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柘榴とAI

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#鬱展開
Mist-404
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柘榴とAI

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ゑぬ。
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もうすぐ最期だから、机に言葉を刻もう――そう言ってみんな銘々に言葉を刻んだ。
思いを寄せる人への気持ちを綴る子、いじめをした事を悔いている子、いじめられたことへの怨嗟を刻む子、大切な友人の名前を刻む子、様々な最期の言葉を刻んでいる。
Xデーにはみんなで集まろうなんて言っていたけれど、その日教室に居たのはわたし一人だった。
みんな終わりの日を迎える前に消えてしまった。
みんな最期の瞬間が怖くて、世界ごと死ぬことを恐れて自ら死ぬことを選んだ。
世界が一瞬で蒸発する。
自分がどんなふうに消えてしまうのか、想像できないから恐ろしい。
100年前に現れた半径数mmの光の柱は、今では半径30kmほどまでに拡大し巨大な光柱になっている。
窓の外は、夕暮れの色に染まっていた。机の上には、誰かが刻んだ文字がいくつも残っている。
彫刻刀で深く刻まれたものもあれば、シャーペンの先で何度もなぞっただけのものもある。文字の形や大きさから、それを書いた子の顔が浮かんでくる。
もう二度と会えないのだと思うと、少しだけ寂しかった。けれど、涙は出なかった。
わたしは自分の机を見下ろした。そこには何も書かれていない。
誰かの名前を刻もうか。それとも、今まで言えなかった気持ちを書こうか。考えても何も浮かばなかった。
わたしは最後まで、何も書けないのかもしれない。
そのとき、背中に突然重みがかかった。
「こんばんは」
耳元で優しくそう囁いた。
「わっ……!」
思わず肩を跳ねさせる。後ろからわたしを抱きしめているのは、潤生昴だった。
「びっくりした?」
「するに決まってるでしょ。何してるの」
「挨拶」
「なにそれ」
昴はけらけらと笑って、わたしの背中から離れた。
いつもと同じ顔だった。いつもと同じ声だった。
まるで明日も学校があって、明後日もその次の日も、わたしたちがこうして顔を合わせることが当たり前であるかのように。
「来ないかと思った」
わたしがそう言うと、昴は少しだけ目を細めた。
「約束したでしょ」
「みんな来なかったよ」
「うん」
昴は教室を見渡した。机に残された言葉をひとつひとつ読むように、ゆっくりと視線を動かした。
「みんな、怖かったんだろうね」
「昴も怖い?」
「そりゃあね」
意外な返事だった。
昴は何でも平気そうな顔をする。困ったことがあっても、悲しいことがあっても、いつの間にか笑っている。だから、昴が怖いと言うのを聞くと、わたしは少し安心した。
「でも、ひとりで待つほうが嫌だったから」
昴はそう言って、わたしの机に目を落とした。
「何も書かなかったんだ」
「何を書けばいいのかわからなくて」
「そっか」
それ以上、昴は何も聞かなかった。
わたしたちはしばらく教室にいた。窓の向こうでは、街の灯りがひとつずつ点き始めていた。
遠くの空には、光の柱が見える。
あれが、わたしたちの世界を終わらせる。
「ねえ、咲」
「なに?」
「帰ろう」
昴は、まるで放課後に寄り道へ誘うみたいに言った。
「どこに?」
「さあ。歩いてたら、どこかに着くんじゃない?」
「適当だね」
わたしはもう一度、机を見た。
何も書かれていない机。
そのままにしておこうと思った。
鞄を持ち、昴と並んで教室を出た。廊下には誰もいなかった。階段を下り、昇降口で靴を履き替える。
外に出ると、夕方の風がそっと頬を撫でた。
コメント
1件
あおいです🌷 読ませていただきました。世界の終わりを前に、机に言葉を刻むという静かな設定がとても印象的でした。みんなが消えてしまった中で、昴くんだけが約束を守って来てくれたその瞬間、胸がぎゅっとなりました。最後に「帰ろう」と自然に言える距離感が、この優しい物語にぴったりだなと感じます。続きがとても気になります…!