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「にしてもさ、炎吉兄さんはどこ行ったんだ?」
颯太が口にした言葉を聞いて、英厳は言い訳を考えてるみたい。多分、いつもの言い訳を使うんだろうな。
「それはな、」
「ちょっと黙っとこっか」
スコットランド王国が口を開いて話し始めた瞬間、jeはちょっとだけ殺気を込めてそう一言言い放った。
「彼奴とは犬猿の仲だと前も言っただろう?どうせ、気配かなんかで分かったんだろう」
昔から聞いてきた英厳(炎吉)が使う言い訳。
「流石に、今回はその言い訳では厳しいのでは?」
そう言葉を口にしたのはイギリスだった。
もっと早めに洗脳でも催眠でもして忘れさせとくんだった。そういう小細工は“西華”の得意分野なんだから。
「ほぉ~、それはどういう事だ?後継者の主様」
少し挑発的に英厳はイギリスに向かってそう問い掛ける。
「私は、さんざんそんな事を聞いてきましたが、何故、貴方も吉も、右目の視力だけが悪いのですか」
英厳は驚いたように右耳についている赤薔薇のピアスに手を当てる。
あのピアスは、英厳が生まれた時からつけてる物で、彼の視力を矯正するための物でもある。
さらに畳み掛けるようにイギリスは話を続ける。
「何より、先程、炎吉の姿から英厳、貴方の姿に変わるのを見ました。貴方はそれを知られたくないようですが、いいかげん、話して下さいよ」
あの話し方的に、昔から薄々勘付いていたのかな。
「とうに昔から勘付いていたというわけか」
馬鹿らしくなったのかな。英厳は吹っ切れたように笑い始めた。
「こりゃ完敗だな。そうだろ?スコットランド様、イングランド様、主」
複雑そうな、ちょっと苦しそうな表情を浮かべた三人(国)に英厳は言葉を掛ける。
「炎吉が開き直ったなら、仏華もいっその事開き直るか?」
楽しそうに笑いながら奥様はそう話す。こんな状態を楽しまないで欲しいんだけど。
「馬鹿を言うな。此奴は関係ないだろ」
英厳の眉間にシワが寄る。
もしかして、jeの事守ろうとしてくれてるのかな?嬉しいなぁ。
でも、多分奥様のあの発言で勘の良い炎加は薄っすらだけど気づいてるみたい。
「ううん、もう良いの。吉、いや、今は、英厳だったか。jeも、腹括るよ」
もう、いっその事開き直った方が楽だしね。
受け入れて貰えなかったら吉(英厳)と一緒に隠居でもしようかな。
そんな事を考えながら、jeは、昔の姿に、私の姿に戻る。
久し振りのこの感覚、ちょっと、恥ずかしいですね。
「お前はいつも美しい」
そんな事を思っていると、英厳がそんな言葉を漏らす。
「おや、貴方からそんな言葉が聞けるなんて、嬉しいです。最近はずっと、炎吉でいたからですかね?」
“炎吉”からそういう言葉を聞いた事はありましたが、“英厳”からは今までまともにありませんでした。だからこそ、嬉しさが倍増しました。
「ハハッ、確かに“俺”はなかなかこういう言葉を本人に送った事は無かったな」
あぁ、あの時と変わらない笑い方。本当に、このドールは不器用だけれども、愛おしい。
「どうせこの後、俺と西華の過去やら、何故隠していたのか、なんて事を聞くんだろ?」
鋼鉄でできたような表情のまま、英厳はそう言いました。
「立ったままでは話しにくいですから、座って下さいな」
私は、言葉足らずが過ぎる英厳を見て、そっと微笑みながら、炎利達に座るように促しました。
「長い話になるからな。覚悟しとけよ」
ニヤリと怪しげな笑みを浮かべて英厳はそう言いました。
「まだまだ夜は長いですから、そう焦らなくても良いですよ」
そんな英厳は大好きです。そう思いつつ、昔と変わらぬ笑顔を向けて私はそう話しました。
「俺の過去を話そう」
そっと英厳が椅子に腰掛けました。そんな彼に続いて、私も、化身達も座りました。
一つ、深呼吸をして、英厳が話し始めると同時に、私もそっと目を閉じて過去を振り返り始めました。
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