テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
深夜2時。配信を終えたばかりの部屋は、まだほんのりと熱を持っていた。
「は〜…今日もやりすぎたわ」
椅子にだらりともたれながら、葛葉はヘッドセットを外す。長時間の配信の疲れなんてどこ吹く風で、むしろ満足げな顔をしているのがらしい。
背後から低い声が落ちた。
『おつかれ、くっさん。今日マジでバケモンだったな』
「ローレンかよ。いつからいんの」
『途中から。てか、あの撃ち合いえぐかっただろ』
「だろ?俺うますぎな」
振り返ると、赤髪のローレンが壁にもたれながら笑っていた。その目はいつも通り冷静で、けどどこか楽しそうだ。
「…で、何しに来たわけ」
『別に。なんとなく顔見に来ただけ』
「は?なにそれ、きも」
『ひど』
そう言いながらも、ローレンは気にした様子もなく近づいてくる。その距離がやけに近くて、葛葉は視線を逸らした。
『くっさんさ、配信のときとオフでだいぶ違うよな』
「は?変わんねぇだろ」
『いや、変わる。今の方が静か』
「…疲れてんだよ」
ぶっきらぼうに返すと、ローレンは「ふーん」とだけ言って、葛葉の隣に腰を下ろした。
沈黙が落ちる。
けど、不思議と気まずくはなかった。
「…なあローレン」
『ん?』
「今日さ」
少しだけ言い淀んで、葛葉は視線を床に落とす。
「お前見てるって思ったら、ちょっとだけやる気出た」
その言葉に、ローレンは一瞬だけ目を見開いた。
『…は?』
「いや、別に深い意味ねぇけど」
慌てて付け足す葛葉に、ローレンは小さく笑う。
『くっさん、そういうのずるいよな』
「は?何が」
『無自覚で言うとこ』
そう言って、ローレンはゆっくりと手を伸ばす。
葛葉の銀髪に触れる指先は、意外と優しかった。
「…なに」
『頑張ってたなって思って』
「頑張ってねぇし。努力とか嫌いだし」
『知ってる』
即答されて、葛葉は少しだけむっとする。
けどその次の瞬間、ローレンの手がそのまま頬に滑ってきて、動きが止まった。
『でも、やってることはちゃんとすごいよ』
低い声で、まっすぐに言われる。
逃げ場がなくて、葛葉は思わず目を逸らした。
「…うるせぇな」
『照れてる?』
「照れてねぇし」
言い返すくせに、その声は少し弱い。
ローレンはそのまま、ぐっと距離を詰めた。
『じゃあ、もうちょい近くても平気?』
「は?」
問いかけと同時に、額が触れそうな距離になる。
さすがに近すぎて、葛葉は息を飲んだ。
「ローレン、お前—」
言い切る前に、唇が重なった。
一瞬だけ、軽く触れるだけのキス。
それなのに、やけに心臓がうるさい。
「……は?」
固まる葛葉を見て、ローレンは少しだけ困ったように笑う。
『今の、嫌だった?』
#knkz
琳埜
76
8,916
「いや…その…」
珍しく言葉に詰まる葛葉。
その反応を見て、ローレンは少しだけ目を細めた。
『じゃあ、もう一回していい?』
「は、ちょ—」
今度はさっきより少し長く、深く。
逃げようとしたはずの葛葉の肩を、ローレンは軽く押さえていた。
離れたあと、葛葉は完全に言葉を失っていた。
『くっさん、顔真っ赤』
「うるせぇ…!」
『かわいいな』
「は!?ふざけんな!」
怒鳴るくせに、どこか力が入っていない。
ローレンはそんな葛葉を見て、小さく笑った。
『俺、結構前から好きだったよ』
その一言で、空気が変わる。
葛葉は一瞬だけ目を見開いて、それから視線を逸らした。
「……今さら言うなよ」
『じゃあ、くっさんは?』
少しだけ意地悪に聞かれて、葛葉は舌打ちをする。
「…嫌いならキスされてねぇだろ」
『それ答えになってる?』
「なってる」
ぶっきらぼうに言いながらも、耳まで赤い。
ローレンは満足そうに笑って、もう一度だけ距離を詰めた。
『じゃあこれからは、もっと堂々と触るわ』
「は?調子乗んな」
そう言いながらも、葛葉はもう逃げなかった。
むしろ、ほんの少しだけ自分から距離を詰めていた。
コメント
1件
わ〜、甘酸っぱい…!配信後のオフ感がすごく生々しくて、ローレンの触れ方とか優しさにドキドキしたわ。特に「嫌いならキスされてねぇだろ」って葛葉のツンデレ返し、最高すぎる。最後の自分から距離詰めるところ、めっちゃ可愛い。これは連載続き読みたいやつ🔥