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阿部は、いつも通り仕事をこなしていた。
何事もなかったかのように。
うまく日常に溶け込み、
誰にも違和感を抱かせない。
——けれど。
💚(……あいつのことばっか、考えてるな)
ふと、そんなことを思う。
──────────────
仕事が一段落し、路地裏を歩く。
静まり返った夜。
その時——
「手、あげろ」
💚「……っ」
聞き覚えのある声。
ゆっくりと振り向くと——
そこには。
指で銃の形を作り、こちらに向ける佐久間がいた。
🩷「みーっけ」
にこにこと、無邪気に笑う。
💚「……佐久間」
🩷「また会ったな!」
🩷「ねえ、ちょっと話そうよ」
まるで昔みたいに、軽い調子で。
──────────────
屋上——
強い風が吹き抜ける。
ふと、佐久間の耳に目がいく。
白いガーゼ。
💚「……佐久間、その耳」
🩷「あー、昨日ちょっとやりあってさ」
軽く笑う。
💚「……血、滲んでる」
気づけば、手が伸びていた。
そっと、触れる。
🩷「いっ、痛いって!」
💚「……あ、ごめん」
🩷「もー!」
大げさに騒ぐその様子に、
少しだけ、息が抜ける。
💚「……学生の頃もさ」
💚「よく耳、怪我してたよな」
💚「他校のやつと喧嘩して、地面に擦りつけられて」
🩷「やめてよ、それ!」
🩷「恥ずかしいって!」
💚「……でも」
💚「あの頃と比べたら、相当強くなったね」
🩷「まあね〜」
🩷「過酷な修行、乗り越えてきたから」
少しだけ、誇らしげに笑う。
💚「……そっか」
短く返す。
その奥に、言葉にできない何かを抱えたまま。
🩷「……」
ふいに、声のトーンが落ちる。
🩷「阿部と、同じ組織だったらよかったのに」
💚「……」
一瞬、言葉が出ない。
🩷「俺さ」
🩷「阿部をやれって、任務出てんだよね」
💚「……俺もだよ」
夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
風の音だけが、間を埋める。
🩷「……そっか」
💚「……」
🩷「……なあ」
🩷「これからも、会わない?」
💚「……え」
🩷「この屋上でさ」
🩷「秘密の場所ってことで」
無邪気に笑うその顔は——
あの頃と、何も変わっていなかった。
💚(……危険だ)
いつ裏切られてもおかしくない。
いつ、撃たれても不思議じゃない。
それなのに——
💚「……わかった」
断る理由なんて、なかった。
つづく。