TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

一つ、深呼吸をして、英厳が話し始めると同時に、私もそっと目を閉じて過去を振り返り始めました。


私は、気が付いたら此処、地球の現在のフランス共和国、当時の国名で言うならば、フランク王国に生まれていました。


西暦486年位の時に生まれたと思います。


ですが、私にはその頃の記憶が有りません。正確に言うと、漠然とした記憶は有るんです。貴族が楽しそうに笑う姿、沢山の絵画、石像、覚えているのはたったそれだけです。


覚えていない理由として挙げられるのは、当時の私の海馬がまだ未発達の状態で生まれたせいというものと、その時にはフランク王国の化身が不在で、私自身が仕える存在が居らず不安定だったせいというもの。その二つぐらいでしょうか。


正直生きていてそんなに不便に思ったりすることはなかったので、どちらでも良いのですがね。


しっかりと記憶が有るのは、984年以降ですね。


その頃から、私は絵を描くのが好きでした。


多くの絵を描き、沢山の美しい物を観てきました。


その時ぐらいですね、奥様が生まれたのは。私の真似をしたり、後ろをちょこちょこ付いて来ていて可愛らしかったのです。


そんなふうに美しい物を私は見続けていました。美しい物は、いつ見ても“美しい”と思えました。


ですが、ある時から、今まで美しかった物が“美しい”と思えなくなりました。


黄金色に輝く宝石も、霞んだ色にしか見えませんでした。


使用人も、国民も、王族も、皆さんが言う私の黄金色の瞳は、私にとっては、ただのくすんだ黄色にしか見えませんでした。


「どうして、こんなにも、美しくないのですか」


絵を幾ら描いても、描いても、私自身が満足できる美しさには到底及びませんでした。


油絵で、水彩画で、切り絵で、多くの技法を使ってみても、美しくはなりませんでした。


たぶんですけど、私の目が肥えたのと、普段見る美しい物に飽きたんでしょうね。


そんな私が描いた絵を皆さんは「綺麗だ」と、「美しい」と口を揃えて言いました。

不器用な君と見つけた美しき世界

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

31

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚