尽くす。
辺りには壊れかけの空調設備の音と、酷く頬が照っている僕だけが残っていた。
日本‥‥‥
そうか、あの子はそんな名前なんだね。
無意識に資料の余白にその名前を書く。
今日に名前をつけるなら、僕に初めて宝物ができた日だ。
日本と兄の名を呼び合える関係がとても遠く感じられた。