テラーノベル
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廊下。
翠は、壁に手をついたまま、
必死に呼吸を整えていた。
はぁ……は……
うまく、入らない。
視界の端で、影が動く。
「……あれ?」
聞き覚えのある声。
顔を上げなくても、分かった。
赫をいじめてた、あのグループ。
授業をサボりに行く途中、
たまたま、ここを通っただけ。
——気づくな
——お願いだから
でも。
「あ、こいつ」
「赫と一緒にいたやつじゃん」
足音が、近づく。
翠は、離れようとするけど、
足に力が入らない。
「なに、授業サボり?」
「それとも、もう追い出された?」
くすっと、低い笑い。
「朝も濡れてたよな」
「教室で嫌われてるらしいぜ」
——情報、回ってる
翠は、視線を落としたまま言う。
「……関係ないだろ」
声は、震えていた。
「関係ない?」
一人が、しゃがみ込んで顔を覗く。
「お前、あいつの兄弟なんだろ?」
兄弟。
その言葉が、
皮肉みたいに刺さる。
「あいつはさ」
「今、保健室で守られてんのに」
別の一人が、肩をすくめる。
「お前は放置?」
笑い声。
「差、あるよな笑」
翠は、歯を食いしばった。
——赫ちゃんを、巻き込むな
「……赫ちゃんは関係ない」
それだけは、
はっきり言った。
次の瞬間。
がん、と
翠の横の壁が叩かれる。
肩が、びくっと跳ねた。
「偉そう」
「自分の立場分かってない」
逃げ場は、ない。
前も、後ろも。
「赫に言いつけたらどう?笑」
「どうせ言えないだろ笑笑」
その通りだった。
翠は、拳を握る。
——言えない
——でも、黙るしかない
「ほら」
誰かが、翠のバッグを持ってきて蹴り上げる。
「さっき探してたやつ、入ってんじゃね?」
吸入器。
——やめろ
バッグの中を漁られる前に、
翠は、反射的に引き寄せた。
「触るな」
声が、少しだけ強くなる。
それが、火をつけた。
「は?」
「今、逆らった?」
空気が、一気に冷える
翠は、後ずさった。
背中が、壁に当たる。
胸が、ぎゅっと締めつけられて、
息が、途切れ途切れになる。
——発作、近い
でも、吸入器は、
まだバッグの中。
取り出す余裕が、ない。
「……苦しそう」
「演技?」
誰かが、笑う。
翠は、
その場にしゃがみ込んだ。
視界が、揺れる。
——ここで倒れたら
——誰か、来る?
でも。
誰も来ない。
廊下は、
授業中で、静まり返っていた。
赫をいじめてた人たちは、
今度は、翠を囲んでいる。
ターゲットが、
ただ、翠に移動しただけ。
コメント
2件

1度その赫っちゃんを虐めてたやつを〇す(( いつか幸せになってくれぇ
初コメ失礼しますm(_ _)mほんっっとに大好きです!続き楽しみにしてます*ˊᵕˋ*