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八月の夜風が蝉の声を優しくかき消す頃、そうりょう町の川辺には大輪の花火を待つ人々が集まっていた。陽(はる)は、佐伯澪(みお)、神谷迅(じん)、早瀬花(はな)の4人で川縁の席に腰を下ろす。


「いい席、取れたね」

花が笑顔で言うと、迅も花火をまだかと待ちわびていて興奮気味だ。


澪は浴衣の袖をそっと寄せ、はるにだけ小声で話しかけた。


「はるくん、花火、綺麗に撮ってくれる?」

「もちろん。みおの笑顔も一緒に写したいから」


きらきらと輝く打ち上げ花火が、闇のキャンバスに次々と咲いていく。

はるは澪にカメラを向けるが、撮り終えてから思わず振り返った。


「みお、綺麗だよ」

澪は目を伏せ、小さく笑った。


「ありがとう……はる」


花火の轟音とともに、じんははなに話しかける。


「はな、来年は二人で花火見に来ようぜ」

「え? ふたり?」

「うん。君の笑顔、もっと見たいから」


はなは恥ずかしそうに顔を赤らめ、でも確かに頷いた。


夜空を彩る光は、ひとときの夢のように消え、あたりが静寂に包まれる。

澪は立ち上がり、そっとはるの手を取った。


「ねえ、……今日の約束、忘れないでね?」

「もちろん。――ずっと一緒に、いろんな夏が見たい」


二人の掌がしっかりと重なり合う。

遠くで火の粉が舞う中、静かな約束が交わされた。

恋の季節を越えて

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