TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

夏が終わり、少しずつ秋の気配が近づく頃。図書館の自習スペースでは、陽と澪が並んで問題集に向かっていた。
「ここって、こういう考え方でいいんですか?」


「うん、合ってるよ。やっぱり陽くん、吸収が早いね」


佐伯澪の柔らかな笑顔に、陽は少し照れながらも頷いた。そんな時間が、心地よく、静かに流れていた。


だが、その空気は、ある人物の登場で崩れる。


「へぇ、仲良いんだな、風間。佐伯と」


ひときわ目立つ整った顔立ちに、サッカー部のユニフォームを着た片桐悠真が、笑みを浮かべて立っていた。


「…片桐先輩」


「同じクラスなんだから、先輩とかやめてよ。それに俺たちって、同い年でしょ?」


軽薄そうな口調と、陽に向けられる不敵な視線。その視線の意味を、陽はすぐに理解した。


片桐は、澪のことを狙っている。


それを確信したのは、そのあとの一言だった。


「佐伯。今度の文化祭、俺と回らない?前から気になってたんだよね。お前のこと」


その場の空気が、凍りついた。


澪は驚いた表情を浮かべて口を開こうとしたが、その前に陽が立ち上がった。


「ごめん。…僕たち、勉強の途中なんです」


「へぇ、そっか。悪い悪い、邪魔したな」


片桐は笑いながら手を上げ、悠然と立ち去っていった。


残された陽と澪の間には、先ほどまでの穏やかさはなかった。


「ごめん、私…びっくりしちゃって…」


「ううん、大丈夫です。…でも、ちょっとだけ、焦りますね」


陽の言葉に、澪は小さく微笑んだ。その笑顔が、ほんの少しだけ、寂しげに見えた。


その夜、陽は一人で考えていた。


片桐のように、自信に満ちていて、まっすぐ想いを伝えることができる人間に――自分は、なれるのかと。


そして同じ夜。別の場所では、柚葉がひとり、スマホを見つめていた。


(最近、先輩…ちょっと元気ない)


そんなことを思いながら、ためらいがちにメッセージアプリを開いて、陽に一通だけメッセージを送った。


『先輩、今日もお疲れさまです。ちゃんとご飯食べましたか?』


送った後、画面を見つめたまま、しばらく返事を待ち続けた。

loading

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚