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なんだろう、なんかふかふかしてるな。
雲の上にいるのかな?
いや、待て。雲に触ることはできてもふかふかしていると感じることはないはずだ。
だとしたら、この感触はいったい……。
ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)が目を開けると、どこまでも白い空間が広がっていた。
「ここは……どこだ?」
「あっ、起きた」
「起きたね」
「起きたよ」
「びっくりした」
「動いた」
「生きてる」
「こんな子どもが選ばれたのか」
「どうでもいい」
な、なんだ? いろんな声が聞こえてくるぞ?
彼が上体を起こすと、丸い綿《わた》の塊《かたまり》に目と口がある謎の生命体たちが彼を囲むように移動した。
「お、お前たちはいったい……」
「おや、ようやく目を覚ましたのですね」
彼の目の前に胸と秘所を綿のようなもので隠している女性が現れた。
瞳《ひとみ》は紅《あか》く、透明に近い白髪ロングは髪というより糸に近い。
「あんたは誰だ? 俺をどうするつもりだ?」
「どうやらひどく混乱しているようですね。まあ、とりあえず質問に答えましょう。私は女王です。正確には綿の精霊たちの女王ですね」
綿の精霊?
そんなのがいるのか。
「あなたは私たちを満足させるまで、ここから出ることはできませんが、別に骨の髄《ずい》までしゃぶり尽《つ》くすつもりはありませんので、そこは心配しないでください。他に何か知りたいことはありますか?」
「満足させるって、なんだ? 俺は具体的に何をすればいいんだ?」
彼女はニッコリ笑うと、彼の目の前でしゃがんだ。
「それはですね。こうして、私たちを抱きしめるだけでいいんですよ。ほら、このように」
彼女の体は体というより綿を抱きしめているような感じだった。
人の形をした綿。そんな感じだ。
「え、えっと、お前たちは綿の精霊なんだよな?」
「はい、そうです」
「なら、俺みたいな人間じゃなくて、お前らでハグすればいいじゃないか」
「ここにいるのは人の温《ぬく》もりというものをあまり知らない子どもたちと、ここから出ることができない女王だけです。それ故に時々、こうして誰かの温《ぬく》もりを感じないと温《ぬく》もりというものを忘れてしまうのです。それを忘れてしまうと、私たちは枯れてしまうのです」
そうか。だから、わざわざ俺をこんなところに連れてきたんだな。
「なるほどな。まあ、そっちの事情はなんとなく分かったけど、俺はなるべく早く帰らないといけないんだよ。だからさ、できればでいいから手短に済ませてくれないか?」
「それはあなたの頑張り次第で決まります。さぁ、子どもたち。この少年の温《ぬく》もりを感じるのです」
『わー!』
先ほどの丸い綿の塊《かたまり》のような生命体がうじゃうじゃ現れる。
はぁ……これは早めに帰れそうにないな。
ナオトはしばらくの間、目を閉じていた。