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ーいざ、チャイナへー
「やぁーっぱイブラヒムには分かるかぁー。」
にひひっという笑い声が聞こえたかと思うと、1匹の吸血鬼が3人の目の前にフッと現れた。
「何しに来た?急な訪問は遠慮してほしいのだが。前にも言っただろう?」
イブラヒムは淡々とした口調で返す。しかし、そんな口調とは裏腹に、再会を喜んでもいるようだった。
葛葉は相変わらずふざけ半分で答える。
「へいへい。急に来ちゃってさぁせんね。いやでも急用だったもんで。イブラヒムの助けが必要ってわけ。」
「はぁ…また魔界での揉め事か?私はりりむとはもう関わりたくは無いからな。」
溜息をつくイブラヒムを笑いながら葛葉は言う。
「ははははっ!いいねぇ!!まぁ今回はアイツの件じゃない。結構、いや、ガチでヤバめなやつ。…そこの数年前会ったことある護衛と、今日初めて会う金髪もしっかり聞けよ!」
「ローレンです」
「エクス・アルビオ」
2人とも相変わらず不貞腐れたような態度で返事をする。葛葉とイブラヒムがずっと2人で会話をしていたのが気に食わなかったのだろうか。
「お!威勢がいいなぁ!俺のことも葛葉って呼んでくれていいからな。じゃ、よく聞けよ。俺は今、魔界の王位継承の儀式の前夜祭を抜け出て来たわけだ。つまり、そんぐらい大事ってこと。」
葛葉の本名はアレクサンドル・ラグーザと言い、魔界の王族の血筋である。3代目である彼の王位継承には、魔界だけでなく、イブラヒムなど、人界の、ラグーザ家にゆかりのある皇族たちも驚いた。
「あいつが王位継承者だって?!?!」
そう。彼は奔放な性格で、いつも遊んでいたから驚かれるのも無理はない。現にこうして、継承の儀式の前夜祭を抜け出していることが物語っている。
そんな彼の口から発せられる言葉は、その場の思いつきや出まかせばかり。今回も“ガチでヤバめなやつ”などと言っていたが、それが本当かもわからない。
「チャイナとの商談が決裂した。」
「…は?」
「反乱を起こされかねない。いや、絶対起こされる。」
イブラヒムは、葛葉の言葉を理解するのに時間がかかった。それほど衝撃的だった。
かなりまずい。
「何ですか?チャイナって。」
エクスが質問するが、それに答える余裕はイブラヒムには無かった。
ローレンも意味を理解し、青ざめている。
葛葉が続ける。
「ラグーザ家はチャイナにとっては地雷でしかない。俺は交渉に行けないってわけ。だからさイブラヒム、お前に頼むしか無いんだ。頼む。」
「…分かった。仕方ない。葛葉、お前は儀式があるのだろう?はぁ、ろれと私で行くか。」
イブラヒムが言うと、葛葉が慌てて遮った。
「おっーと、ちょい待ち。…ローレンは俺がしばらく借りるわ。りりむの相手に良さそう…」
そう言っていたずらっぽい笑いを響かせる葛葉に、イブラヒムは溜息をつき、呆れたように返す。
「はぁ、好きにしろ。達者でな、ろれ。じゃあ…私とエクスの2人だな。さあ行くぞエクス。チャイナへ。」
エクスはこの上なく嬉しそうな笑顔で答えた。
「はいっ!!」